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番外編・2
コッコラ王国の悲劇・7
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ただ愚痴を言うだけ言って帰る日もあれば、仕事の話を持ってくるときもある。あまり公にはされていない貴重な情報を、さり気なく教えてくれることもあるからだ。
副宰相の肩書きを持つ、雲の上の存在のハズなのだが、偉いし偉そうなんだけど、どこか砕けて話しやすい相手ではある、とみんな思っていた。
ベルトルドは暫く閉館するストリップ劇場のことで文句を垂れていたが、空になったグラスをルーファスに投げつけて身体を起こした。
「肝心なことを言い忘れてた」
頭を乱暴にかきむしりながら、ベルトルドは肩で一息つく。
「お前らも小耳に挟んでるだろう、コッコラ王国謀反の噂」
「ギルドでも酒場でも、大人気の噂ですねえ」
簾のような前髪をかきあげながら、カーティスが興味深そうに答える。
「事実だから、お前ら手を出すな」
射抜くような視線で、室内の傭兵たちをゆっくり見る。
「皇国軍が動く。おそらく大きな規模での戦いになるだろう。乗ってもウマイ話じゃないからな、募集があっても食いつくなよ」
釘を刺すように言われ、皆生唾を飲み込んだ。
皇国軍が動くほどの規模になるとは、まだ噂の段階では囁かれていない。傭兵ギルドは独自の諜報網を持っているので、機密レベルの情報をも易々と仕入れてくる。名のある傭兵団などへはあらかじめ耳打ちされるものだが、ライオン傭兵団はまだ無名に近いので、そうした早い段階での情報はもたらされていなかった。
しかしカーティスは悲観しない。何故ならどこよりも正確で早い情報網が、自らやってきて話してくれているからだ。
さて、と言ってベルトルドは立ち上がる。
「また帰りが遅くなると、ベッドに入っても枕元でくどくどとアルカネットの説教が続くからな」
どっちが主だか判らんなどとため息混じりにベルトルドは愚痴るが、38歳にもなって執事から説教されるのもどうだかなあ、という疑問をみな露骨に浮かべていた。
脱ぎ捨てていたマント、ジャケット、スカーフをメルヴィンから受け取ると、片手を上げてベルトルドはその場から消えた。
サイ《超能力》を有するベルトルドは、彼にしか出来ないという空間転移を使い、瞬時にこの場から消えたのだった。
「やれやれ、やっとお帰りなすったか」
ギャリーは大柄な身体を、ベルトルドが座っていたオレンジ色のソファに投げ出し、両腕を伸ばしてぐったりと息を吐き出した。
みんなも緊張が解けていくようなため息を吐き出しながら、思い思い寛いだ。
「中々オイシイ話をしてってくれたな、御大は」
「ほんとにねえ」
意味ありげにカーティスはニヤリと口の端をつりあげた。
「あの口ぶりだと、かなり大掛かりに皇国軍が動くようですね。正規部隊だけじゃなく特殊部隊も動かすんじゃないでしょうか」
考え込むように両腕を組み、シビルはほたほた歩きながら呟いた。タヌキのトゥーリ族である彼女は、身長が120センチ程度しかない。まるで子供のような外見をしてる。
シビルと同じ身長のキツネのトゥーリ族であるハーマンは、嬉しそうに毛先の白い尻尾をブンブン振り回した。
「ねーねー、当然ボクたちも動くよね?」
カーティスは笑みをより深める。
「最近は仕事もなくて暇を持て余していますしね。詳しく情報集めをしましょうか」
副宰相の肩書きを持つ、雲の上の存在のハズなのだが、偉いし偉そうなんだけど、どこか砕けて話しやすい相手ではある、とみんな思っていた。
ベルトルドは暫く閉館するストリップ劇場のことで文句を垂れていたが、空になったグラスをルーファスに投げつけて身体を起こした。
「肝心なことを言い忘れてた」
頭を乱暴にかきむしりながら、ベルトルドは肩で一息つく。
「お前らも小耳に挟んでるだろう、コッコラ王国謀反の噂」
「ギルドでも酒場でも、大人気の噂ですねえ」
簾のような前髪をかきあげながら、カーティスが興味深そうに答える。
「事実だから、お前ら手を出すな」
射抜くような視線で、室内の傭兵たちをゆっくり見る。
「皇国軍が動く。おそらく大きな規模での戦いになるだろう。乗ってもウマイ話じゃないからな、募集があっても食いつくなよ」
釘を刺すように言われ、皆生唾を飲み込んだ。
皇国軍が動くほどの規模になるとは、まだ噂の段階では囁かれていない。傭兵ギルドは独自の諜報網を持っているので、機密レベルの情報をも易々と仕入れてくる。名のある傭兵団などへはあらかじめ耳打ちされるものだが、ライオン傭兵団はまだ無名に近いので、そうした早い段階での情報はもたらされていなかった。
しかしカーティスは悲観しない。何故ならどこよりも正確で早い情報網が、自らやってきて話してくれているからだ。
さて、と言ってベルトルドは立ち上がる。
「また帰りが遅くなると、ベッドに入っても枕元でくどくどとアルカネットの説教が続くからな」
どっちが主だか判らんなどとため息混じりにベルトルドは愚痴るが、38歳にもなって執事から説教されるのもどうだかなあ、という疑問をみな露骨に浮かべていた。
脱ぎ捨てていたマント、ジャケット、スカーフをメルヴィンから受け取ると、片手を上げてベルトルドはその場から消えた。
サイ《超能力》を有するベルトルドは、彼にしか出来ないという空間転移を使い、瞬時にこの場から消えたのだった。
「やれやれ、やっとお帰りなすったか」
ギャリーは大柄な身体を、ベルトルドが座っていたオレンジ色のソファに投げ出し、両腕を伸ばしてぐったりと息を吐き出した。
みんなも緊張が解けていくようなため息を吐き出しながら、思い思い寛いだ。
「中々オイシイ話をしてってくれたな、御大は」
「ほんとにねえ」
意味ありげにカーティスはニヤリと口の端をつりあげた。
「あの口ぶりだと、かなり大掛かりに皇国軍が動くようですね。正規部隊だけじゃなく特殊部隊も動かすんじゃないでしょうか」
考え込むように両腕を組み、シビルはほたほた歩きながら呟いた。タヌキのトゥーリ族である彼女は、身長が120センチ程度しかない。まるで子供のような外見をしてる。
シビルと同じ身長のキツネのトゥーリ族であるハーマンは、嬉しそうに毛先の白い尻尾をブンブン振り回した。
「ねーねー、当然ボクたちも動くよね?」
カーティスは笑みをより深める。
「最近は仕事もなくて暇を持て余していますしね。詳しく情報集めをしましょうか」
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