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番外編・2
コッコラ王国の悲劇・10
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ワイ・メア大陸のほぼ北側に位置するコッコラ王国は、ハワドウレ皇国を建国したワイズキュール家と共に、戦場を駆け抜けた戦友の一人、ハルク・メティンが賜った領地である。
豊かな油田が多く、石油を税としてハワドウレ皇国に献上する条件で、属国という形ではあるが、独立を勝ち取った国だ。
現在は65歳になる、エルディミル・セミフ・メティン国王が治めている。
これといって目立たず、暴君でも名君でもなく、無難に先祖代々からの玉座を温めるだけの温厚な国王という程度の評判だった。そんなメティン国王が、どういうわけか豊かな財力を背景に、世界各地から腕利きの傭兵たちを募り、ハワドウレ皇国に弓をひこうとしている。
3000万人程度のそれほど大きな国ではないが、財力がとてつもないことは世界中でも有名なことだ。その国が大々的に傭兵を募っているというニュースは、水面下でも瞬く間に世界中に広がった。
くすぶりまくる傭兵たちは、大金を稼ぐチャンスとばかりに、コッコラ王国に集結していた。
美しい幾何学模様を描く装飾に装われたグシャスプ宮殿。その一角が傭兵たちの受付所として解放され、白亜の彫刻と黄金細工で彩られた豪奢な室内には、およそ不似合い過ぎる厳つい顔の猛者たちがひしめいていた。
窓際近くに並べられた3つのテーブルには、役人風の身なりの男たちと警備兵たちが並び、テーブルを挟んで対岸に傭兵たちが3列に行儀よく並んでいる。
前に立っていた男がどくと、「次」と呼ばれてカーティスは一歩進み出た。
「これに目を通しサインを」
彫りの深い顔立ちの黒髪の男が、無表情に一枚の書面を差し出す。
無言で頷いて書面を受け取ると、カーティスは仰天したように目を見開いた。
支払われる報酬の全額は7千万エンフ、前金として1千万エンフが支払われる旨の記述だった。
左右隣の列に並ぶ先頭の男たちも、同様に目をひん剥いていた。
カーティスは驚きの表情を引っ込め、すぐさま借りたペンを走らせ署名する。
目の前の無表情な男にサインした書面と、あらかじめ用意していたメンバーリストを渡す。かわりにやたらと重たい布袋を3つと、書類を折らずに入ることのできる封筒を手渡された。
邪魔にならないようにすぐさま列から離れ、出口へと向かう。
「持とう」
出口の外で待機していたガエルが、フラフラ歩くカーティスの手から布袋を全部受け取る。カーティスはホッとした表情で、封筒に書類を入れて、小脇に抱えた。
「ありがとうございます。手が痺れてしまう重さですねえ」
「随分ぎっしり詰まってるな」
にやりとガエルが笑むと、それだけで凄みを増す迫力が満面に広がる。クマのトゥーリ族であるガエルは、3つの布袋を軽々と抱えていた。
「これは前金だろう? 随分と気前の良い国だな」
珍しくお喋りになるガエルに苦笑を向けて、カーティスは頷いた。
「1千万エンフですから。念のため、宿に戻ったら中身を確認しましょう」
豊かな油田が多く、石油を税としてハワドウレ皇国に献上する条件で、属国という形ではあるが、独立を勝ち取った国だ。
現在は65歳になる、エルディミル・セミフ・メティン国王が治めている。
これといって目立たず、暴君でも名君でもなく、無難に先祖代々からの玉座を温めるだけの温厚な国王という程度の評判だった。そんなメティン国王が、どういうわけか豊かな財力を背景に、世界各地から腕利きの傭兵たちを募り、ハワドウレ皇国に弓をひこうとしている。
3000万人程度のそれほど大きな国ではないが、財力がとてつもないことは世界中でも有名なことだ。その国が大々的に傭兵を募っているというニュースは、水面下でも瞬く間に世界中に広がった。
くすぶりまくる傭兵たちは、大金を稼ぐチャンスとばかりに、コッコラ王国に集結していた。
美しい幾何学模様を描く装飾に装われたグシャスプ宮殿。その一角が傭兵たちの受付所として解放され、白亜の彫刻と黄金細工で彩られた豪奢な室内には、およそ不似合い過ぎる厳つい顔の猛者たちがひしめいていた。
窓際近くに並べられた3つのテーブルには、役人風の身なりの男たちと警備兵たちが並び、テーブルを挟んで対岸に傭兵たちが3列に行儀よく並んでいる。
前に立っていた男がどくと、「次」と呼ばれてカーティスは一歩進み出た。
「これに目を通しサインを」
彫りの深い顔立ちの黒髪の男が、無表情に一枚の書面を差し出す。
無言で頷いて書面を受け取ると、カーティスは仰天したように目を見開いた。
支払われる報酬の全額は7千万エンフ、前金として1千万エンフが支払われる旨の記述だった。
左右隣の列に並ぶ先頭の男たちも、同様に目をひん剥いていた。
カーティスは驚きの表情を引っ込め、すぐさま借りたペンを走らせ署名する。
目の前の無表情な男にサインした書面と、あらかじめ用意していたメンバーリストを渡す。かわりにやたらと重たい布袋を3つと、書類を折らずに入ることのできる封筒を手渡された。
邪魔にならないようにすぐさま列から離れ、出口へと向かう。
「持とう」
出口の外で待機していたガエルが、フラフラ歩くカーティスの手から布袋を全部受け取る。カーティスはホッとした表情で、封筒に書類を入れて、小脇に抱えた。
「ありがとうございます。手が痺れてしまう重さですねえ」
「随分ぎっしり詰まってるな」
にやりとガエルが笑むと、それだけで凄みを増す迫力が満面に広がる。クマのトゥーリ族であるガエルは、3つの布袋を軽々と抱えていた。
「これは前金だろう? 随分と気前の良い国だな」
珍しくお喋りになるガエルに苦笑を向けて、カーティスは頷いた。
「1千万エンフですから。念のため、宿に戻ったら中身を確認しましょう」
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