626 / 882
美人コンテスト編
episode563
しおりを挟む
夕方になってアジトに帰ってきたキュッリッキは、大きな荷物と2人のお土産を連れてきていた。
そのお土産な2人を見て、みんな露骨に嫌そうな表情を浮かべる。
――晩飯前に何故来る…。
無礼極まりない雰囲気を全く気にしていないベルトルドは、居丈高にカーティスの前に立つ。
「カーティス、美人コンテストの申し込みは、リッキーが出場するということでギルドに出しておけ!」
「え?」
「今年は優勝間違いありません。ステージ衣装も決まりましたし、コンテスト当日が楽しみですね」
談話室に集った面々を見下ろし、ベルトルドとアルカネットがドヤ顔で命令する。
「ちょっと待ってよ、それは私が出るって決まっているのよ!」
憤然とマーゴットが声を上げると、ベルトルドは「はあ?」という表情を向けた。
「貴様がエントリーして、入賞したことはないだろう。毎年タワシ一個の参加賞だぞ情けない」
「審査員の目が曇ってるだけよ。裏金使ってるんだわ」
プンプンして反論してくるマーゴットをみやり、ベルトルドは呆れ顔でカーティスを見下ろす。
「おいカーティス、貴様と付き合っているんだろう? しっかり躾ておけバカタレ」
「はあ…」
常にベルトルドと言葉を交わすこともしないマーゴットだが、今回ばかりは真っ向から衝突している。
キュッリッキが入団するまでは、ずっとライオン傭兵団のアイドル的立場におさまっていた。
マーゴットは自分の容姿に絶対の自信を持っている。誰よりも美しく、誰よりも可愛らしい。そう確信している。
しかし、ブスとまではいかないが、ごく平均的で十人並み程度の容姿である。それはコンテストで立証されていた。
ところがマーゴットはその審査には毎年不服申し立てをしており、自分の容姿は優れていると疑ってもいない。
このことは、カーティスの悩みの一つでもあるのだった。
「ねえベルトルドさまー、エントリーは3人まではおっけーみたいですよ」
ルーファスがのほほんと言うと、ベルトルドはカーティスに渡した申込書をひったくって、注意書きを再度目で追う。
「……だったら貴様も適当に参加しておけ。――リッキーは確実に参加だ、いいなカーティス」
「了解しました」
さすがに晩ご飯までは居座らず、ベルトルドとアルカネットが帰ってホッとしたライオン傭兵団は、食堂に集ってヤレヤレと肩をすくめていた。
「しっかしなんでオッサンたち、あんなにやる気が漲ってんだ?」
「温泉に行きたいんだって~」
メルヴィンの腕にしがみついて、キュッリッキが記憶を辿りながら言う。
「温泉だとう?」
オウム返しに言って、ギャリーは申込書を再度見る。
「あー…あの有名なケウルーレかあ。セレブどもは食いつく種類が流石だなあ」
「自由都市のだよね確か。傭兵ギルドも奮発したんだな~」
「つーかよ、キューリが優勝して賞品もらうだろ、当然オレらで行くよな」
「そうだね」
「オッサンたちもついてくる気満々ってことじゃねえのか、それってよ…」
ルーファスはギャリーの顔を見て、切なげにため息をついた。
「保護者同伴かあ」
「すっげーイヤなんだが」
ザカリーはゲッソリと肩を落とす。
「リュリュさんも一緒に来るって言ってたよ」
キュッリッキの一言に、食堂にため息が充満するのだった。
そのお土産な2人を見て、みんな露骨に嫌そうな表情を浮かべる。
――晩飯前に何故来る…。
無礼極まりない雰囲気を全く気にしていないベルトルドは、居丈高にカーティスの前に立つ。
「カーティス、美人コンテストの申し込みは、リッキーが出場するということでギルドに出しておけ!」
「え?」
「今年は優勝間違いありません。ステージ衣装も決まりましたし、コンテスト当日が楽しみですね」
談話室に集った面々を見下ろし、ベルトルドとアルカネットがドヤ顔で命令する。
「ちょっと待ってよ、それは私が出るって決まっているのよ!」
憤然とマーゴットが声を上げると、ベルトルドは「はあ?」という表情を向けた。
「貴様がエントリーして、入賞したことはないだろう。毎年タワシ一個の参加賞だぞ情けない」
「審査員の目が曇ってるだけよ。裏金使ってるんだわ」
プンプンして反論してくるマーゴットをみやり、ベルトルドは呆れ顔でカーティスを見下ろす。
「おいカーティス、貴様と付き合っているんだろう? しっかり躾ておけバカタレ」
「はあ…」
常にベルトルドと言葉を交わすこともしないマーゴットだが、今回ばかりは真っ向から衝突している。
キュッリッキが入団するまでは、ずっとライオン傭兵団のアイドル的立場におさまっていた。
マーゴットは自分の容姿に絶対の自信を持っている。誰よりも美しく、誰よりも可愛らしい。そう確信している。
しかし、ブスとまではいかないが、ごく平均的で十人並み程度の容姿である。それはコンテストで立証されていた。
ところがマーゴットはその審査には毎年不服申し立てをしており、自分の容姿は優れていると疑ってもいない。
このことは、カーティスの悩みの一つでもあるのだった。
「ねえベルトルドさまー、エントリーは3人まではおっけーみたいですよ」
ルーファスがのほほんと言うと、ベルトルドはカーティスに渡した申込書をひったくって、注意書きを再度目で追う。
「……だったら貴様も適当に参加しておけ。――リッキーは確実に参加だ、いいなカーティス」
「了解しました」
さすがに晩ご飯までは居座らず、ベルトルドとアルカネットが帰ってホッとしたライオン傭兵団は、食堂に集ってヤレヤレと肩をすくめていた。
「しっかしなんでオッサンたち、あんなにやる気が漲ってんだ?」
「温泉に行きたいんだって~」
メルヴィンの腕にしがみついて、キュッリッキが記憶を辿りながら言う。
「温泉だとう?」
オウム返しに言って、ギャリーは申込書を再度見る。
「あー…あの有名なケウルーレかあ。セレブどもは食いつく種類が流石だなあ」
「自由都市のだよね確か。傭兵ギルドも奮発したんだな~」
「つーかよ、キューリが優勝して賞品もらうだろ、当然オレらで行くよな」
「そうだね」
「オッサンたちもついてくる気満々ってことじゃねえのか、それってよ…」
ルーファスはギャリーの顔を見て、切なげにため息をついた。
「保護者同伴かあ」
「すっげーイヤなんだが」
ザカリーはゲッソリと肩を落とす。
「リュリュさんも一緒に来るって言ってたよ」
キュッリッキの一言に、食堂にため息が充満するのだった。
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!
山田みかん
ファンタジー
「貴方には剣と魔法の異世界へ行ってもらいますぅ~」
────何言ってんのコイツ?
あれ? 私に言ってるんじゃないの?
ていうか、ここはどこ?
ちょっと待てッ!私はこんなところにいる場合じゃないんだよっ!
推しに会いに行かねばならんのだよ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる