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アン=マリー女学院からの依頼編
episode550
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無事山越えを終わらせた王女様護衛御一行は、滝で身奇麗にして着替えていたので、堂々とくつろげる飲食店に入って、久しぶりのマトモな食事にありついていた。
奇襲があると困るということで、ルーファスが一人で、人数分の汽車の切符を手配しに、駅へ行っていた。
「どうだメルヴィン、気配は感じられるか?」
「ずっと探っているんですが、なにも感じません」
「まさか、ホントにあの一回の襲撃で終わりなんじゃないでしょうね……」
タルコット、メルヴィン、シビルの3人は、腕を組みながら「ううん……」と悩ましげに唸った。その3人の様子を見て、イリニア王女は苦笑する。
奇襲を心配して、山の中を数日かけて越えてきたというのに、何もないでは心情的に納得できないだろう。襲ってこないのはありがたいし助かるが、こうして護衛してもらっていると申し訳ない気持ちが湧いてきてしまう。そしてこのまま何もなければ、明後日には首都ヴァルテルに到着する。
(そうすれば、メルヴィン様とお別れになってしまう……)
胸の奥がズキンと痛んで、イリニア王女は片手を胸にあてた。王宮につけば、女王として即位して、もう自由などなくなってしまう。死ぬまで自由とは無縁の生活になるのだ。
メルヴィンへの想いは日に日に高まり、離れると考えただけで涙が溢れそうだ。
この先、メルヴィンのような男性と知り合う機会はないだろう。たとえあったとしても、自由に恋をすることはできない。国のために、決められた相手と結婚することになるからだ。
(誰か、襲ってこないかしら)
ふとそんなふうに思ってしまって、イリニア王女は慌てた。
離れたくない。ずっとずっと、そばで守ってほしい。そんな願いを込めて顔を上げたその時だった。
「うわああああああっ!」
店の外でルーファスのデカイ悲鳴が聞こえてきて、4人ともそちらのほうへ顔を向けた。
「なんだ?」
立ち上がって店のドアの方へ行って外を見ると、タルコットは「ゲッ」と慄く声を上げて仰け反った。
「この大馬鹿者ども! 無事息災か?」
あまりにも聴き慣れた、性格と生き様がにじみ出るような偉そうな声が轟いて、メルヴィンとシビルの顔が恐怖に歪んだ。
「なんで、あのひとがいるの?」
「さ……さあ…」
2人は席を立って外を見る。
「あれ? リッキーさんがいるよ?」
「え」
恋人の名を呼ばれ、メルヴィンは急いで店の外に出ると、両手を腰に当てて偉そうに立っているベルトルドの横に、キュッリッキを見つけた。
「リッキー?」
「あ! メルヴィン!!」
嬉しそうな声を上げて、キュッリッキはメルヴィンに飛びついた。そして甘えるようにメルヴィンの胸に頬を摺り寄せる。
「早く会いたかったんだよメルヴィン」
ほっそりと柔らかな身体をそっと抱きしめ、メルヴィンの表情が優しく笑んだ。
「オレもです」
そう言ってキュッリッキの顔を上向かせてキスをする。柔らかな唇の感触が、キュッリッキの存在をより実感させた。
アツアツなオーラを漂わせる2人の様子を、忌々しげに見ていたベルトルドが、露骨な咳払いをする。
「お前たちの仕事を終わらせてきてやったぞ。額を地面に擦り付けて、心から涙を垂れ流して感謝するがいい!」
「………一体、どういうことなんです??」
ふんぞり返っているベルトルドに、ルーファスが恐る恐る聞くと、
「今回の黒幕を叩きのめしてきてやった! そしてこれも捕まえてきてやったぞ」
縛り付けたその人物を、ベルトルドは乱暴に蹴って皆の前に転がした。その転がった人物を見て、店から出てきたイリニア王女は、一際大きな声を上げる。
「院長先生!?」
奇襲があると困るということで、ルーファスが一人で、人数分の汽車の切符を手配しに、駅へ行っていた。
「どうだメルヴィン、気配は感じられるか?」
「ずっと探っているんですが、なにも感じません」
「まさか、ホントにあの一回の襲撃で終わりなんじゃないでしょうね……」
タルコット、メルヴィン、シビルの3人は、腕を組みながら「ううん……」と悩ましげに唸った。その3人の様子を見て、イリニア王女は苦笑する。
奇襲を心配して、山の中を数日かけて越えてきたというのに、何もないでは心情的に納得できないだろう。襲ってこないのはありがたいし助かるが、こうして護衛してもらっていると申し訳ない気持ちが湧いてきてしまう。そしてこのまま何もなければ、明後日には首都ヴァルテルに到着する。
(そうすれば、メルヴィン様とお別れになってしまう……)
胸の奥がズキンと痛んで、イリニア王女は片手を胸にあてた。王宮につけば、女王として即位して、もう自由などなくなってしまう。死ぬまで自由とは無縁の生活になるのだ。
メルヴィンへの想いは日に日に高まり、離れると考えただけで涙が溢れそうだ。
この先、メルヴィンのような男性と知り合う機会はないだろう。たとえあったとしても、自由に恋をすることはできない。国のために、決められた相手と結婚することになるからだ。
(誰か、襲ってこないかしら)
ふとそんなふうに思ってしまって、イリニア王女は慌てた。
離れたくない。ずっとずっと、そばで守ってほしい。そんな願いを込めて顔を上げたその時だった。
「うわああああああっ!」
店の外でルーファスのデカイ悲鳴が聞こえてきて、4人ともそちらのほうへ顔を向けた。
「なんだ?」
立ち上がって店のドアの方へ行って外を見ると、タルコットは「ゲッ」と慄く声を上げて仰け反った。
「この大馬鹿者ども! 無事息災か?」
あまりにも聴き慣れた、性格と生き様がにじみ出るような偉そうな声が轟いて、メルヴィンとシビルの顔が恐怖に歪んだ。
「なんで、あのひとがいるの?」
「さ……さあ…」
2人は席を立って外を見る。
「あれ? リッキーさんがいるよ?」
「え」
恋人の名を呼ばれ、メルヴィンは急いで店の外に出ると、両手を腰に当てて偉そうに立っているベルトルドの横に、キュッリッキを見つけた。
「リッキー?」
「あ! メルヴィン!!」
嬉しそうな声を上げて、キュッリッキはメルヴィンに飛びついた。そして甘えるようにメルヴィンの胸に頬を摺り寄せる。
「早く会いたかったんだよメルヴィン」
ほっそりと柔らかな身体をそっと抱きしめ、メルヴィンの表情が優しく笑んだ。
「オレもです」
そう言ってキュッリッキの顔を上向かせてキスをする。柔らかな唇の感触が、キュッリッキの存在をより実感させた。
アツアツなオーラを漂わせる2人の様子を、忌々しげに見ていたベルトルドが、露骨な咳払いをする。
「お前たちの仕事を終わらせてきてやったぞ。額を地面に擦り付けて、心から涙を垂れ流して感謝するがいい!」
「………一体、どういうことなんです??」
ふんぞり返っているベルトルドに、ルーファスが恐る恐る聞くと、
「今回の黒幕を叩きのめしてきてやった! そしてこれも捕まえてきてやったぞ」
縛り付けたその人物を、ベルトルドは乱暴に蹴って皆の前に転がした。その転がった人物を見て、店から出てきたイリニア王女は、一際大きな声を上げる。
「院長先生!?」
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