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勇気と決断編
episode495
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「厄介払いしたがっていたようだったからな、申し入れたら快く書類を渡してくれたよ。全く、国の頂点がそれでは、リッキーに安寧の地はないな」
ベルトルドは侮蔑を顕に、カステヘルミ皇女に嘲笑を投げかけた。
「わらわは聞いておらぬぞっ」
「方々で随分勝手な振る舞いをしていてほとほと困っていると、エサイアス帝がもらしておったぞ。行く先々で問題を起こして、後始末が大変なのだそうな」
チラッとカステヘルミ皇女を見やり、皇王は小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。それを忌々しげに見上げ、カステヘルミ皇女は親指の爪を噛んだ。
「今度のこともエサイアス帝に断りもなく、独断でノコノコやってきたようだの。一応はイルマタル帝国の顔を立ててこのパーティーへの出席を許したが、あなたの言動は目に余る。あれほどキュッリッキを傷つけ貶め、心の傷を抉り、とてもマトモとは思えぬ」
玉座から立ち上がると、皇王は控えていた宮殿騎士たちに命じた。
「即刻この国から追い出せ」
「はっ!」
5人の宮殿騎士たちは、カステヘルミ皇女とキュッリッキの両親の腕を丁重に、しかし力ずくで掴むと、扉のほうへ引っ張っていった。
「無礼者ども!!」
キンキン響く金切り声で、カステヘルミ皇女は抵抗したが、やがてホールから追い出されていった。
「ふぅ…。ん?」
皇王はわざとらしく肩に手をあて首を振っていたが、ベルトルドの視線を感じて下を見る。
「な、なんじゃ」
「俺の真似して、何見せ場をとってるんだ、このジジイ」
「う…」
「このタヌキジジイめ、まあいい。俺のリッキーのために頑張ったということで許す」
「誰があなたのですか、私のリッキーさんですよ」
誰が皇王なのさ!? という周囲のツッコミは無視して、ベルトルドとアルカネットはいがみ合っていた。
「あー……、では皆のもの、待たせたな。舞踏会を始めよう、盛大にな」
皇王が招待客たちに声をかけると、宮廷の楽士隊が音楽を奏で始めた。
紳士淑女たちは待ちかねていたように、パートナーと手に手を取って踊り始めた。
ベルトルドとアルカネットに付き添われて、キュッリッキは一旦控え室に戻った。
身体の震えはおさまったが、ホールでの一件で身体が疲れてしまっていたのだ。
身体を横たえることができる長椅子に座らせてもらうと、キュッリッキは疲れたようにクッションにもたれかかった。
「大丈夫ですか、可哀想に。でも、よく頑張りましたね」
アルカネットが優しく頬を撫でてくれて、キュッリッキは小さく笑んだ。
「本当だったらね、両親に会えて嬉しいはずなんだよね。でも、ちっとも嬉しくなかった。胸が苦しくて痛くて痛くて、頭の中グラグラしちゃって……」
ベルトルドとアルカネットは、キュッリッキの前に片膝をついて、じっと話を聞いている。
「いっぺんに昔の嫌なこと、ずっと気にしていることを思い出しちゃって、死んじゃいたいほど苦しかった」
カステヘルミ皇女の言葉が、見えない刃となって、心に突き刺さってきて痛かった。
ベルトルドは侮蔑を顕に、カステヘルミ皇女に嘲笑を投げかけた。
「わらわは聞いておらぬぞっ」
「方々で随分勝手な振る舞いをしていてほとほと困っていると、エサイアス帝がもらしておったぞ。行く先々で問題を起こして、後始末が大変なのだそうな」
チラッとカステヘルミ皇女を見やり、皇王は小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。それを忌々しげに見上げ、カステヘルミ皇女は親指の爪を噛んだ。
「今度のこともエサイアス帝に断りもなく、独断でノコノコやってきたようだの。一応はイルマタル帝国の顔を立ててこのパーティーへの出席を許したが、あなたの言動は目に余る。あれほどキュッリッキを傷つけ貶め、心の傷を抉り、とてもマトモとは思えぬ」
玉座から立ち上がると、皇王は控えていた宮殿騎士たちに命じた。
「即刻この国から追い出せ」
「はっ!」
5人の宮殿騎士たちは、カステヘルミ皇女とキュッリッキの両親の腕を丁重に、しかし力ずくで掴むと、扉のほうへ引っ張っていった。
「無礼者ども!!」
キンキン響く金切り声で、カステヘルミ皇女は抵抗したが、やがてホールから追い出されていった。
「ふぅ…。ん?」
皇王はわざとらしく肩に手をあて首を振っていたが、ベルトルドの視線を感じて下を見る。
「な、なんじゃ」
「俺の真似して、何見せ場をとってるんだ、このジジイ」
「う…」
「このタヌキジジイめ、まあいい。俺のリッキーのために頑張ったということで許す」
「誰があなたのですか、私のリッキーさんですよ」
誰が皇王なのさ!? という周囲のツッコミは無視して、ベルトルドとアルカネットはいがみ合っていた。
「あー……、では皆のもの、待たせたな。舞踏会を始めよう、盛大にな」
皇王が招待客たちに声をかけると、宮廷の楽士隊が音楽を奏で始めた。
紳士淑女たちは待ちかねていたように、パートナーと手に手を取って踊り始めた。
ベルトルドとアルカネットに付き添われて、キュッリッキは一旦控え室に戻った。
身体の震えはおさまったが、ホールでの一件で身体が疲れてしまっていたのだ。
身体を横たえることができる長椅子に座らせてもらうと、キュッリッキは疲れたようにクッションにもたれかかった。
「大丈夫ですか、可哀想に。でも、よく頑張りましたね」
アルカネットが優しく頬を撫でてくれて、キュッリッキは小さく笑んだ。
「本当だったらね、両親に会えて嬉しいはずなんだよね。でも、ちっとも嬉しくなかった。胸が苦しくて痛くて痛くて、頭の中グラグラしちゃって……」
ベルトルドとアルカネットは、キュッリッキの前に片膝をついて、じっと話を聞いている。
「いっぺんに昔の嫌なこと、ずっと気にしていることを思い出しちゃって、死んじゃいたいほど苦しかった」
カステヘルミ皇女の言葉が、見えない刃となって、心に突き刺さってきて痛かった。
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