587 / 882
番外編・2
コッコラ王国の悲劇・42
しおりを挟む
ドキドキと高鳴る胸の鼓動を、胸の前で組み合わせた両手で必死に抑え込み、一歩を踏み出そうとしたその時、
「ぶえックショイぃ!!!」
いきなり品のないクシャミを盛大にしたベルトルドに驚いたジーネット王女は、「えっ!?」と驚いて足をもつれさせると、よろよろと前につんのめり、ダイナミックに噴水の中に顔からダイブしてしまった。
「ん??」
バッシャーンという水音と水が大きく跳ねて、それは無意識に発動する空間転移能力でかわし、ずぶ濡れは免れたベルトルドが、水に頭を突っ込んでいる貴婦人を不思議そうにみながらも助けようとした。しかしその手は、ジーネット王女を助け起こすことなく空ぶった。
「いい加減後始末は自分でしろごるぁ!!」
「いやーん」
赤いオーラでも見えそうなほど激怒したアルカネットが、問答無用でベルトルドの襟首を掴んで、屋敷のほうへ引きずっていってしまったのである。
頭を水の中に沈めてしまっていたジーネット王女には、そのやり取りがまったく聞こえていなかったため、何故ベルトルドが助け起こしてくれなかったのかと、激しいショックを受けた。
自力でどうにか起き上がると、ジーネット王女はずぶ濡れのままその場に泣き崩れた。そして翌日すぐに、国へと帰った。
突如舞い戻ってきた王女は後宮にこもり、父王と王太子は首をかしげるばかり。
ハワドウレ皇国へ行っていたジーネット王女から、定期的に送られてくる手紙には、ハーメンリンナで過ごす楽しく様子と、副宰相ベルトルドへの恋心がつぶさに綴られていたのだ。
それがこんなに辛そうに毎日泣きはらして、今も延々と泣き続けている。
父王と王太子は、辛抱強く王女からの告白を待った。
帰国して数日後、泣きながらようやく話し出すと、その内容を聴いた父王と王太子は、瞬時に燃え盛るほど激怒した。
「このような……………惨めな……………思いを…………ベルトルド様から……受ける………………なんて………ひどすぎます」
もしや王女は副宰相ベルトルドに辱めを受けたのでは!? それでこんなにも。
ベルトルドの女癖の悪さは、社交界から他国にも知れ渡っている。そのような男なら、相手が王女だろうとありえることだ。
かりにもベルトルドはハワドウレ皇国の副宰相である。重鎮なのだ。ひいてはジーネット王女は、皇国自体に辱めを受けたといっていい。
メティン国王と王太子は、王女の名誉を守るため、辱めを受けた事実は徹底して伏せた。そして王家の受けた侮辱を晴らし、副宰相ベルトルドを処刑するために行動に出たのだ。
そのことをあとで知らされたジーネット王女は、飛び上がるほど仰天した。
「なんですって!?」
自分はベルトルドから何もされてなどおらず、まして辱めを受けたとはどういうことなのだろうかと。
乳母から事の次第を聞かされ、更に王女は動転した。
父王と兄君は、完全に聞き間違いをしていたのである。
ジーネット王女は泣きじゃくりながら喋っていたため、言葉がどうしても途切れがちになっていたので、周りには、
「このような……………惨めな……………思いを…………ベルトルド様から……受ける………………なんて………ひどすぎます」
こう聞こえていた。しかし本当は、
「このようなわたくしでも勇気を出して一歩を踏み出したのに、転んで惨めな姿を晒してしまうことになって、恋しいという思いをぶつけることもできず、ベルトルド様からの助けを受けることも出来なかったなんて、わたくしの人生ひどすぎます」
こう訴えていたのだ。
兄の王太子は迅速に動くことで有名だ。その兄が戦争を起こすためにとった行動は、普段よりも迅速であり、もはや王女は真実を述べることが出来ないところまで事態は進んでしまっていたのだった。
たとえ勇気を出して告白したとしても、激高している兄の耳には、もう届かないだろう。
「ぶえックショイぃ!!!」
いきなり品のないクシャミを盛大にしたベルトルドに驚いたジーネット王女は、「えっ!?」と驚いて足をもつれさせると、よろよろと前につんのめり、ダイナミックに噴水の中に顔からダイブしてしまった。
「ん??」
バッシャーンという水音と水が大きく跳ねて、それは無意識に発動する空間転移能力でかわし、ずぶ濡れは免れたベルトルドが、水に頭を突っ込んでいる貴婦人を不思議そうにみながらも助けようとした。しかしその手は、ジーネット王女を助け起こすことなく空ぶった。
「いい加減後始末は自分でしろごるぁ!!」
「いやーん」
赤いオーラでも見えそうなほど激怒したアルカネットが、問答無用でベルトルドの襟首を掴んで、屋敷のほうへ引きずっていってしまったのである。
頭を水の中に沈めてしまっていたジーネット王女には、そのやり取りがまったく聞こえていなかったため、何故ベルトルドが助け起こしてくれなかったのかと、激しいショックを受けた。
自力でどうにか起き上がると、ジーネット王女はずぶ濡れのままその場に泣き崩れた。そして翌日すぐに、国へと帰った。
突如舞い戻ってきた王女は後宮にこもり、父王と王太子は首をかしげるばかり。
ハワドウレ皇国へ行っていたジーネット王女から、定期的に送られてくる手紙には、ハーメンリンナで過ごす楽しく様子と、副宰相ベルトルドへの恋心がつぶさに綴られていたのだ。
それがこんなに辛そうに毎日泣きはらして、今も延々と泣き続けている。
父王と王太子は、辛抱強く王女からの告白を待った。
帰国して数日後、泣きながらようやく話し出すと、その内容を聴いた父王と王太子は、瞬時に燃え盛るほど激怒した。
「このような……………惨めな……………思いを…………ベルトルド様から……受ける………………なんて………ひどすぎます」
もしや王女は副宰相ベルトルドに辱めを受けたのでは!? それでこんなにも。
ベルトルドの女癖の悪さは、社交界から他国にも知れ渡っている。そのような男なら、相手が王女だろうとありえることだ。
かりにもベルトルドはハワドウレ皇国の副宰相である。重鎮なのだ。ひいてはジーネット王女は、皇国自体に辱めを受けたといっていい。
メティン国王と王太子は、王女の名誉を守るため、辱めを受けた事実は徹底して伏せた。そして王家の受けた侮辱を晴らし、副宰相ベルトルドを処刑するために行動に出たのだ。
そのことをあとで知らされたジーネット王女は、飛び上がるほど仰天した。
「なんですって!?」
自分はベルトルドから何もされてなどおらず、まして辱めを受けたとはどういうことなのだろうかと。
乳母から事の次第を聞かされ、更に王女は動転した。
父王と兄君は、完全に聞き間違いをしていたのである。
ジーネット王女は泣きじゃくりながら喋っていたため、言葉がどうしても途切れがちになっていたので、周りには、
「このような……………惨めな……………思いを…………ベルトルド様から……受ける………………なんて………ひどすぎます」
こう聞こえていた。しかし本当は、
「このようなわたくしでも勇気を出して一歩を踏み出したのに、転んで惨めな姿を晒してしまうことになって、恋しいという思いをぶつけることもできず、ベルトルド様からの助けを受けることも出来なかったなんて、わたくしの人生ひどすぎます」
こう訴えていたのだ。
兄の王太子は迅速に動くことで有名だ。その兄が戦争を起こすためにとった行動は、普段よりも迅速であり、もはや王女は真実を述べることが出来ないところまで事態は進んでしまっていたのだった。
たとえ勇気を出して告白したとしても、激高している兄の耳には、もう届かないだろう。
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。

