片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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美人コンテスト編

episode563

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 夕方になってアジトに帰ってきたキュッリッキは、大きな荷物と2人のお土産を連れてきていた。

 そのお土産な2人を見て、みんな露骨に嫌そうな表情を浮かべる。

 ――晩飯前に何故来る…。

 無礼極まりない雰囲気を全く気にしていないベルトルドは、居丈高にカーティスの前に立つ。

「カーティス、美人コンテストの申し込みは、リッキーが出場するということでギルドに出しておけ!」

「え?」

「今年は優勝間違いありません。ステージ衣装も決まりましたし、コンテスト当日が楽しみですね」

 談話室に集った面々を見下ろし、ベルトルドとアルカネットがドヤ顔で命令する。

「ちょっと待ってよ、それは私が出るって決まっているのよ!」

 憤然とマーゴットが声を上げると、ベルトルドは「はあ?」という表情を向けた。

「貴様がエントリーして、入賞したことはないだろう。毎年タワシ一個の参加賞だぞ情けない」

「審査員の目が曇ってるだけよ。裏金使ってるんだわ」

 プンプンして反論してくるマーゴットをみやり、ベルトルドは呆れ顔でカーティスを見下ろす。

「おいカーティス、貴様と付き合っているんだろう? しっかり躾ておけバカタレ」

「はあ…」

 常にベルトルドと言葉を交わすこともしないマーゴットだが、今回ばかりは真っ向から衝突している。

 キュッリッキが入団するまでは、ずっとライオン傭兵団のアイドル的立場におさまっていた。

 マーゴットは自分の容姿に絶対の自信を持っている。誰よりも美しく、誰よりも可愛らしい。そう確信している。

 しかし、ブスとまではいかないが、ごく平均的で十人並み程度の容姿である。それはコンテストで立証されていた。

 ところがマーゴットはその審査には毎年不服申し立てをしており、自分の容姿は優れていると疑ってもいない。

 このことは、カーティスの悩みの一つでもあるのだった。

「ねえベルトルドさまー、エントリーは3人まではおっけーみたいですよ」

 ルーファスがのほほんと言うと、ベルトルドはカーティスに渡した申込書をひったくって、注意書きを再度目で追う。

「……だったら貴様も適当に参加しておけ。――リッキーは確実に参加だ、いいなカーティス」

「了解しました」



 さすがに晩ご飯までは居座らず、ベルトルドとアルカネットが帰ってホッとしたライオン傭兵団は、食堂に集ってヤレヤレと肩をすくめていた。

「しっかしなんでオッサンたち、あんなにやる気が漲ってんだ?」

「温泉に行きたいんだって~」

 メルヴィンの腕にしがみついて、キュッリッキが記憶を辿りながら言う。

「温泉だとう?」

 オウム返しに言って、ギャリーは申込書を再度見る。

「あー…あの有名なケウルーレかあ。セレブどもは食いつく種類が流石だなあ」

「自由都市のだよね確か。傭兵ギルドも奮発したんだな~」

「つーかよ、キューリが優勝して賞品もらうだろ、当然オレらで行くよな」

「そうだね」

「オッサンたちもついてくる気満々ってことじゃねえのか、それってよ…」

 ルーファスはギャリーの顔を見て、切なげにため息をついた。

「保護者同伴かあ」

「すっげーイヤなんだが」

 ザカリーはゲッソリと肩を落とす。

「リュリュさんも一緒に来るって言ってたよ」

 キュッリッキの一言に、食堂にため息が充満するのだった。
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