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番外編・2
コッコラ王国の悲劇・34
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魔法スキル〈才能〉を持つ者たちは、魔力という特殊なエネルギーを内に秘めている。そしてその魔力をもとに、”魔法”と言う特殊な形に作り出し使うことができた。
魔法を使うときは、必ず呪文を唱える。唱えることで、魔力から使いたい魔法の属性を引き出し、形に作り上げることができるからだ。そしてそれを放つ時は、その魔法の名前を言葉に出す必要がある。
しかしアルカネットは呪文を必要とはしない、より特殊な魔法使いだ。
「あの人は無詠唱で魔法が使える、唯一の魔法使いですからねえ……」
ややうんざり気味に、カーティスがぼやく。
「オマケに魔力媒体ナシで、魔法を瞬時に作り出して放てますもんね」
シビルも溜め息混じりにぼやいた。
魔法使いたちは自身の魔力を一点に集中させるために、媒体となる魔具を使う。ハーマンは本、シビルは木の杖、カーティスは銀の杖など。これら魔具と呼ばれる媒体に魔力を集中させて、魔法の威力を安定させる。しかしアルカネットは魔具も使わない。瞬時に魔力を魔法の形に作り上げて放ってしまう。
「き~~~! これならどうさっ!!」
ハーマンはその場に踏ん張ると、本を開いてアルカネットを睨みつける。
「天もみたことがない稲妻と
地も聴いたことのない雷鳴を
遍く全ての想像を絶したる大音響を作り出さん!
イラアルータ・トニトルス!!」
突如晴れ渡った空から6本の雷の柱が振り落ち、それはうねりながらベルトルドとアルカネットに襲いかかった。
「いつの間に習得したんですか、ハーマン?」
カーティスが感心して言うと、
「今初めて使ってみたよ!!」
眉間を寄せながら、ハーマンは力んで叫ぶ。
イラアルータ・トニトルスは雷属性の最上級魔法で、魔法使いのイメージで形状は様々に変化させられる。高質量の雷エネルギーの塊で、喰らえば消し炭になるだろう。
轟音を鳴り響かせる雷の柱はしかし、
「トイコス・トゥルバ」
アルカネットが魔法の名を呟くと、2人の前に巨大な土壁がそそり立ち、襲いかかってきた雷の柱を吸収してしまった。
「う……」
ハーマンは耳をしょんぼりさせると、悔しそうにその場で地団駄を踏んだ。
「その程度の雷撃では、トイコス・トゥルバすら吹き飛ばせません。もっとコントロールを学びなさい、ハーマン」
どこか教師の様な口調でアルカネットが言うと、ハーマンはますますジタバタと暴れた。
「どうしたお前たち、もう終わりなのか?」
両手を腰に当てて偉そうにベルトルドがツッコむ。
「そんなわけ、ねーでしょーがっ」
ギャリーが叫びながら、魔剣シラーを振り上げ飛び上がった。そしてタルコットとメルヴィンもすぐにあとに続く。
ほぼ同時に振り下ろされる3つの刃は、ベルトルドに触れることなく3歩手前で弾けてしまい、3人は後方へ吹き飛ばされた。無様に転がらずにどうにか踏ん張り着地すると、3人は同じように突っ込んでいった。だがまたしても攻撃は弾かれてしまう。
「魔剣のパワーを弾くのかよ」
イライラとギャリーが呟くと、タルコットも忌々しげに唇を噛んだ。
「サイ《超能力》によるバリアですね……」
目には見えないが、ベルトルドの周囲にはサイ《超能力》の念力で作った防御が、しっかりと張られているようだ。
「サイ《超能力》にはサイ《超能力》でぇ~」
「いきますかっ」
マリオンとルーファスは同時に念力をベルトルドの防御にぶつける。
「ほう」
意外そうにベルトルドは呟くと、口の端を僅かにつりあげた。
サイ《超能力》を持つ者には、透明な壁同士が競り合っている様子が見えているが、常人には力の拮抗戦が見えない。力が衝突している地面のみが摩擦され抉られていた。
「おっさんの精神タフすぎっしょ……」
「えーん、打ち破れなぁ~~~い」
