片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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勇気と決断編

episode523

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「一生お別れするわけじゃないんだからあ……」

「俺にとっては、一生別れるようなものだ!!」

 ベルトルドはキュッリッキをぎゅっぎゅっと抱きしめ、これでもかこれでもかと頬ずりする。そしてこれでもかこれでもかと、キュッリッキの頬にキスの雨を降らせた。

「毎週水曜の19時には、テレビ観に遊びに来るってば」

「泊りがけ?」

「泊まっていってもイイケド」

 テレビ放送は、現在ハーメンリンナのテレビモニターを持つ家屋敷と、イララクス内の公共機関にあるモニターでしか観られない。あまり一般人には馴染みのないものである。

 そのテレビ放送で毎週水曜日に『美魔女っ子騎士カトリーナ』というドラマがあり、これにキュッリッキは激ハマりしていた。一人の美少女が魔法で騎士に変身して悪者と戦うもので、出演の女優は魔法スキル〈才能〉を持っているため、本格的な魔法バトルのシーンなどが見所だ。

 変身シーンが出てくると、テレビモニターの前で一緒にポーズを取るほど、キュッリッキは大好きなのである。

「毎週水曜しか会えないのかああ!」

「いつまでリッキーさんを抱きしめているんですか! 早くどいてください」

 キュッリッキを独占し続けるベルトルドに、アルカネットがキレる寸前の表情で睨みつけていた。

「俺のリッキーだから、名残惜しんでいるんだ!」

「誰があなたのですか! いい加減放しなさい」

 我慢しきれず、アルカネットはベルトルドの首を本気で絞め上げた。

「し……死ぬ……」

「ドケこら」

「………」

 今日はキュッリッキがエルダー街のアジトへ帰ってしまう。

 ベルトルドとアルカネットは出仕の時間だが、見送りに出てきたキュッリッキを、名残惜しみまくっているのである。

「旦那様がた、そろそろお出にならないと、本当に遅刻なさいますよ」

 涼しい表情(かお)でリトヴァに言われて、ベルトルドとアルカネットは半べそな表情を浮かべた。

「りっきぃ……」

「いってらっしゃい!」

「早くお行きにならないと、リュリュ様が飛んできますよ?」

「うっ…」

 ベルトルドの顔が真っ青になり、不承不承の体でキュッリッキから離れ、トボトボと玄関を出て行った。

「またすぐに会いましょうね」

 アルカネットはキュッリッキをしっかり抱きしめ、額にキスをして離れた。

「うん、いってらっしゃい」

 2人の姿が見えなくなるまで玄関前に佇み、そしてキュッリッキは屋敷に戻った。

「さあお嬢様、お仕度なさいませ」

「うん!」

 あと2時間ほどでメルヴィンが迎えに来る予定になっている。

 嬉しそうな笑みを浮かべ、キュッリッキは跳ねるようにして、部屋へ戻っていった。
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