570 / 882
番外編・2
コッコラ王国の悲劇・25
しおりを挟む
更に皇国軍を預かるブルーベル将軍は、ガエルとは伯父と甥という血縁関係にあり、普通なら敵対しようとはしないものだったが。
ライオン傭兵団にそんな躊躇いも迷いも感傷もない。すでに辞めている場所なのだから。
迷いのない彼らの動きは、皇国に勤めていた頃よりも、遥かに勢いがあり、力があった。
規律に束縛されない自由、それは彼らの持っている本来の実力を、最大限に発揮させる。
「手合わせしたかった連中が、ゴロゴロいるんだよ。片っ端から遠慮しねーぜ!」
魔剣シラーを背負いながら、ギャリーは皇国軍に聞こえるよう、わざと大声で言い放った。
もとから厳つい風貌に、挑発じみたふてぶてしい笑みが混ざって、ギャリーの顔を見た皇国兵士たちは尻込みして後じさった。
ライオン傭兵団は第六正規部隊と、第五正規部隊が入り混じる只中に乗り込んでいる。
彼らが所属していた部隊ではなかったが、軍を辞めてまだ2年しか経っていない。顔も名前も覚えている者たちも多かった。
「オイコラ! ギャリーばっか目立ってんじゃねーぞ!!」
自分に向けられる注目がいまいち薄いと感じていたヴァルトが、喚きながらギャリーに詰め寄った。
「おめーも十分目立ってるから安心しろや……」
ヴァルトの場合はその綺麗な容姿もさることながら、大声のバカ丸出し発言に加え、とにかく派手な白く大きな翼を広げて飛び回っているから、目立たないほうがおかしい。
「アンタたちぃ~、漫才で目立ってもしゃーないから、早くヤッちゃえ~~」
マリオンが腰を振りながらのほほんと指摘すると、ギャリーとヴァルトが噛み付きそうな顔をマリオンに向け、マリオンはぺろっと舌を出して肩をすくめた。
それを合図にするようにして、タルコットとメルヴィンが構える。
「いくよ」
タルコットは大鎌の刃先を皇国軍に向けると、地面を蹴って前に飛び出した。
「口より行動で目立ってください」
苦笑しながらメルヴィンが続く。
タルコットは10人ほど固まっている兵士たちの中に突っ込むと、走り込みながら大鎌スルーズを大きく振りかぶって、力いっぱい薙ぎ払った。鎌の刃は唖然とする皇国兵士たちの首をザックリ刈り取る。悲鳴を上げることもできなかった首は、宙を跳ねボトボトと重たい音を響かせながら地面に落ちて転がった。
その表情は恐怖の瞬間を貼り付けたままだ。首を失った胴はその場に立ち尽くし、鮮血の噴水を大量に吹き上げ、辺りを血の色に染め上げた。
崩れ落ちていく首なしの死体を涼しい顔で見下ろし、刃についた血を払うと、タルコットは次の獲物を探すべく視線を巡らせた。漆黒の髪と鎧の中に、妖艶な白い顔がうっすらと笑みを浮かべる。
そのすぐ近くで、メルヴィンは爪竜刀を刃の太い長剣に形態を変化させると、惚けている3人の皇国兵士に斬りかかった。爪竜刀はメルヴィンの意思に呼応して、その形状を自在に変化させることができる。武器を持ち替えなくても、戦場の状況に応じて形を変えられるのだ。
「あんにゃろー、俺様より目立つとかゆるさん!!」
ヴァルトは翼をバサバサと羽ばたかせると、
「とーーーうっ!」
片手を空へ向けて伸ばし、華麗に飛び上がった。
「そのまま撃ち落とされちまえ……」
げっそりとした表情で悪態をつき、飛び上がるヴァルトを見送ると、ギャリーは首をポキポキ鳴らして魔剣シラーを構えた。
ライオン傭兵団にそんな躊躇いも迷いも感傷もない。すでに辞めている場所なのだから。
迷いのない彼らの動きは、皇国に勤めていた頃よりも、遥かに勢いがあり、力があった。
規律に束縛されない自由、それは彼らの持っている本来の実力を、最大限に発揮させる。
「手合わせしたかった連中が、ゴロゴロいるんだよ。片っ端から遠慮しねーぜ!」
魔剣シラーを背負いながら、ギャリーは皇国軍に聞こえるよう、わざと大声で言い放った。
もとから厳つい風貌に、挑発じみたふてぶてしい笑みが混ざって、ギャリーの顔を見た皇国兵士たちは尻込みして後じさった。
ライオン傭兵団は第六正規部隊と、第五正規部隊が入り混じる只中に乗り込んでいる。
彼らが所属していた部隊ではなかったが、軍を辞めてまだ2年しか経っていない。顔も名前も覚えている者たちも多かった。
「オイコラ! ギャリーばっか目立ってんじゃねーぞ!!」
