片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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番外編・2

コッコラ王国の悲劇・22

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 数の上では圧倒的にハワドウレ皇国軍が上回っているが、戦闘全般においては明らかに傭兵たちが優っている。

 ハワドウレ皇国軍は数こそ上まわるが、内実は寄せ集めの徴兵たちが半割りを占めていた。しかし傭兵たちに素人は混ざっていない。皆が戦闘のプロなのだ。

 戦況は短時間に皇国軍が不利な状況に追い込まれてしまっていた。ダエヴァ第二部隊要員だけでは戦況を覆すほどの影響力はなく、傭兵たちは戦場の空気に活性化され、ますます勢いを増して暴れまわっていた。

 今年33歳の誕生日を迎えたラーシュ=オロフ長官は、大きな白クマの横で眉間を戦慄かせていた。やや大きな目だが、白目の面積が広く、胡麻のような茶色い瞳がぽつんとあって、それが表情に精彩を欠いている。更に血色の悪い肌には冷や汗が滲み出し、青ざめた唇が痛々しかった。

 一方白クマのほうはつぶらな瞳を瞬かせ、さも面白そうに戦場を眺めている。

「随分と活きのいい連中ですねえ。ですがどう見てもアレは、元ウチの軍の人間だった気がしますが」

 甥の姿も見えた気が、とブルーベル将軍は笑った。

 ブルーベル将軍は白クマのトゥーリ族で、身長はゆうに2メートルを超え、筋肉質の体躯は圧倒的な迫力を誇っている。しかしどことなく愛嬌のあるつぶらな黒い瞳が、恐ろしげな雰囲気を緩和していた。

「み………見なかったことに………」

 そうラーシュ=オロフ長官は搾り出すように小声で言うと、目眩を起こして副官の腕に倒れ込んでしまった。

 黄金の刃を持つ魔剣シラーが、剣圧と金色の軌跡と共にハワドウレ皇国軍の軍人たちの首を、数人単位で斬り飛ばしている。

 漆黒の刃の大鎌スルーズが弧を描くように舞うと、血飛沫を踊らせながら重そうな首が軽やかに宙を跳ねていった。

 臨機応変に場面ごとに形状を変化させる爪竜刀が、的確に軍人たちの首や手を切り落とし戦意を挫いていく。

 圧倒的なパワーで拳を叩きつけると、頭は爆ぜ、地面までもが深々と抉られる。砂埃と砕けた土の粒が風に乗って辺りを曇らせた。

 ハワドウレ皇国軍正規部隊の第六部隊と、特殊部隊ダエヴァの第二部隊が、手も足も出せず状態で、バタバタと倒されていっていた。

 正規部隊を預かるブルーベル将軍と、ダエヴァの第二部隊ラーシュ=オロフ長官は、第六部隊と共に前に出ていた。目の前で大暴れしている傭兵たちが、自分たちのよく知る連中であることに、信じられない思いを味わっていた。

 ライオン傭兵団である。
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