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番外編・2
コッコラ王国の悲劇・3
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「俺たちの計画、あれをやりやすくするために、お前が側にいるほうが助かる」
ふと、アルカネットの表情が、虚を突かれたようになる。
「お互い宿舎住まいだしな。念話で話してもいいんだが、おおっぴろに話をするにしても、やはり近くにいたほうがいい」
「それは…そうですが」
やや勢いが殺げた声で、アルカネットは呟く。
「それにな、もう俺が代わりに辞表書いて、人事に渡してきたぞ」
「え?」
「今日付で依願退職だ。退職金は後日お前の口座に振込まれるし、後任の人事も俺が選んで辞令を出しておいたから、心置きなく安心しろ」
その瞬間、ブワッとアルカネットの身体から殺意と稲妻が噴出した。
「ぶっ殺されたいようだなあ、ええ?」
温和な表情が一瞬で消え、極悪な表情が満面を覆う。
「屋敷は吹っ飛ばすなよ!? 買って一日も経ってないんだからなっ!!」
ベルトルドは大慌てで、自身と屋敷に広大な防御を張り巡らせ、アルカネットの十八番、イラアルータ・トニトルスの雷撃に備えた。
翌日、突然のアルカネット退役の件で、皇国軍は騒然となった。
まさか、尋問・拷問部隊の長官職を退いて、副宰相の家の執事に転職したなど、前代未聞である。しかも先触れもなく、突然のことだ。
まだ35歳と働き盛りで、執事職が悪いとは言わないが、長官職と比べると見劣りを禁じえない。尋問・拷問部隊の隊員たちも、青天の霹靂で放心状態だった。
こうして、アルカネットはその秀でた才を惜しまれながら、軍を離れたのだ。
アルカネットは手にしていた写真を見て、呆れたような、それでいて懐かしそうに微笑んだ。
「ターヴェッティ学院を卒業し、憧れの尋問・拷問部隊に入り、長官にまで上り詰めたと思えば。この屋敷の執事に転職させられるなど、誰が想像したでしょうねえ…」
かれこれ、もう3年も前の出来事だ。
写真には、ベルトルドとアルカネットと、ベルトルドの秘書官をしているリュリュが、屋敷を背にして並んで立っている。
この3人は同郷で、幼馴染なのだ。
「でっかな屋敷を買った自慢をしてやろう」
そうベルトルドが言い出した。それで故郷の両親へ送るために、3人で写った写真を撮ることになったのだと思い出す。仕送りは続けているが、あまり帰省もしていないので、まあいいかと思っておとなしく従った。
顔を上げると、暖炉の上に置かれた時計を見て、アルカネットは小さく息をつく。針は既に夜の10時を指していた。
「そういえば、ライオン傭兵団のところへ行くと仰っていましたね。お風呂とお酒は用意できているので、後は明日の朝食の指示を出しておきましょうか」
暖炉の上に写真を戻すと、アルカネットは自室をあとにした。
ふと、アルカネットの表情が、虚を突かれたようになる。
「お互い宿舎住まいだしな。念話で話してもいいんだが、おおっぴろに話をするにしても、やはり近くにいたほうがいい」
「それは…そうですが」
やや勢いが殺げた声で、アルカネットは呟く。
「それにな、もう俺が代わりに辞表書いて、人事に渡してきたぞ」
「え?」
「今日付で依願退職だ。退職金は後日お前の口座に振込まれるし、後任の人事も俺が選んで辞令を出しておいたから、心置きなく安心しろ」
その瞬間、ブワッとアルカネットの身体から殺意と稲妻が噴出した。
「ぶっ殺されたいようだなあ、ええ?」
温和な表情が一瞬で消え、極悪な表情が満面を覆う。
「屋敷は吹っ飛ばすなよ!? 買って一日も経ってないんだからなっ!!」
ベルトルドは大慌てで、自身と屋敷に広大な防御を張り巡らせ、アルカネットの十八番、イラアルータ・トニトルスの雷撃に備えた。
翌日、突然のアルカネット退役の件で、皇国軍は騒然となった。
まさか、尋問・拷問部隊の長官職を退いて、副宰相の家の執事に転職したなど、前代未聞である。しかも先触れもなく、突然のことだ。
まだ35歳と働き盛りで、執事職が悪いとは言わないが、長官職と比べると見劣りを禁じえない。尋問・拷問部隊の隊員たちも、青天の霹靂で放心状態だった。
こうして、アルカネットはその秀でた才を惜しまれながら、軍を離れたのだ。
アルカネットは手にしていた写真を見て、呆れたような、それでいて懐かしそうに微笑んだ。
「ターヴェッティ学院を卒業し、憧れの尋問・拷問部隊に入り、長官にまで上り詰めたと思えば。この屋敷の執事に転職させられるなど、誰が想像したでしょうねえ…」
かれこれ、もう3年も前の出来事だ。
写真には、ベルトルドとアルカネットと、ベルトルドの秘書官をしているリュリュが、屋敷を背にして並んで立っている。
この3人は同郷で、幼馴染なのだ。
「でっかな屋敷を買った自慢をしてやろう」
そうベルトルドが言い出した。それで故郷の両親へ送るために、3人で写った写真を撮ることになったのだと思い出す。仕送りは続けているが、あまり帰省もしていないので、まあいいかと思っておとなしく従った。
顔を上げると、暖炉の上に置かれた時計を見て、アルカネットは小さく息をつく。針は既に夜の10時を指していた。
「そういえば、ライオン傭兵団のところへ行くと仰っていましたね。お風呂とお酒は用意できているので、後は明日の朝食の指示を出しておきましょうか」
暖炉の上に写真を戻すと、アルカネットは自室をあとにした。
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