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アン=マリー女学院からの依頼編
episode531
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夕食が済んでから就寝までの時間、メルヴィンとキュッリッキはどちらかの部屋で、2人きりで時間を過ごす。今日はキュッリッキの部屋になった。
ベッドに並んで座り、他愛ないおしゃべりをする。
万難を排して無事恋人同士となって早2週間。アジトだから当然仲間たちがいるので、ゆっくり2人だけの時間を持ちたいと考えたメルヴィンの提案で、こうして自室でその時間を作っていた。
「メルヴィンと離れ離れになっちゃうの、やっぱりヤダな……」
キリ夫人のナイスアイディアで、なんとかキュッリッキの噴火は収まり話はまとまったが、キュッリッキとしては片時もそばを離れたくないのだ。結ばれてまだ2週間しか経っていないのもある。
「オレもです。でもね、この先こんなことはしょっちゅう続くわけで、割り切らなきゃ」
「そんなこと、判ってるもん…」
嘘でもいいから、やっぱり仕事行くの止めようかな、と言って欲しいのだ。もちろんメルヴィンは、そんなキュッリッキの気持ちはお見通しだ。それでもやはり、それは言ってはいけないと判っている。
メルヴィンは拗ねているキュッリッキの細い肩を抱き寄せ、両手でしっかりと抱きしめた。
「今日は一緒に寝よう」
囁くように言われて、キュッリッキの顔がパッと明るくなった。
「うん!」
「数日会えないから、出発するまでリッキーと一緒に居たい」
「アタシも」
耳まで真っ赤にしながらも、喜びに顔を生き生きと輝かせてメルヴィンに微笑んだ。そんな愛しい少女に微笑み返しながらも、メルヴィンは心の中でちょっと苦笑した。
一緒に寝よう、と言われて警戒されないのも、抵抗されないのも悲しいものがある。キュッリッキはまだ、男を知らないからだ。
この少女がどんなに色香に欠ける身体をしているとはいっても、抱きたいという願望はある。
キュッリッキの体臭は花の香りのような、優しく甘い匂いがする。香水は使っていないようなので、これがキュッリッキの放つ香りなのだ。この香りは常にメルヴィンの心をざわつかせ、幾度となく理性との戦いを強いられていた。
自分から求めてくるようになるまで、我慢すると決心しているが、果たしていつまで耐えられるか自信がない。
そんなメルヴィンの男心も知らず、キュッリッキはキスをねだってくる。まだ自分からしてくることはないが、愛らしい唇をツンと差し出し、目を閉じてメルヴィンからしてくるのを待っている。
「あなたを食べちゃいそうです」
「え?」
求められるまま濃厚な口づけをかわし、倒れこむように狭いベッドにキュッリッキと横たわる。そしてキュッリッキに覆いかぶさるようにして、その美しい顔を見おろした。
キス以上の何かを期待するような色は、その不思議な瞳には浮かんでいなかった。警戒したり不安そうにしたりというような色もまるでない。じっとメルヴィンを見つめながら、顔を紅潮させているだけだった。
性欲がまるでないのか、それとも自分を信じきっているのだろうか。キスはするのだから、まるきり性欲がないとは言えないだろう。純粋だから、という言葉で完結するのも何故か虚しかった。
「まだまだ、先は長そうです」
「何が?」
「いえ、何でもありません。もう寝ましょうか、明日は早いですから」
「うん~」
首をかしげるキュッリッキに優しく微笑みかけて、メルヴィンはサイドテーブルのランプを消した。
ベッドに並んで座り、他愛ないおしゃべりをする。
万難を排して無事恋人同士となって早2週間。アジトだから当然仲間たちがいるので、ゆっくり2人だけの時間を持ちたいと考えたメルヴィンの提案で、こうして自室でその時間を作っていた。
「メルヴィンと離れ離れになっちゃうの、やっぱりヤダな……」
キリ夫人のナイスアイディアで、なんとかキュッリッキの噴火は収まり話はまとまったが、キュッリッキとしては片時もそばを離れたくないのだ。結ばれてまだ2週間しか経っていないのもある。
「オレもです。でもね、この先こんなことはしょっちゅう続くわけで、割り切らなきゃ」
「そんなこと、判ってるもん…」
嘘でもいいから、やっぱり仕事行くの止めようかな、と言って欲しいのだ。もちろんメルヴィンは、そんなキュッリッキの気持ちはお見通しだ。それでもやはり、それは言ってはいけないと判っている。
メルヴィンは拗ねているキュッリッキの細い肩を抱き寄せ、両手でしっかりと抱きしめた。
「今日は一緒に寝よう」
囁くように言われて、キュッリッキの顔がパッと明るくなった。
「うん!」
「数日会えないから、出発するまでリッキーと一緒に居たい」
「アタシも」
耳まで真っ赤にしながらも、喜びに顔を生き生きと輝かせてメルヴィンに微笑んだ。そんな愛しい少女に微笑み返しながらも、メルヴィンは心の中でちょっと苦笑した。
一緒に寝よう、と言われて警戒されないのも、抵抗されないのも悲しいものがある。キュッリッキはまだ、男を知らないからだ。
この少女がどんなに色香に欠ける身体をしているとはいっても、抱きたいという願望はある。
キュッリッキの体臭は花の香りのような、優しく甘い匂いがする。香水は使っていないようなので、これがキュッリッキの放つ香りなのだ。この香りは常にメルヴィンの心をざわつかせ、幾度となく理性との戦いを強いられていた。
自分から求めてくるようになるまで、我慢すると決心しているが、果たしていつまで耐えられるか自信がない。
そんなメルヴィンの男心も知らず、キュッリッキはキスをねだってくる。まだ自分からしてくることはないが、愛らしい唇をツンと差し出し、目を閉じてメルヴィンからしてくるのを待っている。
「あなたを食べちゃいそうです」
「え?」
求められるまま濃厚な口づけをかわし、倒れこむように狭いベッドにキュッリッキと横たわる。そしてキュッリッキに覆いかぶさるようにして、その美しい顔を見おろした。
キス以上の何かを期待するような色は、その不思議な瞳には浮かんでいなかった。警戒したり不安そうにしたりというような色もまるでない。じっとメルヴィンを見つめながら、顔を紅潮させているだけだった。
性欲がまるでないのか、それとも自分を信じきっているのだろうか。キスはするのだから、まるきり性欲がないとは言えないだろう。純粋だから、という言葉で完結するのも何故か虚しかった。
「まだまだ、先は長そうです」
「何が?」
「いえ、何でもありません。もう寝ましょうか、明日は早いですから」
「うん~」
首をかしげるキュッリッキに優しく微笑みかけて、メルヴィンはサイドテーブルのランプを消した。
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