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番外編・2
コッコラ王国の悲劇・12
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「こりゃすげーな」
ギャリーは袋の中に片手を突っ込み、金貨を鷲掴みにしてバラバラとベッドの上に撒き散らした。チャリチャリンと、小気味良い音が室内に響き渡る。
「手付金だけで2年は飲んだくれて遊びほうけても、お釣りが来る数ですよ!」
金貨の詰まった袋とベッドにばらまかれた金貨を交互に見ながら、シビルは感嘆したように声をあげた。
街中の宿屋は全て埋まっていたので、ライオン傭兵団は街の一角にある裕福な商家の離れを借り受けて、そこを定宿とした。
ひとくちに離れといっても2階建ての立派な館で、20も客室を構えている。
コッコラ王国は石油で財を成している国なので、首都エルマスには広大な敷地と邸宅を構える富豪が多く住んでいた。
あらかじめ布告が出ていたようで、王国に雇われた傭兵団などは快く邸宅の一部や離れを提供され、宿屋を利用するよりも待遇が良かった。
事前に情報を仕入れていたブルニタルのはからいで、宿屋よりも富豪などの邸宅巡りで取れたのだった。
カーティスの部屋に全員集まり、手付金を一枚一枚確認し、均等に人数分割り振られる。端数はカーティスが預かり、食事代や宿代に使われた。ライオン傭兵団では報酬は常に均等に分配され、誰よりも仕事量が多かったり活躍した者へは、特別報酬が支払われる。その判断はカーティスが行う。そしてその判断に異議を唱えるメンバーは一人もいない。
分配できない物品の場合は、換金なりしてやはり均等に分配される。
カーティスは金銭絡みであまり仲間同士で溝を作りたくないと考えている。差をつけるような報酬の出し方は、最初はよくてもそのうち少しずつ不満が溜まり続け、いつかくだらないことで暴発する。しかし、誰よりも努力したり活躍したメンバーに対し、特別報酬を出すことは励みにもなるし報いることにもなる。それを不満や不平に感じるものは、ライオン傭兵団にはいらない。
ライオン傭兵団を作るにあたり、カーティスは色々なことを細かく考え、それを実行してきている。報酬の分配方法もその一つだ。
基本、楽しくやっていきたい。自分が楽しむのも当然だが、メンバー全員が楽しくなければならない。それを阻害する要素は出来るだけ取り除き、メンバー各自からの不満や文句なども出来るだけ聞いて改善するようにしていた。
「はいこれ、マーゴットさんのぶんです」
「ありがとう」
シビルから分け前を受け取って、マーゴットはさも当然、といった表情で金貨の枚数を数えていた。そのマーゴットの様子を、カーティス以外は不満そうにみやっている。
唯一カーティスが皆の不満と文句をスルーし、自らの我が儘を貫いてること、マーゴットの存在だ。
ギャリーは袋の中に片手を突っ込み、金貨を鷲掴みにしてバラバラとベッドの上に撒き散らした。チャリチャリンと、小気味良い音が室内に響き渡る。
「手付金だけで2年は飲んだくれて遊びほうけても、お釣りが来る数ですよ!」
金貨の詰まった袋とベッドにばらまかれた金貨を交互に見ながら、シビルは感嘆したように声をあげた。
街中の宿屋は全て埋まっていたので、ライオン傭兵団は街の一角にある裕福な商家の離れを借り受けて、そこを定宿とした。
ひとくちに離れといっても2階建ての立派な館で、20も客室を構えている。
コッコラ王国は石油で財を成している国なので、首都エルマスには広大な敷地と邸宅を構える富豪が多く住んでいた。
あらかじめ布告が出ていたようで、王国に雇われた傭兵団などは快く邸宅の一部や離れを提供され、宿屋を利用するよりも待遇が良かった。
事前に情報を仕入れていたブルニタルのはからいで、宿屋よりも富豪などの邸宅巡りで取れたのだった。
カーティスの部屋に全員集まり、手付金を一枚一枚確認し、均等に人数分割り振られる。端数はカーティスが預かり、食事代や宿代に使われた。ライオン傭兵団では報酬は常に均等に分配され、誰よりも仕事量が多かったり活躍した者へは、特別報酬が支払われる。その判断はカーティスが行う。そしてその判断に異議を唱えるメンバーは一人もいない。
分配できない物品の場合は、換金なりしてやはり均等に分配される。
カーティスは金銭絡みであまり仲間同士で溝を作りたくないと考えている。差をつけるような報酬の出し方は、最初はよくてもそのうち少しずつ不満が溜まり続け、いつかくだらないことで暴発する。しかし、誰よりも努力したり活躍したメンバーに対し、特別報酬を出すことは励みにもなるし報いることにもなる。それを不満や不平に感じるものは、ライオン傭兵団にはいらない。
ライオン傭兵団を作るにあたり、カーティスは色々なことを細かく考え、それを実行してきている。報酬の分配方法もその一つだ。
基本、楽しくやっていきたい。自分が楽しむのも当然だが、メンバー全員が楽しくなければならない。それを阻害する要素は出来るだけ取り除き、メンバー各自からの不満や文句なども出来るだけ聞いて改善するようにしていた。
「はいこれ、マーゴットさんのぶんです」
「ありがとう」
シビルから分け前を受け取って、マーゴットはさも当然、といった表情で金貨の枚数を数えていた。そのマーゴットの様子を、カーティス以外は不満そうにみやっている。
唯一カーティスが皆の不満と文句をスルーし、自らの我が儘を貫いてること、マーゴットの存在だ。
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