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美人コンテスト編
episode565
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空は真っ青な快晴で、残暑とは言えまだまだ暑い。昼前なのにすでに陽射しは強く、遮る雲もない太陽は、海も街も眩しく照らしつけていた。
皇都イララクスの海の玄関口ハーツイーズ。大きな港には毎日大小様々な船が乗り入れ、沢山の人や荷物が往来する。
その港から少し離れたところに、海水浴などを楽しめる真っ白なビーチが広がっている。
普段は海水浴や日光浴を楽しむ地元民や観光客で賑わっているが、今日に限って7割をむさっ苦しい外見の男たちが埋め尽くしていた。傭兵たちである。
ビーチのほぼ中央には、派手に装飾された立派なステージが建ち、ステージの左右には白いテントがいくつも並んでいる。そしてステージ前にはむさっ苦しい男たちが座り込み、その男たちを相手に、セクシーな水着美女たちが酒やつまみを売り歩いていた。
若干距離を置いて、ごく一般人的な見物客なども集まっている。
今日は傭兵ギルド主催の、美人コンテストが開かれる日だ。
毎年開かれているが、開催場所は毎年違う。今年は傭兵ギルド支部が2つもある皇都イララクスの、エルダー街支部とハーツイーズ街支部が合同で名乗りを上げた。そして会場はハーツイーズ街にあるビーチで開くことが決まり、この有様である。
世界中の傭兵たちが、この美人コンテストのために押し寄せてくる。そのため観光収入も見込めるので、開催場所に選ばれる街なども、積極的に協力姿勢なのだ。
開催は正午で、飲食店の露天も次々と店を開け始め、見物客も増えていく。
外の様子をテントの中から見て、付き添い役のルーファスはニコニコと笑顔を浮かべる。
「相変わらずビッグイベントだよね~。今日は天気も良いし、客入りも上々みたいだよ。行政街のほうから臨時乗合馬車が何本も出てるって話だし」
行政街には皇都イララクスのエグザイル・システムがある。
「ベルトルド卿が、大々的に宣伝するよう、行政側に圧力をかけたって話を、この間リュリュさんから聞かされました」
鬱陶しく垂れ下がる簾のような前髪を揺らし、多少小馬鹿にしたようにして、苦笑気味にカーティスが肩を震わせる。
「別に客増やしても、審査には関係なくない?」
「ここぞとばかりに、おめかししたキューリさんを見せびらかしたいのでしょう…」
「…はは、バカ親的過ぎる」
2人は薄い笑いを浮かべて、椅子に座ってじっとしているキュッリッキを見る。
「アタシ、見世物じゃないのにぃ」
ステージ映えするようにカッチリとメイクされた顔をしかめて、キュッリッキは深々とため息をついた。
「まあでも、ベルトルド様の気持ちも判る気がするかも~。今日のキューリちゃん、また一段と綺麗で可愛いし。ドレス良く似合ってる」
「そうですね。これなら、当傭兵団唯一の汚点だった美人コンテスト最下位記録も、一位に塗り替えられそうです」
「コラコラ。恋人がそんなこと言うと、マーゴットがヒス起こすよ」
「いくら恋人でもねえ…。なんであんなに、頑固なんでしょうね…」
キュッリッキとメルヴィンのように、初々しいカップルではない。恋人となってもう4年くらいになる。それでも、理解出来ていない面も多々あるのだ。
「アレだよ、蝶よ花よと育てられたからっしょ」
「蝶よ花よって、なあに?」
不思議そうにするキュッリッキに、ルーファスは複雑そうな笑顔を向ける。
「うーん、甘やかされたってことにしようか」
「ほむ?」
親に大切に育てられた、などと言えばキュッリッキが悲しい思いをしてしまうのではないか。そうルーファスは思って、適当に濁して返答した。
皇都イララクスの海の玄関口ハーツイーズ。大きな港には毎日大小様々な船が乗り入れ、沢山の人や荷物が往来する。
その港から少し離れたところに、海水浴などを楽しめる真っ白なビーチが広がっている。
普段は海水浴や日光浴を楽しむ地元民や観光客で賑わっているが、今日に限って7割をむさっ苦しい外見の男たちが埋め尽くしていた。傭兵たちである。
ビーチのほぼ中央には、派手に装飾された立派なステージが建ち、ステージの左右には白いテントがいくつも並んでいる。そしてステージ前にはむさっ苦しい男たちが座り込み、その男たちを相手に、セクシーな水着美女たちが酒やつまみを売り歩いていた。
若干距離を置いて、ごく一般人的な見物客なども集まっている。
今日は傭兵ギルド主催の、美人コンテストが開かれる日だ。
毎年開かれているが、開催場所は毎年違う。今年は傭兵ギルド支部が2つもある皇都イララクスの、エルダー街支部とハーツイーズ街支部が合同で名乗りを上げた。そして会場はハーツイーズ街にあるビーチで開くことが決まり、この有様である。
世界中の傭兵たちが、この美人コンテストのために押し寄せてくる。そのため観光収入も見込めるので、開催場所に選ばれる街なども、積極的に協力姿勢なのだ。
開催は正午で、飲食店の露天も次々と店を開け始め、見物客も増えていく。
外の様子をテントの中から見て、付き添い役のルーファスはニコニコと笑顔を浮かべる。
「相変わらずビッグイベントだよね~。今日は天気も良いし、客入りも上々みたいだよ。行政街のほうから臨時乗合馬車が何本も出てるって話だし」
行政街には皇都イララクスのエグザイル・システムがある。
「ベルトルド卿が、大々的に宣伝するよう、行政側に圧力をかけたって話を、この間リュリュさんから聞かされました」
鬱陶しく垂れ下がる簾のような前髪を揺らし、多少小馬鹿にしたようにして、苦笑気味にカーティスが肩を震わせる。
「別に客増やしても、審査には関係なくない?」
「ここぞとばかりに、おめかししたキューリさんを見せびらかしたいのでしょう…」
「…はは、バカ親的過ぎる」
2人は薄い笑いを浮かべて、椅子に座ってじっとしているキュッリッキを見る。
「アタシ、見世物じゃないのにぃ」
ステージ映えするようにカッチリとメイクされた顔をしかめて、キュッリッキは深々とため息をついた。
「まあでも、ベルトルド様の気持ちも判る気がするかも~。今日のキューリちゃん、また一段と綺麗で可愛いし。ドレス良く似合ってる」
「そうですね。これなら、当傭兵団唯一の汚点だった美人コンテスト最下位記録も、一位に塗り替えられそうです」
「コラコラ。恋人がそんなこと言うと、マーゴットがヒス起こすよ」
「いくら恋人でもねえ…。なんであんなに、頑固なんでしょうね…」
キュッリッキとメルヴィンのように、初々しいカップルではない。恋人となってもう4年くらいになる。それでも、理解出来ていない面も多々あるのだ。
「アレだよ、蝶よ花よと育てられたからっしょ」
「蝶よ花よって、なあに?」
不思議そうにするキュッリッキに、ルーファスは複雑そうな笑顔を向ける。
「うーん、甘やかされたってことにしようか」
「ほむ?」
親に大切に育てられた、などと言えばキュッリッキが悲しい思いをしてしまうのではないか。そうルーファスは思って、適当に濁して返答した。
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