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番外編・2
コッコラ王国の悲劇・32
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上級指揮官用の仮設テント内には、第一から第十までの正規部隊を預かる大将が10人と、ブルーベル将軍、副官のハギが簡素なテーブルを囲んで立ち並んでいる。そして、いきなり昨日の夕方姿を現したベルトルドとアルカネットが、眠そうな顔で木箱の上に座っていた。
「このまま残りの部隊を前に出せば、傭兵たちも疲弊して掃除出来そうですが、魔法使いたちの範囲魔法に遠慮がないから、敵味方関係なく巻き込んで大惨事状態です。傭兵たちは自由ですねえ」
のんきなブルーベル将軍の発言に、大将たちは反応に困って視線を明後日の方角へ彷徨わせた。
「将軍!」
後ろからハギに窘められて、ブルーベル将軍は首をすくめる。
「仕方がありません。こちらとしても、切り札を投入するしかないでしょう」
そう言って、ブルーベル将軍はベルトルドとアルカネットを見た。
大あくびを噛み殺しながら、ベルトルドは立ち上がった。アルカネットも優雅な仕草で立ち上がる。
「眠たいところ申し訳ありませんが、お願いしますよ副宰相どの。そして元尋問・拷問部隊長官どの」
「任せとけい!」
両手を腰に当ててふんぞり返るベルトルドと、優雅に会釈するアルカネット。ハワドウレ皇国の秘密兵器が、いよいよ戦場に投入されようとしていた。
混戦する戦場のど真ん中に、突然巨大な竜巻が起こり、皇国軍も傭兵たちも関係なくグルグル巻き込んで天高くたちのぼった。その様子にギョッとして、周囲から徐々に手を引いて、両軍引き下がっていった。
やがて竜巻が消え去り、竜巻が起きていた場所が開けると、そこに白と黒の影がひらりと舞い降りた。
襟のたった白いケープマントに白い軍服、襟元の青いスカーフが際立ったアクセントになっている。
もうひとりは漆黒のスーツ姿で、立ち姿も優雅でそつがない。
ハワドウレ皇国副宰相ベルトルドと、特殊部隊の尋問・拷問部隊元長官アルカネットだ。
ベルトルドはキザったらしくスッと右手を上げると、それを合図に皇国軍がすぐさま陣に下がっていく。
撤退していく皇国軍を訝しみながら見ている傭兵たちの中で、一際驚いているのはライオン傭兵団である。
「うわあ………ついに出てきちゃったあ~~」
マリオンは近くにいた見知らぬ傭兵の肩を掴んで、飛び上がって見ていた。
「やっぱオレたちのことバレてるな、ありゃ」
ギャリーが顎の無精ひげをさすりながら、口をへの字に曲げた。
「なんで出てきたのかは想像できますけども。しかし見てください、あの目立ちようといったら」
カーティスが指摘するように、確かにベルトルドとアルカネットの目立ち方は完璧だった。
アルカネットによる最上級攻撃魔法、イアサール・ブロンテで大竜巻を起こして周囲の注目を集め、人間という名のゴミを掃除してステージを作り、ベルトルドが軍をひかせて目立つようにしたのだろう。見たまんまである。
傭兵たちは何事かと渦中の2人を遠目に見つめていたが、やがてその動作にカチンときていきり立った。
尊大さがにじみ出るような立ち方をしているベルトルドだが、やがて組んでいた腕を解くと、右手を前に伸ばし、そして掌を返すと、ちょいちょいっと手招きするように傭兵たちに向けたのだ。
見下すような顔の角度に、不敵な笑みが貼り付いている。
明らかに挑発していた。
「かかってこい、このバカタレ共」
「このまま残りの部隊を前に出せば、傭兵たちも疲弊して掃除出来そうですが、魔法使いたちの範囲魔法に遠慮がないから、敵味方関係なく巻き込んで大惨事状態です。傭兵たちは自由ですねえ」
のんきなブルーベル将軍の発言に、大将たちは反応に困って視線を明後日の方角へ彷徨わせた。
「将軍!」
後ろからハギに窘められて、ブルーベル将軍は首をすくめる。
「仕方がありません。こちらとしても、切り札を投入するしかないでしょう」
そう言って、ブルーベル将軍はベルトルドとアルカネットを見た。
大あくびを噛み殺しながら、ベルトルドは立ち上がった。アルカネットも優雅な仕草で立ち上がる。
「眠たいところ申し訳ありませんが、お願いしますよ副宰相どの。そして元尋問・拷問部隊長官どの」
「任せとけい!」
両手を腰に当ててふんぞり返るベルトルドと、優雅に会釈するアルカネット。ハワドウレ皇国の秘密兵器が、いよいよ戦場に投入されようとしていた。
混戦する戦場のど真ん中に、突然巨大な竜巻が起こり、皇国軍も傭兵たちも関係なくグルグル巻き込んで天高くたちのぼった。その様子にギョッとして、周囲から徐々に手を引いて、両軍引き下がっていった。
やがて竜巻が消え去り、竜巻が起きていた場所が開けると、そこに白と黒の影がひらりと舞い降りた。
襟のたった白いケープマントに白い軍服、襟元の青いスカーフが際立ったアクセントになっている。
もうひとりは漆黒のスーツ姿で、立ち姿も優雅でそつがない。
ハワドウレ皇国副宰相ベルトルドと、特殊部隊の尋問・拷問部隊元長官アルカネットだ。
ベルトルドはキザったらしくスッと右手を上げると、それを合図に皇国軍がすぐさま陣に下がっていく。
撤退していく皇国軍を訝しみながら見ている傭兵たちの中で、一際驚いているのはライオン傭兵団である。
「うわあ………ついに出てきちゃったあ~~」
マリオンは近くにいた見知らぬ傭兵の肩を掴んで、飛び上がって見ていた。
「やっぱオレたちのことバレてるな、ありゃ」
ギャリーが顎の無精ひげをさすりながら、口をへの字に曲げた。
「なんで出てきたのかは想像できますけども。しかし見てください、あの目立ちようといったら」
カーティスが指摘するように、確かにベルトルドとアルカネットの目立ち方は完璧だった。
アルカネットによる最上級攻撃魔法、イアサール・ブロンテで大竜巻を起こして周囲の注目を集め、人間という名のゴミを掃除してステージを作り、ベルトルドが軍をひかせて目立つようにしたのだろう。見たまんまである。
傭兵たちは何事かと渦中の2人を遠目に見つめていたが、やがてその動作にカチンときていきり立った。
尊大さがにじみ出るような立ち方をしているベルトルドだが、やがて組んでいた腕を解くと、右手を前に伸ばし、そして掌を返すと、ちょいちょいっと手招きするように傭兵たちに向けたのだ。
見下すような顔の角度に、不敵な笑みが貼り付いている。
明らかに挑発していた。
「かかってこい、このバカタレ共」
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