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アン=マリー女学院からの依頼編
episode551
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ヴィプネン族の治める惑星ヒイシの種族統一国家、ハワドウレ皇国に認められた独立国は、現時点で13在る。3年ほど前にコッコラ王国が皇国に反旗を翻し地図から抹消された。そして先月ソレル王国が中心となり、ベルマン公国、エクダル国、ボクルンド王国の三国も加担して反旗を翻し地図から抹消された。
抹消された国々はハワドウレ皇国に、一領地として吸収されている。
元々種族統一国家として興ったハワドウレ皇国だが、次第に独立して自らの国を打ち立てる者たちが現れ、それを容認して小国がいくつも興った。しかしこうして長い時を経て、抹消された国々は、元に戻ったと言える。
自らの国を大きくする、ハワドウレ皇国に匹敵するほどの国力をつける。そして自国が皇国に成り代わって、ヴィプネン族の種族統一国家として惑星ヒイシに君臨する。それを夢見たのが、ブロムストランド共和国の現首相クリストフだった。
これといってハワドウレ皇国から虐げられてもいなければ、あらゆる事柄に干渉されているわけでもない。毎年決められた献上金を納めることで、独立国としてある程度は自由にやっていけている。だが、それは本当に自由と言えるだろうか?
ブロムストランド共和国もまた、皇国から離反した小国の一つに過ぎない。反旗を翻せば、即他国のように鎮圧吸収され、ブロムストランド共和国という名も、汚名と共に歴史の渦に消え去るのみだ。
現在ウエケラ大陸には、ブロムストランド共和国のほかに、大陸の3分の1もの国土を持つトゥルーク王国と、あまり広くない国土のカッセル国、メリーン国の4国がある。その他に皇国の領地と自由都市があるが、クリストフは3国をまず自国として吸収することを考えた。
軍事力はどの国も五分五分で、平たく言えば”のどか”な国風だ。そこを利用し、正面切っての侵略ではなく、裏で工作して乗っ取る計画を立てた。
まずは一番の目障りなトゥルーク王国がターゲットとなった。経済力は大陸一であり、国王もまだ若く、世継ぎは王女一人だけだ。そして王女は首都から遠く離れた学校に留学しており、命を狙いやすい。
幸いなことに、国王夫妻が視察先で事故死した。これはクリストフが手を回したものではなく、本当にただの偶然だった。しかしこの偶然は絶好の好機。
クリストフは半年前から説得を試みていた自身の伯母である、シェシュティン院長を説き伏せ、協力にこぎ着けた。
「甥っ子のお遊びに協力して、王女を殺そうとするとはねえ……」
ルーファスがしみじみと呟いた。
「そんなつまらんことに、ボクたちは引っ張り出されたというわけか。ちゃんと今回の報酬は支払われるんだろうな?」
タルコットは憤懣やるかたない様子で、床に転がるシェシュティン院長の身体を容赦なく蹴飛ばす。相手が老婆でも遠慮がない。
「報酬は倍額にしてこの国に支払ってもらうがよかろう。王女の身の安全だけでなく、国乗っ取り計画を阻止してやったんだからな」
軽蔑の眼差しを注ぎながら、ベルトルドはフンッと鼻息を吹いた。
衝撃の事実を知り、今にも泣き出しそうなイリニア王女に気づいて、メルヴィンがほっそりした肩に手を置く。すると弾かれたように、軽やかな動作でメルヴィンの胸に飛び込んだ。
「!!?」
メルヴィンよりも先に、キュッリッキがびっくりして「ちょっと!!」と声を荒げる。
「なんて恐ろしいのでしょう。わたくし、院長先生を信じておりましたのに」
抹消された国々はハワドウレ皇国に、一領地として吸収されている。
元々種族統一国家として興ったハワドウレ皇国だが、次第に独立して自らの国を打ち立てる者たちが現れ、それを容認して小国がいくつも興った。しかしこうして長い時を経て、抹消された国々は、元に戻ったと言える。
自らの国を大きくする、ハワドウレ皇国に匹敵するほどの国力をつける。そして自国が皇国に成り代わって、ヴィプネン族の種族統一国家として惑星ヒイシに君臨する。それを夢見たのが、ブロムストランド共和国の現首相クリストフだった。
これといってハワドウレ皇国から虐げられてもいなければ、あらゆる事柄に干渉されているわけでもない。毎年決められた献上金を納めることで、独立国としてある程度は自由にやっていけている。だが、それは本当に自由と言えるだろうか?
ブロムストランド共和国もまた、皇国から離反した小国の一つに過ぎない。反旗を翻せば、即他国のように鎮圧吸収され、ブロムストランド共和国という名も、汚名と共に歴史の渦に消え去るのみだ。
現在ウエケラ大陸には、ブロムストランド共和国のほかに、大陸の3分の1もの国土を持つトゥルーク王国と、あまり広くない国土のカッセル国、メリーン国の4国がある。その他に皇国の領地と自由都市があるが、クリストフは3国をまず自国として吸収することを考えた。
軍事力はどの国も五分五分で、平たく言えば”のどか”な国風だ。そこを利用し、正面切っての侵略ではなく、裏で工作して乗っ取る計画を立てた。
まずは一番の目障りなトゥルーク王国がターゲットとなった。経済力は大陸一であり、国王もまだ若く、世継ぎは王女一人だけだ。そして王女は首都から遠く離れた学校に留学しており、命を狙いやすい。
幸いなことに、国王夫妻が視察先で事故死した。これはクリストフが手を回したものではなく、本当にただの偶然だった。しかしこの偶然は絶好の好機。
クリストフは半年前から説得を試みていた自身の伯母である、シェシュティン院長を説き伏せ、協力にこぎ着けた。
「甥っ子のお遊びに協力して、王女を殺そうとするとはねえ……」
ルーファスがしみじみと呟いた。
「そんなつまらんことに、ボクたちは引っ張り出されたというわけか。ちゃんと今回の報酬は支払われるんだろうな?」
タルコットは憤懣やるかたない様子で、床に転がるシェシュティン院長の身体を容赦なく蹴飛ばす。相手が老婆でも遠慮がない。
「報酬は倍額にしてこの国に支払ってもらうがよかろう。王女の身の安全だけでなく、国乗っ取り計画を阻止してやったんだからな」
軽蔑の眼差しを注ぎながら、ベルトルドはフンッと鼻息を吹いた。
衝撃の事実を知り、今にも泣き出しそうなイリニア王女に気づいて、メルヴィンがほっそりした肩に手を置く。すると弾かれたように、軽やかな動作でメルヴィンの胸に飛び込んだ。
「!!?」
メルヴィンよりも先に、キュッリッキがびっくりして「ちょっと!!」と声を荒げる。
「なんて恐ろしいのでしょう。わたくし、院長先生を信じておりましたのに」
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