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番外編・2
コッコラ王国の悲劇・17
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「正規部隊はいくつ連れて行くのかしら?」
「第一、第五、第六の3部隊で向かいます。人数的には五分以上になるでしょう」
「そうねん。いくらコッコラ王国が金貨を大量にちらつかせても、ウチほど人員は集められないでしょうから」
「一人当千(いちにんとうせん)のツワモノ達でも、彼らもまた統率の取れていない烏合の衆です。補給や人員交代などを考えると、あまり長期化はせんでしょう」
「素人戦なら3日もあれば片付くわね。――それにしても、エネルギーを盾にして喧嘩売ってくるとか、いきなりどうしちゃったのかしらね、あの国」
「こんな雑な宣戦布告も初めてですよ。一体何がしたいのでしょう。戦争に至るまでの経緯がさっぱり判らんのです」
「アタシもなのよね。とくに皇国に不満があったわけでもなさそうだし、税として石油を持ってかれるだけだしで。それに、これといってウチからは内政干渉はしてないもの。原因が判らないうえに、一口に戦争をすると言っても、杜撰だし準備不足だし。負け戦と判ってるけど、退くわけにもいかない、ってかんじでイヤんなっちゃう」
リュリュとブルーベル将軍が神妙に考え込む中、ベルトルドの魂はまだ別の世界を漂っているようだった。
定刻通りに帰宅したベルトルドは、いつもなら「俺が帰ったぞ!」と、元気よく玄関のドアを両開きにして入ってくる。しかし今日に限って、雨雲を頭上に漂わせて、片方のドアだけ開けて静かに入ってきた。
「おかえりなさいませ。今日はえらく元気がありませんね、拾い食いでもなさいましたか?」
嫌味とともに出迎えた執事のアルカネットが、端正な顔を不思議そうに傾けてベルトルドの前に立つ。
穏やかな風貌のアルカネットの顔を見て、ベルトルドは途端にくしゃりと顔を歪ませると、一目散にアルカネットに飛びついた。
ガシッと抱き合う2人――実際にはベルトルドがアルカネットに抱きついている――を遠巻きに見ていたメイドたちが、その光景にギョッと目を見開く。
「………」
ベルトルドもアルカネットも、身長はゆうに180センチを越える。そしてすでに中年と呼ばれる領域の年齢であり、どちらも健康な男子。それが、いきなり問答無用で抱きついてきて嬉しいはずもなく、また、アルカネットにもベルトルドにもそんな性癖はない。
「今から30秒以内に簡潔にこの行動の意味を説明しなさい。さもないとイラアルータ・トニトルスの雷撃で、屋敷もろとも木っ端微塵に吹き飛ばしますよ」
据わった眼差しと底冷えする声で言い放つと、アルカネットは片手に電撃の魔力を込め始めた。
ベルトルドは両手でアルカネットの肩を掴んだまま身体を離し、ベソかいた顔でぐすりと鼻をすすった。まるで子供のベソ顔だ。
「リューに犯された」
あまりにも唐突な一言に、5ステップほど間を空けて、
「………はぃ?」
アルカネットは怪訝そうに眉間を寄せる。
「抵抗を全て押さえ付けられ、アイツに思いっきりしゃぶられた! 不覚にも2発抜かされた!! なんで、なんで、あんなに舌の使い方が上手いんだうっうっ……」
一瞬何のことかとアルカネットは訝しんだが、リュリュの名前が出てきて察しはついた。
「男……いえ、オカマに握られた時点で、普通は萎えるものんじゃないんでしょうか」
「お前もそう思うだろ!? 俺もそう思っていたんだ!! けどな、けどな」
あとはもう、メソメソと泣き出して会話にならない。
両手で顔を覆って泣いてるベルトルドを疲れたように見やって、アルカネットは長々と息を吐き出した。
「第一、第五、第六の3部隊で向かいます。人数的には五分以上になるでしょう」
「そうねん。いくらコッコラ王国が金貨を大量にちらつかせても、ウチほど人員は集められないでしょうから」
「一人当千(いちにんとうせん)のツワモノ達でも、彼らもまた統率の取れていない烏合の衆です。補給や人員交代などを考えると、あまり長期化はせんでしょう」
「素人戦なら3日もあれば片付くわね。――それにしても、エネルギーを盾にして喧嘩売ってくるとか、いきなりどうしちゃったのかしらね、あの国」
「こんな雑な宣戦布告も初めてですよ。一体何がしたいのでしょう。戦争に至るまでの経緯がさっぱり判らんのです」
「アタシもなのよね。とくに皇国に不満があったわけでもなさそうだし、税として石油を持ってかれるだけだしで。それに、これといってウチからは内政干渉はしてないもの。原因が判らないうえに、一口に戦争をすると言っても、杜撰だし準備不足だし。負け戦と判ってるけど、退くわけにもいかない、ってかんじでイヤんなっちゃう」
リュリュとブルーベル将軍が神妙に考え込む中、ベルトルドの魂はまだ別の世界を漂っているようだった。
定刻通りに帰宅したベルトルドは、いつもなら「俺が帰ったぞ!」と、元気よく玄関のドアを両開きにして入ってくる。しかし今日に限って、雨雲を頭上に漂わせて、片方のドアだけ開けて静かに入ってきた。
「おかえりなさいませ。今日はえらく元気がありませんね、拾い食いでもなさいましたか?」
嫌味とともに出迎えた執事のアルカネットが、端正な顔を不思議そうに傾けてベルトルドの前に立つ。
穏やかな風貌のアルカネットの顔を見て、ベルトルドは途端にくしゃりと顔を歪ませると、一目散にアルカネットに飛びついた。
ガシッと抱き合う2人――実際にはベルトルドがアルカネットに抱きついている――を遠巻きに見ていたメイドたちが、その光景にギョッと目を見開く。
「………」
ベルトルドもアルカネットも、身長はゆうに180センチを越える。そしてすでに中年と呼ばれる領域の年齢であり、どちらも健康な男子。それが、いきなり問答無用で抱きついてきて嬉しいはずもなく、また、アルカネットにもベルトルドにもそんな性癖はない。
「今から30秒以内に簡潔にこの行動の意味を説明しなさい。さもないとイラアルータ・トニトルスの雷撃で、屋敷もろとも木っ端微塵に吹き飛ばしますよ」
据わった眼差しと底冷えする声で言い放つと、アルカネットは片手に電撃の魔力を込め始めた。
ベルトルドは両手でアルカネットの肩を掴んだまま身体を離し、ベソかいた顔でぐすりと鼻をすすった。まるで子供のベソ顔だ。
「リューに犯された」
あまりにも唐突な一言に、5ステップほど間を空けて、
「………はぃ?」
アルカネットは怪訝そうに眉間を寄せる。
「抵抗を全て押さえ付けられ、アイツに思いっきりしゃぶられた! 不覚にも2発抜かされた!! なんで、なんで、あんなに舌の使い方が上手いんだうっうっ……」
一瞬何のことかとアルカネットは訝しんだが、リュリュの名前が出てきて察しはついた。
「男……いえ、オカマに握られた時点で、普通は萎えるものんじゃないんでしょうか」
「お前もそう思うだろ!? 俺もそう思っていたんだ!! けどな、けどな」
あとはもう、メソメソと泣き出して会話にならない。
両手で顔を覆って泣いてるベルトルドを疲れたように見やって、アルカネットは長々と息を吐き出した。
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