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番外編・2
コッコラ王国の悲劇・42
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ドキドキと高鳴る胸の鼓動を、胸の前で組み合わせた両手で必死に抑え込み、一歩を踏み出そうとしたその時、
「ぶえックショイぃ!!!」
いきなり品のないクシャミを盛大にしたベルトルドに驚いたジーネット王女は、「えっ!?」と驚いて足をもつれさせると、よろよろと前につんのめり、ダイナミックに噴水の中に顔からダイブしてしまった。
「ん??」
バッシャーンという水音と水が大きく跳ねて、それは無意識に発動する空間転移能力でかわし、ずぶ濡れは免れたベルトルドが、水に頭を突っ込んでいる貴婦人を不思議そうにみながらも助けようとした。しかしその手は、ジーネット王女を助け起こすことなく空ぶった。
「いい加減後始末は自分でしろごるぁ!!」
「いやーん」
赤いオーラでも見えそうなほど激怒したアルカネットが、問答無用でベルトルドの襟首を掴んで、屋敷のほうへ引きずっていってしまったのである。
頭を水の中に沈めてしまっていたジーネット王女には、そのやり取りがまったく聞こえていなかったため、何故ベルトルドが助け起こしてくれなかったのかと、激しいショックを受けた。
自力でどうにか起き上がると、ジーネット王女はずぶ濡れのままその場に泣き崩れた。そして翌日すぐに、国へと帰った。
突如舞い戻ってきた王女は後宮にこもり、父王と王太子は首をかしげるばかり。
ハワドウレ皇国へ行っていたジーネット王女から、定期的に送られてくる手紙には、ハーメンリンナで過ごす楽しく様子と、副宰相ベルトルドへの恋心がつぶさに綴られていたのだ。
それがこんなに辛そうに毎日泣きはらして、今も延々と泣き続けている。
父王と王太子は、辛抱強く王女からの告白を待った。
帰国して数日後、泣きながらようやく話し出すと、その内容を聴いた父王と王太子は、瞬時に燃え盛るほど激怒した。
「このような……………惨めな……………思いを…………ベルトルド様から……受ける………………なんて………ひどすぎます」
もしや王女は副宰相ベルトルドに辱めを受けたのでは!? それでこんなにも。
ベルトルドの女癖の悪さは、社交界から他国にも知れ渡っている。そのような男なら、相手が王女だろうとありえることだ。
かりにもベルトルドはハワドウレ皇国の副宰相である。重鎮なのだ。ひいてはジーネット王女は、皇国自体に辱めを受けたといっていい。
メティン国王と王太子は、王女の名誉を守るため、辱めを受けた事実は徹底して伏せた。そして王家の受けた侮辱を晴らし、副宰相ベルトルドを処刑するために行動に出たのだ。
そのことをあとで知らされたジーネット王女は、飛び上がるほど仰天した。
「なんですって!?」
自分はベルトルドから何もされてなどおらず、まして辱めを受けたとはどういうことなのだろうかと。
乳母から事の次第を聞かされ、更に王女は動転した。
父王と兄君は、完全に聞き間違いをしていたのである。
ジーネット王女は泣きじゃくりながら喋っていたため、言葉がどうしても途切れがちになっていたので、周りには、
「このような……………惨めな……………思いを…………ベルトルド様から……受ける………………なんて………ひどすぎます」
こう聞こえていた。しかし本当は、
「このようなわたくしでも勇気を出して一歩を踏み出したのに、転んで惨めな姿を晒してしまうことになって、恋しいという思いをぶつけることもできず、ベルトルド様からの助けを受けることも出来なかったなんて、わたくしの人生ひどすぎます」
こう訴えていたのだ。
兄の王太子は迅速に動くことで有名だ。その兄が戦争を起こすためにとった行動は、普段よりも迅速であり、もはや王女は真実を述べることが出来ないところまで事態は進んでしまっていたのだった。