サイ《超能力》は精神力をエネルギーとして使う。マリオンもルーファスもサイ《超能力》所持者の中では最高ランクに属する。その2人がぶつける念力を、ベルトルドは涼しい顔で一人で押しとどめていた。
魔法を使うときは、必ず呪文を唱える。唱えることで、魔力から使いたい魔法の属性を引き出し、形に作り上げることができるからだ。そしてそれを放つ時は、その魔法の名前を言葉に出す必要がある。
しかしアルカネットは呪文を必要とはしない、より特殊な魔法使いだ。
「あの人は無詠唱で魔法が使える、唯一の魔法使いですからねえ……」
ややうんざり気味に、カーティスがぼやく。
「オマケに魔力媒体ナシで、魔法を瞬時に作り出して放てますもんね」
シビルも溜め息混じりにぼやいた。
魔法使いたちは自身の魔力を一点に集中させるために、媒体となる魔具を使う。ハーマンは本、シビルは木の杖、カーティスは銀の杖など。これら魔具と呼ばれる媒体に魔力を集中させて、魔法の威力を安定させる。しかしアルカネットは魔具も使わない。瞬時に魔力を魔法の形に作り上げて放ってしまう。
「き~~~! これならどうさっ!!」
ハーマンはその場に踏ん張ると、本を開いてアルカネットを睨みつける。
「天もみたことがない稲妻と
地も聴いたことのない雷鳴を
遍く全ての想像を絶したる大音響を作り出さん!
イラアルータ・トニトルス!!」
突如晴れ渡った空から6本の雷の柱が振り落ち、それはうねりながらベルトルドとアルカネットに襲いかかった。
「いつの間に習得したんですか、ハーマン?」
カーティスが感心して言うと、
「今初めて使ってみたよ!!」
眉間を寄せながら、ハーマンは力んで叫ぶ。
イラアルータ・トニトルスは雷属性の最上級魔法で、魔法使いのイメージで形状は様々に変化させられる。高質量の雷エネルギーの塊で、喰らえば消し炭になるだろう。
轟音を鳴り響かせる雷の柱はしかし、
「トイコス・トゥルバ」
アルカネットが魔法の名を呟くと、2人の前に巨大な土壁がそそり立ち、襲いかかってきた雷の柱を吸収してしまった。
「う……」
ハーマンは耳をしょんぼりさせると、悔しそうにその場で地団駄を踏んだ。
「その程度の雷撃では、トイコス・トゥルバすら吹き飛ばせません。もっとコントロールを学びなさい、ハーマン」
どこか教師の様な口調でアルカネットが言うと、ハーマンはますますジタバタと暴れた。
「どうしたお前たち、もう終わりなのか?」
両手を腰に当てて偉そうにベルトルドがツッコむ。
「そんなわけ、ねーでしょーがっ」
ギャリーが叫びながら、魔剣シラーを振り上げ飛び上がった。そしてタルコットとメルヴィンもすぐにあとに続く。
ほぼ同時に振り下ろされる3つの刃は、ベルトルドに触れることなく3歩手前で弾けてしまい、3人は後方へ吹き飛ばされた。無様に転がらずにどうにか踏ん張り着地すると、3人は同じように突っ込んでいった。だがまたしても攻撃は弾かれてしまう。
「魔剣のパワーを弾くのかよ」
イライラとギャリーが呟くと、タルコットも忌々しげに唇を噛んだ。
「サイ《超能力》によるバリアですね……」
目には見えないが、ベルトルドの周囲にはサイ《超能力》の念力で作った防御が、しっかりと張られているようだ。
「サイ《超能力》にはサイ《超能力》でぇ~」
「いきますかっ」
マリオンとルーファスは同時に念力をベルトルドの防御にぶつける。
「ほう」
意外そうにベルトルドは呟くと、口の端を僅かにつりあげた。
サイ《超能力》を持つ者には、透明な壁同士が競り合っている様子が見えているが、常人には力の拮抗戦が見えない。力が衝突している地面のみが摩擦され抉られていた。
「おっさんの精神タフすぎっしょ……」
「えーん、打ち破れなぁ~~~い」
サイ《超能力》は精神力をエネルギーとして使う。マリオンもルーファスもサイ《超能力》所持者の中では最高ランクに属する。その2人がぶつける念力を、ベルトルドは涼しい顔で一人で押しとどめていた。
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