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番外編・2
コッコラ王国の悲劇・14
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一番最悪なパターンである。
「そもそもこのコッコラ王国に、皇国軍とまともに戦える戦力自体が殆どないんですよ。だからこれだけ、片っ端から傭兵たちをかき集めている状態ですしねえ」
簾のように長く垂れ下がる前髪の奥の細い目を閉じる。
「コッコラ王国は財政の豊かな国ですから、他国からちょっかいを出されることもあるでしょうし、富豪も多いから賊に脅かされることもある。でも、常に守るばかりの戦いは知っていても、自ら仕掛ける戦いなど殆どやったことがないと思います。街の喧騒に見え隠れする国民の戸惑いと恐怖は、みなさんも感じてるでしょう。――ベルトルド卿がわざわざ釘を刺しに来たくらいですから、皇国軍はかなりの戦力を投入してくるはずです。どのみち作戦を立てたところで、勝てるはずがないんです」
「負けると判ってても戦わなければならない理由が、コッコラ王国にはあるってか」
くだらない、という表情を露骨に浮かべ、ギャリーはガシガシと頭を掻いた。
「その負け戦に乗ってやって、オレらどーすんの?」
ベッドに寝転がりながら、ザカリーは興味津々の笑みを浮かべている。それをチラリと見やって、カーティスもまた笑みを浮かべる。
「ライオン傭兵団を結成して早2年。なかなか大きな仕事も貰えず、名声をあげる場面も少なく、未だに我々は新人扱いもいいところです。そろそろ、有名になってもいい頃だと思うんですよ」
カーティスが言わんとしていることを理解して、ザカリーの顔に不敵な笑みが浮かぶ。
「コッコラ王国が勝とうが負けようが、そんなことはどうでもいいんです。幸いなことに世界各地の傭兵さんたちが大集合していますから、我々の実力を見せ付けるのにいい機会です。こんな宣伝に向いた舞台はそうありませんからね、めいっぱい利用させていただきましょうか」
最強を誇る皇国軍を相手に実力を示すことができれば、ライオン傭兵団の名は世界中に轟くことは容易に予想できる。
「へっ、作戦なんてもん、むしろ邪魔だな。好き勝手に前線で暴れさせてくれりゃ大満足ってもんだ」
ニヤニヤと笑うギャリーに、カーティスはにっこり微笑んだ。
「出来るだけ派手に目立ちましょう。全力全開で好き放題に暴れるのが、当傭兵団の作戦です」
黄金と絹に彩られた豪奢な部屋の中では、宝石を飾った豊かな黒髪の美女が、切なげにため息をついていた。
この数日、表の宮殿の方が騒がしい。後宮の方まで騒ぎが風に乗って伝わって来るのだ。
傍らにかしずく乳母が、不安そうに美女に視線を向ける。
メティン国王の愛娘、ジーネット王女殿下だ。
「お父上様は、本当に戦争をなさるおつもりなのでしょうか……」
憂いを込めて、ジーネット王女は小さく言った。
「――国内には多くの傭兵たちが、集められているそうでございますよ」
王女をいたわるように、乳母はそっと答えた。
「わたくしのせいで、このようなことに」
長い睫毛に縁どられた目を、王女は悲しげに伏せた。
「そもそもこのコッコラ王国に、皇国軍とまともに戦える戦力自体が殆どないんですよ。だからこれだけ、片っ端から傭兵たちをかき集めている状態ですしねえ」
簾のように長く垂れ下がる前髪の奥の細い目を閉じる。
「コッコラ王国は財政の豊かな国ですから、他国からちょっかいを出されることもあるでしょうし、富豪も多いから賊に脅かされることもある。でも、常に守るばかりの戦いは知っていても、自ら仕掛ける戦いなど殆どやったことがないと思います。街の喧騒に見え隠れする国民の戸惑いと恐怖は、みなさんも感じてるでしょう。――ベルトルド卿がわざわざ釘を刺しに来たくらいですから、皇国軍はかなりの戦力を投入してくるはずです。どのみち作戦を立てたところで、勝てるはずがないんです」
「負けると判ってても戦わなければならない理由が、コッコラ王国にはあるってか」
くだらない、という表情を露骨に浮かべ、ギャリーはガシガシと頭を掻いた。
「その負け戦に乗ってやって、オレらどーすんの?」
ベッドに寝転がりながら、ザカリーは興味津々の笑みを浮かべている。それをチラリと見やって、カーティスもまた笑みを浮かべる。
「ライオン傭兵団を結成して早2年。なかなか大きな仕事も貰えず、名声をあげる場面も少なく、未だに我々は新人扱いもいいところです。そろそろ、有名になってもいい頃だと思うんですよ」
カーティスが言わんとしていることを理解して、ザカリーの顔に不敵な笑みが浮かぶ。
「コッコラ王国が勝とうが負けようが、そんなことはどうでもいいんです。幸いなことに世界各地の傭兵さんたちが大集合していますから、我々の実力を見せ付けるのにいい機会です。こんな宣伝に向いた舞台はそうありませんからね、めいっぱい利用させていただきましょうか」
最強を誇る皇国軍を相手に実力を示すことができれば、ライオン傭兵団の名は世界中に轟くことは容易に予想できる。
「へっ、作戦なんてもん、むしろ邪魔だな。好き勝手に前線で暴れさせてくれりゃ大満足ってもんだ」
ニヤニヤと笑うギャリーに、カーティスはにっこり微笑んだ。
「出来るだけ派手に目立ちましょう。全力全開で好き放題に暴れるのが、当傭兵団の作戦です」
黄金と絹に彩られた豪奢な部屋の中では、宝石を飾った豊かな黒髪の美女が、切なげにため息をついていた。
この数日、表の宮殿の方が騒がしい。後宮の方まで騒ぎが風に乗って伝わって来るのだ。
傍らにかしずく乳母が、不安そうに美女に視線を向ける。
メティン国王の愛娘、ジーネット王女殿下だ。
「お父上様は、本当に戦争をなさるおつもりなのでしょうか……」
憂いを込めて、ジーネット王女は小さく言った。
「――国内には多くの傭兵たちが、集められているそうでございますよ」
王女をいたわるように、乳母はそっと答えた。
「わたくしのせいで、このようなことに」
長い睫毛に縁どられた目を、王女は悲しげに伏せた。
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