たとえ勇気を出して告白したとしても、激高している兄の耳には、もう届かないだろう。
「ぶえックショイぃ!!!」
いきなり品のないクシャミを盛大にしたベルトルドに驚いたジーネット王女は、「えっ!?」と驚いて足をもつれさせると、よろよろと前につんのめり、ダイナミックに噴水の中に顔からダイブしてしまった。
「ん??」
バッシャーンという水音と水が大きく跳ねて、それは無意識に発動する空間転移能力でかわし、ずぶ濡れは免れたベルトルドが、水に頭を突っ込んでいる貴婦人を不思議そうにみながらも助けようとした。しかしその手は、ジーネット王女を助け起こすことなく空ぶった。
「いい加減後始末は自分でしろごるぁ!!」
「いやーん」
赤いオーラでも見えそうなほど激怒したアルカネットが、問答無用でベルトルドの襟首を掴んで、屋敷のほうへ引きずっていってしまったのである。
頭を水の中に沈めてしまっていたジーネット王女には、そのやり取りがまったく聞こえていなかったため、何故ベルトルドが助け起こしてくれなかったのかと、激しいショックを受けた。
自力でどうにか起き上がると、ジーネット王女はずぶ濡れのままその場に泣き崩れた。そして翌日すぐに、国へと帰った。
突如舞い戻ってきた王女は後宮にこもり、父王と王太子は首をかしげるばかり。
ハワドウレ皇国へ行っていたジーネット王女から、定期的に送られてくる手紙には、ハーメンリンナで過ごす楽しく様子と、副宰相ベルトルドへの恋心がつぶさに綴られていたのだ。
それがこんなに辛そうに毎日泣きはらして、今も延々と泣き続けている。
父王と王太子は、辛抱強く王女からの告白を待った。
帰国して数日後、泣きながらようやく話し出すと、その内容を聴いた父王と王太子は、瞬時に燃え盛るほど激怒した。
「このような……………惨めな……………思いを…………ベルトルド様から……受ける………………なんて………ひどすぎます」
もしや王女は副宰相ベルトルドに辱めを受けたのでは!? それでこんなにも。
ベルトルドの女癖の悪さは、社交界から他国にも知れ渡っている。そのような男なら、相手が王女だろうとありえることだ。
かりにもベルトルドはハワドウレ皇国の副宰相である。重鎮なのだ。ひいてはジーネット王女は、皇国自体に辱めを受けたといっていい。
メティン国王と王太子は、王女の名誉を守るため、辱めを受けた事実は徹底して伏せた。そして王家の受けた侮辱を晴らし、副宰相ベルトルドを処刑するために行動に出たのだ。
そのことをあとで知らされたジーネット王女は、飛び上がるほど仰天した。
「なんですって!?」
自分はベルトルドから何もされてなどおらず、まして辱めを受けたとはどういうことなのだろうかと。
乳母から事の次第を聞かされ、更に王女は動転した。
父王と兄君は、完全に聞き間違いをしていたのである。
ジーネット王女は泣きじゃくりながら喋っていたため、言葉がどうしても途切れがちになっていたので、周りには、
「このような……………惨めな……………思いを…………ベルトルド様から……受ける………………なんて………ひどすぎます」
こう聞こえていた。しかし本当は、
「このようなわたくしでも勇気を出して一歩を踏み出したのに、転んで惨めな姿を晒してしまうことになって、恋しいという思いをぶつけることもできず、ベルトルド様からの助けを受けることも出来なかったなんて、わたくしの人生ひどすぎます」
こう訴えていたのだ。
兄の王太子は迅速に動くことで有名だ。その兄が戦争を起こすためにとった行動は、普段よりも迅速であり、もはや王女は真実を述べることが出来ないところまで事態は進んでしまっていたのだった。
たとえ勇気を出して告白したとしても、激高している兄の耳には、もう届かないだろう。
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