自分に向けられる注目がいまいち薄いと感じていたヴァルトが、喚きながらギャリーに詰め寄った。
「おめーも十分目立ってるから安心しろや……」
ヴァルトの場合はその綺麗な容姿もさることながら、大声のバカ丸出し発言に加え、とにかく派手な白く大きな翼を広げて飛び回っているから、目立たないほうがおかしい。
「アンタたちぃ~、漫才で目立ってもしゃーないから、早くヤッちゃえ~~」
マリオンが腰を振りながらのほほんと指摘すると、ギャリーとヴァルトが噛み付きそうな顔をマリオンに向け、マリオンはぺろっと舌を出して肩をすくめた。
それを合図にするようにして、タルコットとメルヴィンが構える。
「いくよ」
タルコットは大鎌の刃先を皇国軍に向けると、地面を蹴って前に飛び出した。
「口より行動で目立ってください」
苦笑しながらメルヴィンが続く。
タルコットは10人ほど固まっている兵士たちの中に突っ込むと、走り込みながら大鎌スルーズを大きく振りかぶって、力いっぱい薙ぎ払った。鎌の刃は唖然とする皇国兵士たちの首をザックリ刈り取る。悲鳴を上げることもできなかった首は、宙を跳ねボトボトと重たい音を響かせながら地面に落ちて転がった。
その表情は恐怖の瞬間を貼り付けたままだ。首を失った胴はその場に立ち尽くし、鮮血の噴水を大量に吹き上げ、辺りを血の色に染め上げた。
崩れ落ちていく首なしの死体を涼しい顔で見下ろし、刃についた血を払うと、タルコットは次の獲物を探すべく視線を巡らせた。漆黒の髪と鎧の中に、妖艶な白い顔がうっすらと笑みを浮かべる。
そのすぐ近くで、メルヴィンは爪竜刀を刃の太い長剣に形態を変化させると、惚けている3人の皇国兵士に斬りかかった。爪竜刀はメルヴィンの意思に呼応して、その形状を自在に変化させることができる。武器を持ち替えなくても、戦場の状況に応じて形を変えられるのだ。
「あんにゃろー、俺様より目立つとかゆるさん!!」
ヴァルトは翼をバサバサと羽ばたかせると、
「とーーーうっ!」
片手を空へ向けて伸ばし、華麗に飛び上がった。
「そのまま撃ち落とされちまえ……」
げっそりとした表情で悪態をつき、飛び上がるヴァルトを見送ると、ギャリーは首をポキポキ鳴らして魔剣シラーを構えた。
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヒロインは始まる前に退場していました
サクラ
ファンタジー
とある乙女ゲームの世界で目覚めたのは、原作を知らない一人の少女
産まれた時点で本来あるべき道筋を外れてしまっていた彼女は、知らない世界でどう生き抜くのか。
母の愛情、突然の別れ、事故からの死亡扱いで目覚めた場所はゴミ捨て場
捨てる神あれば拾う神あり?
人の温かさに触れて成長する少女に再び訪れる試練。
そして、本来のヒロインが現れない世界ではどんな未来が訪れるのか。
主人公が7歳になる頃までは平和、ホノボノが続きます。
ダークファンタジーになる予定でしたが、主人公ヴィオの天真爛漫キャラに ダーク要素は少なめとなっております。
同作品を『小説を読もう』『カクヨム』でも配信中。カクヨム先行となっております
追いつくまで しばらくの間 0時、12時の一日2話更新としております
公爵家に生まれて初日に跡継ぎ失格の烙印を押されましたが今日も元気に生きてます!
小択出新都
ファンタジー
異世界に転生して公爵家の娘に生まれてきたエトワだが、魔力をほとんどもたずに生まれてきたため、生後0ヶ月で跡継ぎ失格の烙印を押されてしまう。
跡継ぎ失格といっても、すぐに家を追い出されたりはしないし、学校にも通わせてもらえるし、15歳までに家を出ればいいから、まあ恵まれてるよね、とのんきに暮らしていたエトワ。
だけど跡継ぎ問題を解決するために、分家から同い年の少年少女たちからその候補が選ばれることになり。
彼らには試練として、エトワ(ともたされた家宝、むしろこっちがメイン)が15歳になるまでの護衛役が命ぜられることになった。
仮の主人というか、実質、案山子みたいなものとして、彼らに護衛されることになったエトワだが、一癖ある男の子たちから、素直な女の子までいろんな子がいて、困惑しつつも彼らの成長を見守ることにするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる