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番外編・2
コッコラ王国の悲劇・9
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ペルラとブルニタルがアジトに帰ると、情報収集に散らばっていた他のメンバーはすでに全員戻ってきていて、談話室に集まって2人の帰りを待っていた。
「お疲れ様です、色々情報は集まりましたか?」
笑顔のカーティスに出迎えられて、ブルニタルは深く頷いた。
「では各自、報告をお願いします」
ギャリー、タルコット、メルヴィン、ザカリー、シビルからは、ハワドレ皇国側からの情報が報告される。彼らはもともと皇国軍に所属していた軍人で、そのツテであまり出回らないような情報も色々と掴んでいた。
ペルラ、ブルニタル、ランドン、ハーマンは、コッコラ王国側から流されてくる情報などがメインで報告された。
ルーファス、マリオン、ガエルは、傭兵ギルドや情報屋が握っている情報をうまく引き出して、両国からもたらされる情報内容の検証に一役買った。
カーティス、マーゴット、ヴァルトは、酒場や顔馴染み、ご近所の傭兵たちへの聞き込みがメインだった。
「古巣が軍隊だから、色々な話が聞けるのはありがてぇ」
ビール瓶を片手に、ギャリーがニヤリと口の端をつりあげた。厳つい顔が笑むと、不敵な凄みが増す。
「こういうときには役に立ちますよね。――皇国側としては今回、どうしてもコッコラ王国と戦争してでも守りたいものがあるようですね」
ギャリーに同意しながら、メルヴィンは真面目な表情で僅かに肩をすくめる。
「石油の供給が止められているようです」
まだ直接国民への影響は出ていないが、2週間ほど前から供給を拒否され、連絡もつかない有様らしい。
「エネルギー国家の反乱ですか……それは深刻な問題ですねえ」
腕を組んで天井を見つめながら、カーティスは考え込むように唸った。
ハワドウレ皇国の北に位置するコッコラ王国は、400年ほど前に属国という形で独立を勝ち取った、古い国の一つだ。
国土には豊かな油田を有していたので、石油を税として納めることで自由を勝ち得ていたが、それがここへきて反旗を翻したという。石油はあらゆる燃料として使われている。都市部では利用が多く、すぐに底を突くことはないが、値上がりして収拾がつかなくなるだろうことは容易に想像できた。
「ベルトルド卿がわざわざ釘を刺しにきたくらいですから、何かあるのだろうと思っていましたが。ふむ、政治的な思惑が絡んでいたんですか」
皇国の副宰相であるベルトルドが、ライオン傭兵団の後ろ盾をしていることを知っている者は、数少ないと聞いていた。政治や軍事の上層部など知っている者もいるようだが、ハーメンリンナの外の人間で知っている者はいない。
ライオン傭兵団が関わることで、ベルトルドに不利益なことが発生するのかもしれず、迂闊に首を突っ込ませない為だったのだろう。カーティスたちが独自に仕入れてくる仕事について、アレコレ口を挟んできたことはこれまでないからだ。
でも。
「ベルトルド卿の思惑や立場がどうであれ、我々はあくまで自由な傭兵団」
談話室に居並ぶ傭兵たちの顔に、不敵な笑みが浮かんで広がっていく。
宮仕えはもう辞めているのだ。ベルトルドになにを遠慮することがある。皆の目はそう語っていた。
簾のように垂れ下がる鬱陶しい前髪を払い除け、カーティスは皆の顔に浮かんだ思いを見て、にっこりと微笑んだ。
「コッコラ王国の臨時雇用に乗りましょうか」
「お疲れ様です、色々情報は集まりましたか?」
笑顔のカーティスに出迎えられて、ブルニタルは深く頷いた。
「では各自、報告をお願いします」
ギャリー、タルコット、メルヴィン、ザカリー、シビルからは、ハワドレ皇国側からの情報が報告される。彼らはもともと皇国軍に所属していた軍人で、そのツテであまり出回らないような情報も色々と掴んでいた。
ペルラ、ブルニタル、ランドン、ハーマンは、コッコラ王国側から流されてくる情報などがメインで報告された。
ルーファス、マリオン、ガエルは、傭兵ギルドや情報屋が握っている情報をうまく引き出して、両国からもたらされる情報内容の検証に一役買った。
カーティス、マーゴット、ヴァルトは、酒場や顔馴染み、ご近所の傭兵たちへの聞き込みがメインだった。
「古巣が軍隊だから、色々な話が聞けるのはありがてぇ」
ビール瓶を片手に、ギャリーがニヤリと口の端をつりあげた。厳つい顔が笑むと、不敵な凄みが増す。
「こういうときには役に立ちますよね。――皇国側としては今回、どうしてもコッコラ王国と戦争してでも守りたいものがあるようですね」
ギャリーに同意しながら、メルヴィンは真面目な表情で僅かに肩をすくめる。
「石油の供給が止められているようです」
まだ直接国民への影響は出ていないが、2週間ほど前から供給を拒否され、連絡もつかない有様らしい。
「エネルギー国家の反乱ですか……それは深刻な問題ですねえ」
腕を組んで天井を見つめながら、カーティスは考え込むように唸った。
ハワドウレ皇国の北に位置するコッコラ王国は、400年ほど前に属国という形で独立を勝ち取った、古い国の一つだ。
国土には豊かな油田を有していたので、石油を税として納めることで自由を勝ち得ていたが、それがここへきて反旗を翻したという。石油はあらゆる燃料として使われている。都市部では利用が多く、すぐに底を突くことはないが、値上がりして収拾がつかなくなるだろうことは容易に想像できた。
「ベルトルド卿がわざわざ釘を刺しにきたくらいですから、何かあるのだろうと思っていましたが。ふむ、政治的な思惑が絡んでいたんですか」
皇国の副宰相であるベルトルドが、ライオン傭兵団の後ろ盾をしていることを知っている者は、数少ないと聞いていた。政治や軍事の上層部など知っている者もいるようだが、ハーメンリンナの外の人間で知っている者はいない。
ライオン傭兵団が関わることで、ベルトルドに不利益なことが発生するのかもしれず、迂闊に首を突っ込ませない為だったのだろう。カーティスたちが独自に仕入れてくる仕事について、アレコレ口を挟んできたことはこれまでないからだ。
でも。
「ベルトルド卿の思惑や立場がどうであれ、我々はあくまで自由な傭兵団」
談話室に居並ぶ傭兵たちの顔に、不敵な笑みが浮かんで広がっていく。
宮仕えはもう辞めているのだ。ベルトルドになにを遠慮することがある。皆の目はそう語っていた。
簾のように垂れ下がる鬱陶しい前髪を払い除け、カーティスは皆の顔に浮かんだ思いを見て、にっこりと微笑んだ。
「コッコラ王国の臨時雇用に乗りましょうか」
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