片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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番外編・2

コッコラ王国の悲劇・36

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 ザカリーの魔銃バーガットから放たれた複数の魔弾と、ペルラの放った複数のナイフが同時に襲いかかったのだ。

「不意をつくとは、卑怯だぞお前たち」

 呆れたように言うベルトルドに2人の攻撃は届かず、魔弾とナイフはまるで空間に飲み込まれるようにして消えた。

「い、言ったら避けられちまうだろうがっ!!」

 憤慨して怒鳴るザカリーに、そりゃそうだとベルトルドは愉快そうに笑った。

「そっか……、空間転移。それでさっきの攻撃全部が当たらず飲み込まれたんだね。一度に複数の攻撃を全部…やるな」

 尻尾をぴんっと立ててペルラが感心したように呟いた。

「なるほどねえ……」

 ペルラの呟きに、カーティスは簾のような前髪を鬱陶しそうにかきあげ、嫌そうに肩をすくめた。

 2人の会話を聴いて、ザカリーがギョッと慌てる。

「ちょ、勝てないんじゃケツまくって逃げたほうがよくね!?」

「そんなことを、この俺が許すと思うかのか、ザカリー?」

 底冷えするほど甘ったるく、優しい声でベルトルドが言う。

 この時初めて、ベルトルドは『逆らってはいけない人間』だということに気づいて、ライオン傭兵団は総毛立った。

 ちょうどその時、戦場の異変に気づいたブルニタルとマーゴットも現場に駆けつけてきた。そしてベルトルドとアルカネットを見て仰天する。

「俺は、わざわざ傭兵街に出向いてまで言ったな? 手を出すな、募集があっても食いつくなよ、と」

 優しい声音はそのままに、表情だけが笑顔で凄んでいる。

 圧されるように、ライオン傭兵団はじりじりと後ろにさがりだした。

「お前たちのおかげで、クソ大ボケジジイにバレバレで、尻拭いを命令されてしまっただろうが」

 ベルトルドの全身から立ち上る鬼迫が怖い。笑顔で凄んで優しい声を出してくるベルトルドが怖い。圧倒的な力が怖い。

 ――このひとマジで怖い!!

 そう思った次の瞬間、殆ど反射的に、ライオン傭兵団はベルトルドに向けて攻撃を仕掛けた。

 逃げるのではなく、攻撃に転じたのである。

 怖いものは排除する。そう、本能に突き動かされての行動だった。

「お仕置きだ馬鹿たれ共がああ!!」

 ベルトルドがグワッと叫ぶと同時に、それまで黙って控えていたアルカネットが前に出た。

「グラディウス・マイヤ!」

 ライオン傭兵団へ向けて手をかざすと、地面から水柱が無数に生えて、それは加速して彼らに向かって襲いかかる。

 ベルトルドは片手を前に薙ぐ。すると地面の土が抉れて持ち上がり、宙で無数に砕けると、鋭くライオン傭兵団めがけて飛んでいった。
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