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アン=マリー女学院からの依頼編
episode549
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「わーい、あとは下山したらヴェルゼットに到着です」
小さな手をあげてシビルが喜ぶと、イリニア王女も微笑んだ。
「一気におりて、なにか食べてから汽車に乗ろうよ」
ルーファスがそう提案すると、イリニア王女はちょっと困ったような表情を浮かべた。それに目ざとく気がついて、シビルがタルコットの足を叩く。
「そこの滝で身体を洗っていってもいい? いくらなんでも汚れたまま街へ降りるのは気が引けるし」
「ふむ…」
タルコットもイリニア王女の表情で気づいて頷いた。
「休憩していこうか」
「シビル様、ありがとうございました」
「女の子だもんね。いくら身分を隠してお忍び旅でも、4日も身体を洗ってないのは抵抗あるし」
「贅沢を言える状況ではないのは判っているのですが、水浴びできることは嬉しいです」
申し訳なさそうにしながらも、イリニア王女は嬉しそうに口元をほころばせた。
最初の頃こそ奇っ怪なものでも見るようにシビルを見ていたイリニア王女も、今ではすっかり打ち解けている。男ばかりの中、シビルが何かと細かい気遣いをしてくれるので、イリニア王女は何とか頑張って旅をしてこれた。外見は違えど同じ女である、心強かった。
滝の裏側へ行くと、シビルは魔法で地面に大人2人入れるくらいの穴をあけた。そして滝の水を器用に穴の中へ入れると、その中に火の玉を一発ぶちこむ。一瞬で湯に変わり、辺りに温かな湯気が漂った。
「即席風呂のいっちょあがり~」
えっへんと得意げなシビルに、イリニア王女は尊敬の眼差しを注いた。
「素晴らしいですわ!」
「ふふふん。魔法はこういう使い方も出来るのです。さあ、入りましょう」
「はい!」
2人は衣服を脱いでたたむと、湯に入ってゆったりとした気分に包まれた。
「気持ちがいいですわね」
「ホントだね~。滝が天然のカーテンの役割をしてくれてるから、あいつら気にせず身体も洗えるからね。石鹸とシャンプーもあるから」
「ありがとうございます。生き返りました」
「それはなにより」
滝の爆音の向こうから聞こえる女子たちの笑う声に、ルーファスは「いいなあシビル」とぼやいた。
「なんだお前、巨乳が好きなんじゃないのか?」
滝から流れてきた水で身体を拭きながら、タルコットが不思議そうに言う。それに「ちちちっ」と指で否定してルーファスは声を潜めた。
「着やせしてたから気づいてないだろうけど、王女様の胸はかなりデカイ。オレの目に狂いはないぜ」
「お前、そんなところばかり見ているのか……」
あからさまに軽蔑のこもった目を向けられ、ルーファスは肩をすくめる。
「いいじゃーん、オレ男だし」
身体を拭きながら2人の会話を聞いていたメルヴィンは、苦笑しながらキュッリッキのことを思い出していた。
ヴェルゼットで汽車に乗れば、明後日には首都ヴァルテルに到着予定だ。そうすればもうじきキュッリッキのもとへ帰れる。喜ぶ彼女の顔を思い浮かべると、自然と笑みがこぼれた。
「幸せそうにニヤニヤして、メルヴィンはいいよね。キューリちゃんに王女サマに、美少女選り取りみどりで」
「えっ」
ルーファスに顔を覗きこまれ、メルヴィンは慌てた。
「もうすぐヴァルテルへ到着しますし、リッキーのもとへ帰れますから」
「今頃首を長くして待ってるだろうな、キューリ」
鎧の汚れを落としながら言うタルコットに、メルヴィンは嬉しそうな笑みを向けた。
「ええ。なにかお土産でも買っていってあげようかな」
小さな手をあげてシビルが喜ぶと、イリニア王女も微笑んだ。
「一気におりて、なにか食べてから汽車に乗ろうよ」
ルーファスがそう提案すると、イリニア王女はちょっと困ったような表情を浮かべた。それに目ざとく気がついて、シビルがタルコットの足を叩く。
「そこの滝で身体を洗っていってもいい? いくらなんでも汚れたまま街へ降りるのは気が引けるし」
「ふむ…」
タルコットもイリニア王女の表情で気づいて頷いた。
「休憩していこうか」
「シビル様、ありがとうございました」
「女の子だもんね。いくら身分を隠してお忍び旅でも、4日も身体を洗ってないのは抵抗あるし」
「贅沢を言える状況ではないのは判っているのですが、水浴びできることは嬉しいです」
申し訳なさそうにしながらも、イリニア王女は嬉しそうに口元をほころばせた。
最初の頃こそ奇っ怪なものでも見るようにシビルを見ていたイリニア王女も、今ではすっかり打ち解けている。男ばかりの中、シビルが何かと細かい気遣いをしてくれるので、イリニア王女は何とか頑張って旅をしてこれた。外見は違えど同じ女である、心強かった。
滝の裏側へ行くと、シビルは魔法で地面に大人2人入れるくらいの穴をあけた。そして滝の水を器用に穴の中へ入れると、その中に火の玉を一発ぶちこむ。一瞬で湯に変わり、辺りに温かな湯気が漂った。
「即席風呂のいっちょあがり~」
えっへんと得意げなシビルに、イリニア王女は尊敬の眼差しを注いた。
「素晴らしいですわ!」
「ふふふん。魔法はこういう使い方も出来るのです。さあ、入りましょう」
「はい!」
2人は衣服を脱いでたたむと、湯に入ってゆったりとした気分に包まれた。
「気持ちがいいですわね」
「ホントだね~。滝が天然のカーテンの役割をしてくれてるから、あいつら気にせず身体も洗えるからね。石鹸とシャンプーもあるから」
「ありがとうございます。生き返りました」
「それはなにより」
滝の爆音の向こうから聞こえる女子たちの笑う声に、ルーファスは「いいなあシビル」とぼやいた。
「なんだお前、巨乳が好きなんじゃないのか?」
滝から流れてきた水で身体を拭きながら、タルコットが不思議そうに言う。それに「ちちちっ」と指で否定してルーファスは声を潜めた。
「着やせしてたから気づいてないだろうけど、王女様の胸はかなりデカイ。オレの目に狂いはないぜ」
「お前、そんなところばかり見ているのか……」
あからさまに軽蔑のこもった目を向けられ、ルーファスは肩をすくめる。
「いいじゃーん、オレ男だし」
身体を拭きながら2人の会話を聞いていたメルヴィンは、苦笑しながらキュッリッキのことを思い出していた。
ヴェルゼットで汽車に乗れば、明後日には首都ヴァルテルに到着予定だ。そうすればもうじきキュッリッキのもとへ帰れる。喜ぶ彼女の顔を思い浮かべると、自然と笑みがこぼれた。
「幸せそうにニヤニヤして、メルヴィンはいいよね。キューリちゃんに王女サマに、美少女選り取りみどりで」
「えっ」
ルーファスに顔を覗きこまれ、メルヴィンは慌てた。
「もうすぐヴァルテルへ到着しますし、リッキーのもとへ帰れますから」
「今頃首を長くして待ってるだろうな、キューリ」
鎧の汚れを落としながら言うタルコットに、メルヴィンは嬉しそうな笑みを向けた。
「ええ。なにかお土産でも買っていってあげようかな」
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