615 / 882
アン=マリー女学院からの依頼編
episode552
しおりを挟む
イリニア王女は涙をこぼし、メルヴィンを切なく見上げた。そのあまりにも素早い行動に、どうしていいか判らず、キュッリッキは2人のそばで喚きまくった。
「なによアンタ! 泣きつくんだったら女好きのルーさんかベルトルドさんにしてよ!!」
両手で拳を作り、キュッリッキは怒鳴った。後ろの方で「マテこら」とルーファスとベルトルドがぼそりとツッコミを入れていた。
「王女」
「わたくしのことは、イリニアと呼び捨ててくださいませ」
スルーされた挙句その言葉に、更にキュッリッキがカチンとなる。
「一体ナンナノ!? メルヴィンはアタシの恋人なんだからね! 厚かましいわよ離れて!」
メルヴィンに抱きつきながら、イリニア王女はジロリとキュッリッキを睨みつけた。
「デリカシーの欠片も無い方ね。あなたみたいな人はメルヴィン様にふさわしくないわ」
女好きにされてしまった――事実だが――ルーファスとベルトルドは、2人の美少女を眺めながら、ちょっと面白そうな展開、などと思っていた。
キュッリッキはこれでもかと頬を膨らませると、ワナワナ身体を震わせ、ついにポロポロと涙をこぼし始めた。そして大きくしゃくりあげると、両手を広げてスタンバイしているベルトルドに泣きついた。
「うわ~~~ん、ナンナノあの女あああ」
「お~よしよし、俺がいるじゃないか。泣かない泣かない、ヨシヨシ」
キュッリッキに泣きつかれて、ベルトルドは大喜びで慰めた。股間の疼きに耐えながら、全身から優しさのオーラを滲み出しまくってキュッリッキを抱きしめる。
慰める一方で、今夜にはキュッリッキの処女をもらえる。それが頭の中で木霊しまくり、理性を総動員して大変なのだ。
すっかり置いてけぼり状態のメルヴィンは、どうしていいか判らず途方にくれながら固まってしまっていた。
大泣きしているキュッリッキと、これみよがしにベタベタ慰めているベルトルドが激しく気になりつつも、命を狙われ酷い事実に不安に陥っているイリニア王女を、邪険に振り払うのも気が引ける。数日一緒に旅をしてきて、多少情が移ってしまっていた。さてどうしたものかと考えるが、頭がグルグルして考えがまとまらず固まったままだ。
乱暴に扱われ、地面に転がされたままほっとかれ状態のシェシュティン院長は、縛られたままギリギリと歯ぎしりをしてタルコットを睨みつけた。
「ババアの割に、なんだかえらく闘志がわいてるんじゃない? もしかして戦闘スキル〈才能〉持ちか」
淡々とシェシュティン院長を見下ろし、タルコットは首をかしげた。
学院で見たときは、楚々としてたおやかな老婦人だったが、今地面に転がっている姿は手負いの獣のような雰囲気を滲み出している。
「ああそいつ、不意打ちの一撃を飛ばしてきて吃驚したぞ。俺じゃなきゃマトモに顔面にヒットしてただろうな」
ベルトルドには絶対防御と言われる、サイ《超能力》による防御能力が備わっている。アルカネット、リュリュ、キュッリッキのみには働かないとされるので、絶対とは言い切れないが。しかしベルトルドに敵意あるもの、たまたま飛んできたものなど、種類を問わず人々や物体、力などは自動的に空間転移してしまうのである。悪意や敵意がそこになくとも、ベルトルドの身体に害が及びそうなものは、勝手にどこかへ飛ばしてしまうのだ。それは自身が意識的にしていることではないので、絶対防御などと呼ばれていた。
「寸でで気づいて飛ばさなくてよかったが、老人とは思えない瞬発力だったぞ。戦闘スキル〈才能〉持ちはこれだから怖い」
アンタに怖いものあるんですかっ!? という視線がチラホラ向けられるが、泣きじゃくるキュッリッキの頭を優しく撫でながら、ベルトルドはドヤ顔だった。
「なによアンタ! 泣きつくんだったら女好きのルーさんかベルトルドさんにしてよ!!」
両手で拳を作り、キュッリッキは怒鳴った。後ろの方で「マテこら」とルーファスとベルトルドがぼそりとツッコミを入れていた。
