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勇気と決断編
episode496
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「皇王さまが、この国の民だって言ってくれて、急に心が軽くなっていったの。この国に居ていいよ、て言ってもらえた気がして。家も国もなくて、アタシ一体どこの子なんだろうってずっと思ってたの。傭兵だから関係ないって思ってても、やっぱりどこの子なのかなあって。帰る国が出来て、今とってもホッとしてるの」
心底安堵したようにキュッリッキは微笑んだ。
生まれ落ちてすぐに両親から拒絶され、生まれた国からも拒絶され、仕方なく引き取られた修道院でも居場所がなかった。
修道院を出てからずっと、フェンリルとともに家なし子生活。色々な国や町や村を転々とし、ライオン傭兵団という新しい住処を得た。しかし、自分はどこの国の子なのだろう。それが心に延々と引っかかっていた。
でも今夜、キュッリッキはハワドウレ皇国の国民なのだと、正式に認められた。自分が居てもいい国が出来た。
「ああ、リッキーはこの国の子で、俺の大事な大事な恋人で花嫁で妻だ」
「何をどさくさに紛れて厚かましいことを言っているんですか。リッキーさんは私のものですからね」
「うるさいぞむっつりスケベ。お前は一生独身を貫けばいいんだ、あの女狐みたいに」
「手当たり次第女に飛びついてるオープンスケベなあなたが、一生独身でいればいいんですよ。やりたくなったら好きなだけ取っ替え引っ替え出来るでしょう」
またもや目の前でしょうもないことでいがみ合い始めた2人に、キュッリッキは疲れたようにため息をついた。
「アルカネットさん、アタシのお化粧なおして。戻らなきゃ」
「え、あ、はい。もう大丈夫ですか?」
「うん。皇王さまにお礼を言わなくっちゃなの」
「そうですね。では、ドレッサーの前に」
キュッリッキをドレッサーの前に座らせて、アルカネットは化粧ポーチを開いて化粧品を取り出した。
「あんなジジイに礼なんていらないぞ、リッキー」
「ダメなの。ちゃんと、お礼言うんだから」
この国に居てもいい、この国の子だと言ってくれた皇王に、キュッリッキは心を込めて「ありがとう」と言いたかった。
アルカネットに化粧を直してもらい、ドレスもきちんと整えると、2人にエスコートされて、キュッリッキは再びホールへ戻った。
先ほどとは打って変わって、音楽が間断なく鳴り響き、ホールの中心ではワルツを踊り楽しむ人々がたくさんいた。そして、飲み物や軽食を置いたテーブルの周りには、談笑に花を咲かせる人々が居る。先ほどの騒動などなかったかのように、皆舞踏会の雰囲気に酔いしれていた。
「こっちだ、リッキー」
ベルトルドに手を引かれ、ドレスの裾を踏まないか気をつけながら、キュッリッキは人々の間をするすると歩いていく。
玉座の置かれた壇上の前にたどり着くと、皇王から名を呼ばれて、キュッリッキは顔を上げた。
「もう大丈夫か? 先程はすまなかったのう。あんな口の悪い女狐をこの場に呼ぶことになってしまって、そなたには申し訳ないことをしてしまった」
キュッリッキは小さく首を横に振ると、にっこりと皇王に笑いかけた。
「ありがとうございます、皇王様。アタシをこの国の仲間に入れてくれて」
皇王は一瞬目を見張り、そして優しく顔をほころばせた。
心底安堵したようにキュッリッキは微笑んだ。
生まれ落ちてすぐに両親から拒絶され、生まれた国からも拒絶され、仕方なく引き取られた修道院でも居場所がなかった。
修道院を出てからずっと、フェンリルとともに家なし子生活。色々な国や町や村を転々とし、ライオン傭兵団という新しい住処を得た。しかし、自分はどこの国の子なのだろう。それが心に延々と引っかかっていた。
でも今夜、キュッリッキはハワドウレ皇国の国民なのだと、正式に認められた。自分が居てもいい国が出来た。
「ああ、リッキーはこの国の子で、俺の大事な大事な恋人で花嫁で妻だ」
「何をどさくさに紛れて厚かましいことを言っているんですか。リッキーさんは私のものですからね」
「うるさいぞむっつりスケベ。お前は一生独身を貫けばいいんだ、あの女狐みたいに」
「手当たり次第女に飛びついてるオープンスケベなあなたが、一生独身でいればいいんですよ。やりたくなったら好きなだけ取っ替え引っ替え出来るでしょう」
またもや目の前でしょうもないことでいがみ合い始めた2人に、キュッリッキは疲れたようにため息をついた。
「アルカネットさん、アタシのお化粧なおして。戻らなきゃ」
「え、あ、はい。もう大丈夫ですか?」
「うん。皇王さまにお礼を言わなくっちゃなの」
「そうですね。では、ドレッサーの前に」
キュッリッキをドレッサーの前に座らせて、アルカネットは化粧ポーチを開いて化粧品を取り出した。
「あんなジジイに礼なんていらないぞ、リッキー」
「ダメなの。ちゃんと、お礼言うんだから」
この国に居てもいい、この国の子だと言ってくれた皇王に、キュッリッキは心を込めて「ありがとう」と言いたかった。
アルカネットに化粧を直してもらい、ドレスもきちんと整えると、2人にエスコートされて、キュッリッキは再びホールへ戻った。
先ほどとは打って変わって、音楽が間断なく鳴り響き、ホールの中心ではワルツを踊り楽しむ人々がたくさんいた。そして、飲み物や軽食を置いたテーブルの周りには、談笑に花を咲かせる人々が居る。先ほどの騒動などなかったかのように、皆舞踏会の雰囲気に酔いしれていた。
「こっちだ、リッキー」
ベルトルドに手を引かれ、ドレスの裾を踏まないか気をつけながら、キュッリッキは人々の間をするすると歩いていく。
玉座の置かれた壇上の前にたどり着くと、皇王から名を呼ばれて、キュッリッキは顔を上げた。
「もう大丈夫か? 先程はすまなかったのう。あんな口の悪い女狐をこの場に呼ぶことになってしまって、そなたには申し訳ないことをしてしまった」
キュッリッキは小さく首を横に振ると、にっこりと皇王に笑いかけた。
「ありがとうございます、皇王様。アタシをこの国の仲間に入れてくれて」
皇王は一瞬目を見張り、そして優しく顔をほころばせた。
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