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アン=マリー女学院からの依頼編
episode556
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「この田舎者めが! 貴様こそ下賎の身で誰に向かって上から目線で口を利くか!! ハワドウレ皇国が皇王と、この俺副宰相兼軍総帥ベルトルドが後見をつとめる召喚士だぞ。本来貴様のような片田舎の小国の宰相ごときが、対等に口を利いていい相手ではない! 彼女は王族以上……いや、それ以上の神に愛されし存在だ。この痴れ者が」
「不埒な振る舞いをする王女の躾をしっかりすることです。そのようなままの王女が、この国の女王になるなど、国としての品位を疑いますよ」
本気で怒っているベルトルドとアルカネットの容赦のない威圧感に、イリニア王女とニコデムス宰相は、凍りついたように固まってしまっていた。そして、ライオン傭兵団の皆も、少々驚きを隠せなかった。
「キューリちゃんの地位って、なんかスゴイことになってるのね」
「皇王様が後ろ盾だし、貴族以上……すでに皇王一族の末席くらいには該当するんじゃないですかねえ」
ルーファスとシビルが小声で呟く。
「別格なんじゃない? 人間の最高地位と同格って感じじゃないよ、あの言い草」
タルコットも腕を組みながら呟いた。
「あーたたち、小娘のこととなると、どうしてそう息が合うの」
これまで黙って成り行きを見ていたリュリュが、ようやく口を開いた。
「あの巫山戯た野郎が、俺のリッキーを怒鳴るからだ! 全く無礼極まりない奴だ」
「私のリッキーさんに向けて、なんて言い草でしょう全く」
「自分所有という、そこだけは譲らないわけね……」
呆れ顔でリュリュはため息をついた。
「ね、2人共、アレ気づいてる?」
リュリュはイリニア王女のほうへ顎をしゃくる。ベルトルドとアルカネットは頷いた。
「ああ。おもしろいものを見つけたな、と思っていた」
「召喚スキル〈才能〉持ちのようですね。思わぬ拾い物、でしょうか」
召喚スキル〈才能〉を持って生まれてくる子供は、1億人に一人の確率、と言われている。何十年も生まれてこないこともあるし、最も稀少なスキル〈才能〉として認識されていた。
イリニア王女が召喚スキル〈才能〉を持っていたことは、今回対面して初めて知ったことだった。召喚スキル〈才能〉を持って生まれたことが確認されれば、すぐさま生国が家族ごと引き取って、国が大切に面倒を見る。しかし、イリニア王女のように生まれが王族の場合だと、社交界デビューでもしない限りは、自国どころか他国は知りようもない。
容姿も美しく、華奢な身体つきといい、キュッリッキにどことなく似ている。決定的に似ていない点をあげれば、体格の割には胸が大きいところだろうか。
「そんなこと小娘に言ったら、一生口きいてもらえないわよ」
「……」
リュリュにつっこまれて、ベルトルドは憮然と口をへの字に曲げた。どんなにキュッリッキらぶでも、胸のペッタンコさはフォローしようがない。そのキュッリッキはというと、イリニア王女が離れたことで、ようやくメルヴィンを独り占めできたものだから、さっきからずっとメルヴィンにベタベタだ。ライオンの連中は「よかったよかった」と、再会を喜んでいた。
「不埒な振る舞いをする王女の躾をしっかりすることです。そのようなままの王女が、この国の女王になるなど、国としての品位を疑いますよ」
本気で怒っているベルトルドとアルカネットの容赦のない威圧感に、イリニア王女とニコデムス宰相は、凍りついたように固まってしまっていた。そして、ライオン傭兵団の皆も、少々驚きを隠せなかった。
「キューリちゃんの地位って、なんかスゴイことになってるのね」
「皇王様が後ろ盾だし、貴族以上……すでに皇王一族の末席くらいには該当するんじゃないですかねえ」
ルーファスとシビルが小声で呟く。
「別格なんじゃない? 人間の最高地位と同格って感じじゃないよ、あの言い草」
タルコットも腕を組みながら呟いた。
「あーたたち、小娘のこととなると、どうしてそう息が合うの」
これまで黙って成り行きを見ていたリュリュが、ようやく口を開いた。
「あの巫山戯た野郎が、俺のリッキーを怒鳴るからだ! 全く無礼極まりない奴だ」
「私のリッキーさんに向けて、なんて言い草でしょう全く」
「自分所有という、そこだけは譲らないわけね……」
呆れ顔でリュリュはため息をついた。
「ね、2人共、アレ気づいてる?」
リュリュはイリニア王女のほうへ顎をしゃくる。ベルトルドとアルカネットは頷いた。
「ああ。おもしろいものを見つけたな、と思っていた」
「召喚スキル〈才能〉持ちのようですね。思わぬ拾い物、でしょうか」
召喚スキル〈才能〉を持って生まれてくる子供は、1億人に一人の確率、と言われている。何十年も生まれてこないこともあるし、最も稀少なスキル〈才能〉として認識されていた。
イリニア王女が召喚スキル〈才能〉を持っていたことは、今回対面して初めて知ったことだった。召喚スキル〈才能〉を持って生まれたことが確認されれば、すぐさま生国が家族ごと引き取って、国が大切に面倒を見る。しかし、イリニア王女のように生まれが王族の場合だと、社交界デビューでもしない限りは、自国どころか他国は知りようもない。
容姿も美しく、華奢な身体つきといい、キュッリッキにどことなく似ている。決定的に似ていない点をあげれば、体格の割には胸が大きいところだろうか。
「そんなこと小娘に言ったら、一生口きいてもらえないわよ」
「……」
リュリュにつっこまれて、ベルトルドは憮然と口をへの字に曲げた。どんなにキュッリッキらぶでも、胸のペッタンコさはフォローしようがない。そのキュッリッキはというと、イリニア王女が離れたことで、ようやくメルヴィンを独り占めできたものだから、さっきからずっとメルヴィンにベタベタだ。ライオンの連中は「よかったよかった」と、再会を喜んでいた。
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