転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
前世で辛い思いをしたので、神様が謝罪に来ました
初昔 茶ノ介
ファンタジー
日本でブラック企業に勤めるOL、咲は苦難の人生だった。
幼少の頃からの親のDV、クラスメイトからのイジメ、会社でも上司からのパワハラにセクハラ、同僚からのイジメなど、とうとう心に限界が迫っていた。
そしていつものように残業終わりの大雨の夜。
アパートへの帰り道、落雷に撃たれ死んでしまった。
自身の人生にいいことなどなかったと思っていると、目の前に神と名乗る男が現れて……。
辛い人生を送ったOLの2度目の人生、幸せへまっしぐら!
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
のんびり書いていきますので、よかったら楽しんでください。

旅行先で目を覚ましたら森長可になっていた私。京で政変と聞き急ぎ美濃を目指す中、唯一の協力者。出浦盛清から紹介された人物が……どうも怪しい。
俣彦
ファンタジー
旅先で目を覚ましたら森長可になっていた私。場面は本能寺直後の越後。急ぎ美濃に戻ろうと試みると周りは敵だらけ。唯一協力を申し出てくれた出浦盛清に助けられ、美濃を目指す途中。出浦盛清に紹介されたのが真田昌幸。

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~
さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』
誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。
辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。
だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。
学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる
これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

貧乏秀才令嬢がヤサグレ天才少年と、世界の理を揺るがします。
凜
恋愛
貧乏貴族のダリアは、国一番の魔法学校の副首席。首席になりたいのに、その壁はとんでもなくぶあつく…。
ある日謎多き少年シアンと出会い、彼が首席とわかるやいなや強烈な興味を持ち粘着するようになった。
クセの多い登場人物が織りなす、身分、才能、美醜が絡み、陰謀渦巻く魔法学校でのスクールストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる