591 / 882
アン=マリー女学院からの依頼編
episode528
しおりを挟む
早すぎるデートから帰ってきた2人を、ガエルは玄関で不思議そうに出迎えた。
「昼は外で食べてくるって、言っていなかったか?」
「そ、そうでしたっけ」
「そうだったもん!」
案の定キュッリッキはむくれている。メルヴィンはどこか誤魔化すような笑顔を浮かべていた。
「まあ、ちょうどいい。カーティスが呼んでいたぞ」
「仕事ですか?」
「みたいだ」
「油を届けてから、すぐ行きます」
「キューリは俺に付き合ってくれ。蜂蜜買いに行く」
「………グンネルさんとこの、ウルトラスペシャルバケツパフェおごってくれるならイイヨ」
「好きなだけ食わせてやる」
「じゃ行く!」
キュッリッキはむくれ顔のままガエルの手をギュッと掴むと、引っ張るようにして外に出て行った。
最近蜂蜜屋の売り子が若い女性になり、なんとなく気恥ずかしいガエルは、いつもキュッリッキに同伴を頼む。キュッリッキが一緒なら、蜂蜜が大好きなのはキュッリッキで、自分は荷物持ちだからと言い訳したいのだ。それなら多少気恥ずかしさも和らぐためだった。
もっとも、買っていく量が業務用レベルなので、効果はあまり期待できないし、蜂蜜屋ではガエルが食べるぶんだということは先刻承知の上だ。バレバレなことにガエルは気づいていなかったが。
内心「ごめんね」とキュッリッキに詫びながら2人を見送り、メルヴィンは台所へ向かった。
大きく勘違いしたまま、
(プロポーズは自分からきちんとしたいから)
そう、心の中で呟いた。
談話室へ行くと、カーティスをはじめとした面々が顔を揃えていた。
「あれ、ランチ食べてくるんじゃなかったのか?」
ザカリーにまで不思議そうに言われて、メルヴィンは困ったように頭を掻いた。
「いえ、その、予定変更しました……」
歯切れの悪い言い方に、みんなに「ん?」という顔をされて、メルヴィンはますます困ったように俯いた。
キュッリッキの遠まわしのプロポーズめいた言葉に焦って――思いっきりカンチガイ――逃げ帰ってきたとは到底言えなかった。
「まあ、タイミングが良かったというか、なんというかですが、仕事です」
いまいちよく判らないけど、といった表情でカーティスが本題に切り替えた。
「トゥルーク王国にある、アン=マリー女学院というところから、ギルド経由で依頼がきています」
「女の園!!」
興奮したようにルーファスが反応する。
「ええ、未成年者いっぱいの女の園です。その未成年だらけの女の園の院長が依頼主ですが、在校生であるトゥルーク王国の未成年の王女の護衛を頼みたいそうです」
くどいくらいに”未成年”を強調され、ルーファスは渋い顔をした。
「ふーむ、王女サマの護衛任務かぁ~……護衛ねぇ」
つまらなさそうにマリオンが呟く。それにギャリーも同意するように呻いた。
「オレぁーパスだな、護衛は性に合わねえ」
「なんで、学校の先生が王女の護衛依頼なんかするんだい?」
珍しくランドンにツッコまれ、カーティスも首をひねる。
「諸々の細かい理由などは、現地で話したいということなんですよ」
「なんだそりゃ…」
ザカリーの呟きに、談話室のあちこちから頷きが返ってくる。
「昼は外で食べてくるって、言っていなかったか?」
「そ、そうでしたっけ」
「そうだったもん!」
案の定キュッリッキはむくれている。メルヴィンはどこか誤魔化すような笑顔を浮かべていた。
「まあ、ちょうどいい。カーティスが呼んでいたぞ」
「仕事ですか?」
「みたいだ」
「油を届けてから、すぐ行きます」
「キューリは俺に付き合ってくれ。蜂蜜買いに行く」
「………グンネルさんとこの、ウルトラスペシャルバケツパフェおごってくれるならイイヨ」
「好きなだけ食わせてやる」
「じゃ行く!」
キュッリッキはむくれ顔のままガエルの手をギュッと掴むと、引っ張るようにして外に出て行った。
最近蜂蜜屋の売り子が若い女性になり、なんとなく気恥ずかしいガエルは、いつもキュッリッキに同伴を頼む。キュッリッキが一緒なら、蜂蜜が大好きなのはキュッリッキで、自分は荷物持ちだからと言い訳したいのだ。それなら多少気恥ずかしさも和らぐためだった。
もっとも、買っていく量が業務用レベルなので、効果はあまり期待できないし、蜂蜜屋ではガエルが食べるぶんだということは先刻承知の上だ。バレバレなことにガエルは気づいていなかったが。
内心「ごめんね」とキュッリッキに詫びながら2人を見送り、メルヴィンは台所へ向かった。
大きく勘違いしたまま、
(プロポーズは自分からきちんとしたいから)
そう、心の中で呟いた。
談話室へ行くと、カーティスをはじめとした面々が顔を揃えていた。
「あれ、ランチ食べてくるんじゃなかったのか?」
ザカリーにまで不思議そうに言われて、メルヴィンは困ったように頭を掻いた。
「いえ、その、予定変更しました……」
歯切れの悪い言い方に、みんなに「ん?」という顔をされて、メルヴィンはますます困ったように俯いた。
キュッリッキの遠まわしのプロポーズめいた言葉に焦って――思いっきりカンチガイ――逃げ帰ってきたとは到底言えなかった。
「まあ、タイミングが良かったというか、なんというかですが、仕事です」
いまいちよく判らないけど、といった表情でカーティスが本題に切り替えた。
「トゥルーク王国にある、アン=マリー女学院というところから、ギルド経由で依頼がきています」
「女の園!!」
興奮したようにルーファスが反応する。
「ええ、未成年者いっぱいの女の園です。その未成年だらけの女の園の院長が依頼主ですが、在校生であるトゥルーク王国の未成年の王女の護衛を頼みたいそうです」
くどいくらいに”未成年”を強調され、ルーファスは渋い顔をした。
「ふーむ、王女サマの護衛任務かぁ~……護衛ねぇ」
つまらなさそうにマリオンが呟く。それにギャリーも同意するように呻いた。
「オレぁーパスだな、護衛は性に合わねえ」
「なんで、学校の先生が王女の護衛依頼なんかするんだい?」
珍しくランドンにツッコまれ、カーティスも首をひねる。
「諸々の細かい理由などは、現地で話したいということなんですよ」
「なんだそりゃ…」
ザカリーの呟きに、談話室のあちこちから頷きが返ってくる。
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる