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アン=マリー女学院からの依頼編
episode544
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メルヴィンたちが仕事で出てから数日後、小さい仕事が舞い込んできて、マリオン、ガエル、ランドンの3人がアジトを出ていた。
「なんか、少なくなって寂しいかもー」
談話室のソファにころりと横になりながら、キュッリッキは唇を尖らせた。いつもなら賑わっている談話室の中が、閑散としていた。
「仕事があるのは、いいことですよ」
本から顔を上げずにカーティスは言う。
「つまんなーーい!」
更にキュッリッキが不満を垂れたところへ、ブルニタルとペルラが談話室に顔を出した。
「おや、おかえりなさい」
「例の黒幕が判明しました」
眼鏡をクイッと手で押し上げながら、ブルニタルがメモ帳を開いた。記憶スキル〈才能〉を持つが、何故かメモ帳に書き留める癖がある。
トゥルーク王国の王女護衛の依頼を受けたあと、ブルニタルとペルラはカーティスの命令で、黒幕の調査を行っていた。ライオン傭兵団では依頼内容に不可解な部分があると、依頼を引き受ける一方、そうした調査も行うようにしている。2人は傭兵団における調査のスペシャリストだ。
調査報告をするブルニタルの横で、ペルラが補足を入れる。
「それは本当ですか!?」
驚きを隠せない面持ちで、カーティスは2人を凝視した。
「間違いありません。裏付けをとるのに苦労しましたけど」
猫のトゥーリ族であるブルニタルとペルラは、揃って尻尾をそよがせた。
「それって、タイヘンじゃない!!」
ソファに寝転がって黙って聞いていたキュッリッキが、勢いよくソファの上で跳ね起きた。
「こら、ソファの上で跳ねるな」
そばにいたギャリーが、ゆるく嗜める。
「こーしちゃいられないんだから!」
聞いちゃいないキュッリッキは、握り拳を作って気合を入れると、談話室を飛び出していった。
「おい!?」
弾丸のごとき勢いで飛び出していったキュッリッキを、室内にいた皆は呆気に取られて見送っていた。
「どこ飛び出していったんだお嬢は?」
ギャリーは床に転がったペンギンのぬいぐるみを拾い上げる。
「まさか、メルヴィンたちのところへ?」
目を細めながらザカリーが言うと、カーティスが首をひねる。
「もしエグザイル・システムに向かったら、陰の護衛たちが引き留めるでしょう」
キュッリッキ自身は気づいていないし知らないが、皇王とベルトルド双方から差し向けられた護衛が、陰ながらキュッリッキを24時間護り続けている。そして、皇都イララクスから一人で出ようものなら、問答無用で引き留める命令も、護衛たちは受けている。そのことをカーティスは知っていた。
ベルトルドだけではなく、正式に皇国が後ろ盾についた今、キュッリッキの自由は制限されている。召喚スキル〈才能〉を持つ故だ。
「しゃーねーなぁ全く」
よっこらせっと立ち上がると、ギャリーはザカリーに顎をしゃくった。
「お嬢を探しに行くぞ」
「へいよ」
「なんか、少なくなって寂しいかもー」
談話室のソファにころりと横になりながら、キュッリッキは唇を尖らせた。いつもなら賑わっている談話室の中が、閑散としていた。
「仕事があるのは、いいことですよ」
本から顔を上げずにカーティスは言う。
「つまんなーーい!」
更にキュッリッキが不満を垂れたところへ、ブルニタルとペルラが談話室に顔を出した。
「おや、おかえりなさい」
「例の黒幕が判明しました」
眼鏡をクイッと手で押し上げながら、ブルニタルがメモ帳を開いた。記憶スキル〈才能〉を持つが、何故かメモ帳に書き留める癖がある。
トゥルーク王国の王女護衛の依頼を受けたあと、ブルニタルとペルラはカーティスの命令で、黒幕の調査を行っていた。ライオン傭兵団では依頼内容に不可解な部分があると、依頼を引き受ける一方、そうした調査も行うようにしている。2人は傭兵団における調査のスペシャリストだ。
調査報告をするブルニタルの横で、ペルラが補足を入れる。
「それは本当ですか!?」
驚きを隠せない面持ちで、カーティスは2人を凝視した。
「間違いありません。裏付けをとるのに苦労しましたけど」
猫のトゥーリ族であるブルニタルとペルラは、揃って尻尾をそよがせた。
「それって、タイヘンじゃない!!」
ソファに寝転がって黙って聞いていたキュッリッキが、勢いよくソファの上で跳ね起きた。
「こら、ソファの上で跳ねるな」
そばにいたギャリーが、ゆるく嗜める。
「こーしちゃいられないんだから!」
聞いちゃいないキュッリッキは、握り拳を作って気合を入れると、談話室を飛び出していった。
「おい!?」
弾丸のごとき勢いで飛び出していったキュッリッキを、室内にいた皆は呆気に取られて見送っていた。
「どこ飛び出していったんだお嬢は?」
ギャリーは床に転がったペンギンのぬいぐるみを拾い上げる。
「まさか、メルヴィンたちのところへ?」
目を細めながらザカリーが言うと、カーティスが首をひねる。
「もしエグザイル・システムに向かったら、陰の護衛たちが引き留めるでしょう」
キュッリッキ自身は気づいていないし知らないが、皇王とベルトルド双方から差し向けられた護衛が、陰ながらキュッリッキを24時間護り続けている。そして、皇都イララクスから一人で出ようものなら、問答無用で引き留める命令も、護衛たちは受けている。そのことをカーティスは知っていた。
ベルトルドだけではなく、正式に皇国が後ろ盾についた今、キュッリッキの自由は制限されている。召喚スキル〈才能〉を持つ故だ。
「しゃーねーなぁ全く」
よっこらせっと立ち上がると、ギャリーはザカリーに顎をしゃくった。
「お嬢を探しに行くぞ」
「へいよ」
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