片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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勇気と決断編

episode501

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 メルヴィンはじっと鏡の中を覗き込む。

 普段身だしなみのチェック以外、それほど熱心に鏡を覗くことはない。しかし今日は丹念に自分の顔をチェックしていた。

 エルアーラ遺跡でベルトルドに殴られたときに腫れた頬は、今ではすっかりひいて元通りになっている。その時切った口の端しの怪我も治っていた。

 両頬を掌でパンパンッと叩いて気合を入れると、洗面所を出て玄関へ向かう。ちょうどギャリーが、パンツ姿で眠そうに歩いてきた。

「おはようございます、ギャリーさん」

「ん、おはー。どっか行くのか?」

「ええ、ハーメンリンナまで」

 一瞬考えこむ風をしたギャリーだが、やがてウンウン頷いた。

「キューリ迎えに行くんだな」

「はい」

 メルヴィンは真顔で首を縦に振った。

 エルアーラ遺跡の一件から、もう2週間も経っている。

 キュッリッキの想いを受け止める覚悟、彼女の翼やその背景を理解し、それも全て受け止める覚悟。そして自分の心をよく見つめ、彼女を愛していることを認めた。キュッリッキが自分の想いを受け入れてくれるまで、何度でも何度でも告白を繰り返す。そう、決意した。

 気持ちがそう固まるまで、2週間という時間が必要だった。しばらくは自分の鈍さに落ち込んでいたが、キュッリッキのことを思うようになると、心は決まっていった。

 メルヴィンの顔に迷いが一切ナイことを見て、ギャリーは満足そうに頷く。

「行ってこい。そしてキューリ連れて、帰って来い」

「はい」

 ギャリーのエールに笑顔でこたえ、メルヴィンはアジトを出た。

「おめーよ、パンツに手を突っ込んで股間をボリボリ掻くなや」

 歯ブラシを口に突っ込んだまま、ザカリーが階段をおりてくる。

「布越しに掻くのキライなんだよ」

「オッサンだな」

「うっせ」

 2人はそのまま一緒に洗面所へ向かう。

「メルヴィンのやつ、やっと迎えに行ったのか」

「ああ」

「そっか。キューリ、喜ぶだろうな~」

「うまくいきゃイイんだけどな」

 ギャリーが洗面所のドアノブに手をかけようとすると、ザカリーが慌ててギャリーの手をどかしてドアを開ける。

「股間触ったキタねぇ手で触るな」

「ケッ」

「で、なんだよ、うまくいかねえってか?」

「あのオッサンどもが、そう易易キューリに会わせるとは思わなくてよ。妨害の障壁のひとつやふたつあっても、おかしくねえ」

「………まあ、そんな悪意に臆してるくらいなら、キューリを連れ帰るのはハナっから無理だろ」

「そうだな」

「あああ、股間掻いた手で歯磨き粉チューブに触るんじゃねえよっ!」

「おめーの鼻の穴に指つっこんだろか」

「何をぎゃーすか騒いでいるんですかーもー!」

 洗面所の騒ぎを聞きつけ、シビルがすっ飛んできた。

「よっ、シビル~」

 ニヤニヤと笑いながら、ギャリーがシビルの顔を撫でまくった。

「シビル、すぐ顔洗っとけ。股間を掻きまくった手だからよ」

 ザカリーが歯を磨きながら指摘する。

「ひいいいっ! 汚いっ!!」

 尻尾を逆立てて仰天すると、シビルは洗面台に飛びついた。
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