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番外編・2
コッコラ王国の悲劇・20
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コッコラ王国との国境キュラ平原に到着したハワドウレ皇国軍は、それぞれ第一、第五、第六正規部隊で布陣した。ダエヴァ第二部隊は、各正規部隊に散って混ざっている。その為ダエヴァ第二部隊を預かるラーシュ=オロフ長官長官は、ブルーベル将軍とともにいた。
「えーと、コッコラ王国は総勢4万人ほどだということですが、そのうち3万が傭兵たちなんですか。これまた豪勢に雇ったものですねえ」
副官のハギから受け取った書面を見ながら、ブルーベル将軍はふむふむと頷いた。
「石油でどれほど儲かっていたんでしょう。これだけ盛大に雇ったなら、財政難に陥りそうだ」
「そんな心配はいりませんよ、将軍」
ハギからため息混じりに窘められて、ブルーベル将軍はにこにこと首をすくめた。
「年寄りはそんなとこにも、つい気になってしまうものなんです」
どこかのんびりとしているブルーベル将軍に、ハギは「毎度のことだけど…」と、内心ため息をついていた。
「閣下、我々から撃って出ますか?」
ラーシュ=オロフ長官は生真面目に、ブルーベル将軍を見上げ姿勢を正した。
「相手の出方を待ちましょう。王太子の号令で本陣が動くでしょう、それに呼応して傭兵たちの右翼陣と左翼陣も動きそうなので、それを駆逐していく形で最初はいいと思っています」
ブルーベル将軍は小さく首を傾げる。
「あの編成内容だと、王太子率いるコッコラ王国本軍はそれ単体、右翼陣と左翼陣の傭兵たちはそれぞれ独自で動くことを想定してのものでしょうねえ。この戦争の意味がいまだに判らないですし、明らかな準備不足と勢いだけで、あちらは戦争をしようとしています。消耗戦の臭いがぷんぷんしてますよ。だから我々から撃って出ることだけは避けたいのです」
「なるほど」
「演習ではなく本番です。あなた方ダエヴァと違って、正規部隊は実戦経験に乏しい。対する敵兵力の大多数は実戦経験豊富な傭兵たち。正直、心配です。せっかくだから全軍出撃させればよかったかな、と今更後悔ですが」
「は、はあ……」
それほど悲観しなくても大丈夫では、とラーシュ=オロフ長官は思ったが、ブルーベル将軍が言うように実戦経験の差は大きい。そして2人の杞憂は現実のものとなるのである。
コッコラ王国本軍は、指揮官の王太子を先頭に、重装歩兵たちが身の丈よりも大きな盾を後ろから押し出しながら、鉄の壁を敷いている。その鉄の盾の隙間からは鋭い穂先の長槍が並び、針の突き出た鉄の壁のようだ。その後ろに同じように鉄の壁が16列並んでファランクスを形成していた。
更に後ろには魔法使い、サイ《超能力》使い、銃兵たちがそれぞれ陣を固め、その後方に《栄光の太陽》傭兵団に指揮される傭兵たち1万人が控える。
鉄の盾には、それぞれ魔法使いやサイ《超能力》使いたちにより更に防御強化が張られ、相当の防御力となっている。
王太子はそのファランクスの前に馬にまたがって佇み、合図を送る時を見計らっていた。王太子の合図で、各傭兵たちも一斉に動く手はずとなっており、本軍とは別行動を取ることも許されていた。
本軍は本軍で、王太子が狙うは副宰相ベルトルドの首。今はこの場にいない。まずはあの男を、戦場に引きずり出すのだ。
「えーと、コッコラ王国は総勢4万人ほどだということですが、そのうち3万が傭兵たちなんですか。これまた豪勢に雇ったものですねえ」
副官のハギから受け取った書面を見ながら、ブルーベル将軍はふむふむと頷いた。
「石油でどれほど儲かっていたんでしょう。これだけ盛大に雇ったなら、財政難に陥りそうだ」
「そんな心配はいりませんよ、将軍」
ハギからため息混じりに窘められて、ブルーベル将軍はにこにこと首をすくめた。
「年寄りはそんなとこにも、つい気になってしまうものなんです」
どこかのんびりとしているブルーベル将軍に、ハギは「毎度のことだけど…」と、内心ため息をついていた。
「閣下、我々から撃って出ますか?」
ラーシュ=オロフ長官は生真面目に、ブルーベル将軍を見上げ姿勢を正した。
「相手の出方を待ちましょう。王太子の号令で本陣が動くでしょう、それに呼応して傭兵たちの右翼陣と左翼陣も動きそうなので、それを駆逐していく形で最初はいいと思っています」
ブルーベル将軍は小さく首を傾げる。
「あの編成内容だと、王太子率いるコッコラ王国本軍はそれ単体、右翼陣と左翼陣の傭兵たちはそれぞれ独自で動くことを想定してのものでしょうねえ。この戦争の意味がいまだに判らないですし、明らかな準備不足と勢いだけで、あちらは戦争をしようとしています。消耗戦の臭いがぷんぷんしてますよ。だから我々から撃って出ることだけは避けたいのです」
「なるほど」
「演習ではなく本番です。あなた方ダエヴァと違って、正規部隊は実戦経験に乏しい。対する敵兵力の大多数は実戦経験豊富な傭兵たち。正直、心配です。せっかくだから全軍出撃させればよかったかな、と今更後悔ですが」
「は、はあ……」
それほど悲観しなくても大丈夫では、とラーシュ=オロフ長官は思ったが、ブルーベル将軍が言うように実戦経験の差は大きい。そして2人の杞憂は現実のものとなるのである。
コッコラ王国本軍は、指揮官の王太子を先頭に、重装歩兵たちが身の丈よりも大きな盾を後ろから押し出しながら、鉄の壁を敷いている。その鉄の盾の隙間からは鋭い穂先の長槍が並び、針の突き出た鉄の壁のようだ。その後ろに同じように鉄の壁が16列並んでファランクスを形成していた。
更に後ろには魔法使い、サイ《超能力》使い、銃兵たちがそれぞれ陣を固め、その後方に《栄光の太陽》傭兵団に指揮される傭兵たち1万人が控える。
鉄の盾には、それぞれ魔法使いやサイ《超能力》使いたちにより更に防御強化が張られ、相当の防御力となっている。
王太子はそのファランクスの前に馬にまたがって佇み、合図を送る時を見計らっていた。王太子の合図で、各傭兵たちも一斉に動く手はずとなっており、本軍とは別行動を取ることも許されていた。
本軍は本軍で、王太子が狙うは副宰相ベルトルドの首。今はこの場にいない。まずはあの男を、戦場に引きずり出すのだ。
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