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番外編・2
コッコラ王国の悲劇・27
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「………話が激しく脱線してしもーたわ、宰相」
皇王が片手をヒラヒラさせると、一応は何とか立ち直った宰相マルックが、神妙に頷いて腰を上げた。
「はっ……。先ほどコッコラ王国との国境に派兵しているブルーベル将軍から、正規部隊全軍の出撃要請が届いたのだ。敵側の戦力が異常なほどで、我が軍を恐ろしい勢いで追い込んでいるそうな。従って可及的速やかに応じるべく、全軍総帥たる皇王様の勅命により、すでに出発させている」
「ほう……」
ベルトルドは眉間を皺寄せると、腕を組んで頷いた。兵士たちを即急に現場へ送るために、おそらく皇都のエグザイル・システムはフル稼働状態だろう。
大変なことだな~、などと他人事のように思っていると、
「そして、そなたも至急戦場に向かうのだ」
「え?」
目をぱちくりさせると、宰相を見て、そして皇王を見た。
皇王は「はいはい」と言いたげな表情で何度も頷く。宰相マルックは含みのある目をベルトルドに投げかけた。
「何でも、そなたに縁(ゆかり)ある者たちが戦場で暴れているとの報告もあがっている。それにより、我が軍の被害が甚大だ、とも聞いている」
ベルトルドとリュリュは、揃って視線をあさっての方向へ向けた。そして共に胸中で「やっべぇ……」と呟いた。
「今すぐ行ってくるがよい、ベルトルドや」
皇王からこれ以上にないほど優しく言われて、ベルトルドは心底引きつった笑みを浮かべて頷いた。
退室したベルトルドは、文字通り「ぶすーーーっ」とした表情で廊下を乱暴に歩いていた。その後ろを歩きながら、リュリュがため息をつく。
「あれ、ぜ~んぶバレてるわね、皇王サマに」
「ケッ、相変わらず食えないジジイだ全く。昼行灯の能無しクソボケジジイだと思っていたが」
声を大にして、ベルトルドは子供のような愚痴を垂れ流した。
「今すぐ行けって言われてるし、事務雑用はアタシが代わってやっとくわ」
「任せた」
「着替えも持って行かないとだし、一度家によってくんでしょ?」
「着替えなんかいらん! パッと片付けて、サクッと帰ってくる!!」
「あっそ。なら、アルカネットにはアタシから連絡しとくわね」
「アルカネットも持っていく」
「ええ?」
「もうエグザイル・システムに向かわせた」
断固としてキッパリとベルトルドは言い切った。
「――まあ、せいぜいストレス発散してらっしゃい」
「おうよ!!」
皇王が片手をヒラヒラさせると、一応は何とか立ち直った宰相マルックが、神妙に頷いて腰を上げた。
「はっ……。先ほどコッコラ王国との国境に派兵しているブルーベル将軍から、正規部隊全軍の出撃要請が届いたのだ。敵側の戦力が異常なほどで、我が軍を恐ろしい勢いで追い込んでいるそうな。従って可及的速やかに応じるべく、全軍総帥たる皇王様の勅命により、すでに出発させている」
「ほう……」
ベルトルドは眉間を皺寄せると、腕を組んで頷いた。兵士たちを即急に現場へ送るために、おそらく皇都のエグザイル・システムはフル稼働状態だろう。
大変なことだな~、などと他人事のように思っていると、
「そして、そなたも至急戦場に向かうのだ」
「え?」
目をぱちくりさせると、宰相を見て、そして皇王を見た。
皇王は「はいはい」と言いたげな表情で何度も頷く。宰相マルックは含みのある目をベルトルドに投げかけた。
「何でも、そなたに縁(ゆかり)ある者たちが戦場で暴れているとの報告もあがっている。それにより、我が軍の被害が甚大だ、とも聞いている」
ベルトルドとリュリュは、揃って視線をあさっての方向へ向けた。そして共に胸中で「やっべぇ……」と呟いた。
「今すぐ行ってくるがよい、ベルトルドや」
皇王からこれ以上にないほど優しく言われて、ベルトルドは心底引きつった笑みを浮かべて頷いた。
退室したベルトルドは、文字通り「ぶすーーーっ」とした表情で廊下を乱暴に歩いていた。その後ろを歩きながら、リュリュがため息をつく。
「あれ、ぜ~んぶバレてるわね、皇王サマに」
「ケッ、相変わらず食えないジジイだ全く。昼行灯の能無しクソボケジジイだと思っていたが」
声を大にして、ベルトルドは子供のような愚痴を垂れ流した。
「今すぐ行けって言われてるし、事務雑用はアタシが代わってやっとくわ」
「任せた」
「着替えも持って行かないとだし、一度家によってくんでしょ?」
「着替えなんかいらん! パッと片付けて、サクッと帰ってくる!!」
「あっそ。なら、アルカネットにはアタシから連絡しとくわね」
「アルカネットも持っていく」
「ええ?」
「もうエグザイル・システムに向かわせた」
断固としてキッパリとベルトルドは言い切った。
「――まあ、せいぜいストレス発散してらっしゃい」
「おうよ!!」
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