片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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番外編・2

コッコラ王国の悲劇・23

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 ハーメンリンナにある広大なベルトルド邸は、各部屋に備え付けのバスルームとトイレがあるが、母屋には大浴場がひとつある。大理石張りで天井も高く、観葉植物なども多く置いていて、実に広々と気持ちのいい浴場だ。

 そこに泡だらけの広すぎる浴槽に浸かり、柄の長いブラシで背中をのろのろこすりながら、ベルトルドは拗ねた表情で唇を尖らせていた。

「何故私がこんなところで、あなたの裸体を後ろから眺める羽目になっているんですか?」

「背中洗ってくれてもいいだろう」

「一人でも洗えるように、専用ブラシを買ってきて差し上げたでしょう。年増男の背中を洗って、なにが楽しいんです」

 ぴっちりと執事のスーツ姿で、アルカネットは憮然とベルトルドを見下ろしていた。

 リュリュからお仕置きされたベルトルドは、暫く一人でいるのを怖がり、風呂や着替えの時は、必ずアルカネットをそばに置いて警戒している。

 よほどトラウマになったのだろう。それが判っているので無下にもできず、アルカネットは文句と嫌味を垂れ流しつつも、仕方なくそばに付き添っていた。

 外で何やら使用人たちと大きく喚きたてる声が聞こえ、ベルトルドとアルカネットが揃ってドアのほうへ首を向けると、

「くおらああああああベル!!!! あーたなにしてくれてんのよっ!!!!!」

 突然ドアを蹴破って、リュリュが怒号をあげて浴場に乗り込んできた。

「きゃあああああっ!!!」

 びっくりしたベルトルドはブラシを放り出して立ち上がると、胸を両手で隠しながら乙女な悲鳴をあげ続けた。

「隠すんだったら股間のほうでしょう? 男が胸を隠してどうするんです」

 冷静にツッコむアルカネットに、ベルトルドはふるふるとベソ顔を向けた。

「今度は絶対乳首吸われるっ!!」

「あーたの使い込んだ乳首に興味はないわよ!! そんなモン吸うくらいなら、肛門の処女をぶち抜いてあげましょうかええ!!?」

「断固断る!!!」

 ベルトルドは尻を両手で隠しながら、バシャバシャと浴槽の中を逃げ回った。

「あなたのお仕置きを怖がって、毎日幼稚化して困っているんですよ。もうそのくらいにしてあげなさい」

 溜息混じりにアルカネットに言われると、リュリュは化粧をはいた顔でキッと睨みつけた。

「お仕置き程度じゃすまされないのよ! 全く、ライオン傭兵団の連中がコッコラ王国側で盛大に大暴れして、ウチの軍を壊滅状態に追い込んでくれてるってラーシュ=オロフ長官から報告が届いてンのよっ!!」

 ベソ顔のベルトルドと目を瞬かせるアルカネットは、

「ほえ?」

 そう首をかしげた。
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