「王女」
「わたくしのことは、イリニアと呼び捨ててくださいませ」
スルーされた挙句その言葉に、更にキュッリッキがカチンとなる。
「一体ナンナノ!? メルヴィンはアタシの恋人なんだからね! 厚かましいわよ離れて!」
メルヴィンに抱きつきながら、イリニア王女はジロリとキュッリッキを睨みつけた。
「デリカシーの欠片も無い方ね。あなたみたいな人はメルヴィン様にふさわしくないわ」
女好きにされてしまった――事実だが――ルーファスとベルトルドは、2人の美少女を眺めながら、ちょっと面白そうな展開、などと思っていた。
キュッリッキはこれでもかと頬を膨らませると、ワナワナ身体を震わせ、ついにポロポロと涙をこぼし始めた。そして大きくしゃくりあげると、両手を広げてスタンバイしているベルトルドに泣きついた。
「うわ~~~ん、ナンナノあの女あああ」
「お~よしよし、俺がいるじゃないか。泣かない泣かない、ヨシヨシ」
キュッリッキに泣きつかれて、ベルトルドは大喜びで慰めた。股間の疼きに耐えながら、全身から優しさのオーラを滲み出しまくってキュッリッキを抱きしめる。
慰める一方で、今夜にはキュッリッキの処女をもらえる。それが頭の中で木霊しまくり、理性を総動員して大変なのだ。
すっかり置いてけぼり状態のメルヴィンは、どうしていいか判らず途方にくれながら固まってしまっていた。
大泣きしているキュッリッキと、これみよがしにベタベタ慰めているベルトルドが激しく気になりつつも、命を狙われ酷い事実に不安に陥っているイリニア王女を、邪険に振り払うのも気が引ける。数日一緒に旅をしてきて、多少情が移ってしまっていた。さてどうしたものかと考えるが、頭がグルグルして考えがまとまらず固まったままだ。
乱暴に扱われ、地面に転がされたままほっとかれ状態のシェシュティン院長は、縛られたままギリギリと歯ぎしりをしてタルコットを睨みつけた。
「ババアの割に、なんだかえらく闘志がわいてるんじゃない? もしかして戦闘スキル〈才能〉持ちか」
淡々とシェシュティン院長を見下ろし、タルコットは首をかしげた。
学院で見たときは、楚々としてたおやかな老婦人だったが、今地面に転がっている姿は手負いの獣のような雰囲気を滲み出している。
「ああそいつ、不意打ちの一撃を飛ばしてきて吃驚したぞ。俺じゃなきゃマトモに顔面にヒットしてただろうな」
ベルトルドには絶対防御と言われる、サイ《超能力》による防御能力が備わっている。アルカネット、リュリュ、キュッリッキのみには働かないとされるので、絶対とは言い切れないが。しかしベルトルドに敵意あるもの、たまたま飛んできたものなど、種類を問わず人々や物体、力などは自動的に空間転移してしまうのである。悪意や敵意がそこになくとも、ベルトルドの身体に害が及びそうなものは、勝手にどこかへ飛ばしてしまうのだ。それは自身が意識的にしていることではないので、絶対防御などと呼ばれていた。
「寸でで気づいて飛ばさなくてよかったが、老人とは思えない瞬発力だったぞ。戦闘スキル〈才能〉持ちはこれだから怖い」
アンタに怖いものあるんですかっ!? という視線がチラホラ向けられるが、泣きじゃくるキュッリッキの頭を優しく撫でながら、ベルトルドはドヤ顔だった。
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

貧乏秀才令嬢がヤサグレ天才少年と、世界の理を揺るがします。
凜
恋愛
貧乏貴族のダリアは、国一番の魔法学校の副首席。首席になりたいのに、その壁はとんでもなくぶあつく…。
ある日謎多き少年シアンと出会い、彼が首席とわかるやいなや強烈な興味を持ち粘着するようになった。
クセの多い登場人物が織りなす、身分、才能、美醜が絡み、陰謀渦巻く魔法学校でのスクールストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる