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アン=マリー女学院からの依頼編
episode536
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「よく眠ってるね」
イリニア王女の顔を覗き込むようにして、ルーファスがぽつりとこぼす。それに頷いて、メルヴィンは握っているイリニア王女の手に目を向けた。
「あんなにすぐの奇襲で馬車が壊れてしまいましたし、慣れない山歩きで疲れたんだと思います」
「予想外過ぎたよね~、まさか街を出てすぐ奇襲とか」
アン=マリー女学院でイリニア王女を託されたあと、メルヴィンたちはすぐに出発した。学院側で質素な馬車が用意され、馬車を操りながら戦闘が出来るタルコットが御者に、防御と攻撃が行える魔法使いのシビルがその横でサポート、そして感知に優れたメルヴィンと、咄嗟に防御が張れるルーファスが、中でイリニア王女を守る。
シオンの街からもっとも近い――それなりの距離はかかる――汽車の終点駅のある街ヴェルゼッドまで、馬車で向かう予定だった。途中休息を挟みながらになるので、4日くらいはかかるだろう。そこから汽車で一気に首都ヴァルテルへ行く。
ところが街を出て数分経った頃に奇襲を受けた。
如何にもな黒い外套を頭からすっぽり被った、魔法使いが5名、武器を振り回す戦闘員が10名。計15名による奇襲だ。
さすがに魔法攻撃だと分が悪く、かわしきれなかった魔法による攻撃が馬と車に着弾し、修理不可能までに壊されてしまった。
その後軽くキレたタルコットが大暴れして敵は全滅させたが、絶命する前の敵から首謀者を問いただそうとするものの、それは知らなかったようである。ルーファスによる透視でも、探り出すことは無理だった。
一旦街へ戻って馬車を調達することも検討されたが、奇襲のタイミングがあまりにも早かったことを警戒して、歩いてヴェルゼッドの街まで向かう事が決まった。
広大なノーテリエ山地を旅するということで、シエンの街を出る前に、シビルはイリニア王女に旅装の指示を細かく出した。どんなに高貴な身分でも、自らの足で旅をしなくてはならない。そのため旅をする服装や靴は大事だ。
そのかいもあり、山歩きでもイリニア王女はしっかりと皆についてきた。しかし、それは無理を隠していたことが夕刻には判り、沢を見つけて野宿することになった。初日に無理をさせて、首都に着くまでもたなかったら洒落にならない。
すみません、と心底申し訳なさそうに詫びるイリニア王女を皆でねぎらい、軽い食事を摂らせてから寝かせた。でもよほど心細かったのか、ずっと山歩きで手をひいていたメルヴィンに、寝ている間手を握っていて欲しいと請うてきて、メルヴィンはイリニア王女の手を握ってそばに座っていた。
「なんか、メルヴィンばっかりモテ期だなあ、このところ」
横目で嫉妬混じりの視線を受けて、メルヴィンは目をぱちくりさせる。
「え、そうですか?」
「キューリちゃんとか王女サマとか、美少女にモテてる」
拗ねるようにルーファスに言われて、メルヴィンは困ったように笑った。
イリニア王女の顔を覗き込むようにして、ルーファスがぽつりとこぼす。それに頷いて、メルヴィンは握っているイリニア王女の手に目を向けた。
「あんなにすぐの奇襲で馬車が壊れてしまいましたし、慣れない山歩きで疲れたんだと思います」
「予想外過ぎたよね~、まさか街を出てすぐ奇襲とか」
アン=マリー女学院でイリニア王女を託されたあと、メルヴィンたちはすぐに出発した。学院側で質素な馬車が用意され、馬車を操りながら戦闘が出来るタルコットが御者に、防御と攻撃が行える魔法使いのシビルがその横でサポート、そして感知に優れたメルヴィンと、咄嗟に防御が張れるルーファスが、中でイリニア王女を守る。
シオンの街からもっとも近い――それなりの距離はかかる――汽車の終点駅のある街ヴェルゼッドまで、馬車で向かう予定だった。途中休息を挟みながらになるので、4日くらいはかかるだろう。そこから汽車で一気に首都ヴァルテルへ行く。
ところが街を出て数分経った頃に奇襲を受けた。
如何にもな黒い外套を頭からすっぽり被った、魔法使いが5名、武器を振り回す戦闘員が10名。計15名による奇襲だ。
さすがに魔法攻撃だと分が悪く、かわしきれなかった魔法による攻撃が馬と車に着弾し、修理不可能までに壊されてしまった。
その後軽くキレたタルコットが大暴れして敵は全滅させたが、絶命する前の敵から首謀者を問いただそうとするものの、それは知らなかったようである。ルーファスによる透視でも、探り出すことは無理だった。
一旦街へ戻って馬車を調達することも検討されたが、奇襲のタイミングがあまりにも早かったことを警戒して、歩いてヴェルゼッドの街まで向かう事が決まった。
広大なノーテリエ山地を旅するということで、シエンの街を出る前に、シビルはイリニア王女に旅装の指示を細かく出した。どんなに高貴な身分でも、自らの足で旅をしなくてはならない。そのため旅をする服装や靴は大事だ。
そのかいもあり、山歩きでもイリニア王女はしっかりと皆についてきた。しかし、それは無理を隠していたことが夕刻には判り、沢を見つけて野宿することになった。初日に無理をさせて、首都に着くまでもたなかったら洒落にならない。
すみません、と心底申し訳なさそうに詫びるイリニア王女を皆でねぎらい、軽い食事を摂らせてから寝かせた。でもよほど心細かったのか、ずっと山歩きで手をひいていたメルヴィンに、寝ている間手を握っていて欲しいと請うてきて、メルヴィンはイリニア王女の手を握ってそばに座っていた。
「なんか、メルヴィンばっかりモテ期だなあ、このところ」
横目で嫉妬混じりの視線を受けて、メルヴィンは目をぱちくりさせる。
「え、そうですか?」
「キューリちゃんとか王女サマとか、美少女にモテてる」
拗ねるようにルーファスに言われて、メルヴィンは困ったように笑った。
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