片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

文字の大きさ
上 下
509 / 882
勇気と決断編

episode490

しおりを挟む
 キュッリッキはドレッサーの前に座り、髪型が乱れていないかなどをアルカネットがチェックして、ベルトルドはソファに座って将軍たちから色々と報告などを聞いていた。

「新しい知事が決まるまでは、当面サロモンが行政、軍事、治安諸々やることになる。どう見ても本物の無能者だから、知事が決まるまでの間、優秀な事務官たちを送るよう明日手配する。そうじゃないとすぐに現場が混乱するのは、目に見えているからな」

「そうですね。新知事が決まるまで閣下がご滞在なら、速やかにつつがなく移行しそうですが」

「モナルダ大陸にだけかまけていると、本国の行政が滞るからな。俺が10人いればテキパキ回るんだが」

「あなたみたいな不誠実な男が10人もいたら、目も当てられません」

 横からアルカネットにつっこまれ、ベルトルドが噛み付きそうな表情を向ける。

「世界中の女どもが、ありがたがって涙を流して濡れるだけだっ!」

「ベルトルドさんの助平」

「リッキぃ……」

 またもやキュッリッキから軽蔑の眼差しを向けられ、ベルトルドが泣きそうな顔で身を乗り出した。そこへノックがして、ヤーコッピが扉を開ける。

「お時間になりましたので、皆様ホールへお越し下さい」

「やっとか。では、チョー面倒だが行くぞ」

 皆席を立ち、キュッリッキも緊張顔で立ち上がった。

「ちゃんとできるかな…」

 胸元を両手で押さえて、ドキドキを沈めようとしていると、ベルトルドとアルカネットがキュッリッキの前に立ち、いきなり、

「最初はグー、じゃんけん」

「ぽいっ」

「ほいっ」

「ぽぽいっ!」

「おしゃあっ!!」

 ジャンケンをやり始め、ベルトルドがチョキをだしてアルカネットに勝った。

「サイ《超能力》は使ってないぞ。愛の力だ、愛の!」

「くっ!」

 そしてベルトルドがニコニコとキュッリッキに腕を差し出す。

「では、参りましょうか、麗しい姫君」

 エスコート役を決めていたらしい。キュッリッキはひきつった笑みを浮かべると、ベルトルドの腕に手を回した。



 大きな扉の前まで来ると、案内をしていたヤーコッピが深々と頭を下げる。

「陛下や他の招待客の皆様は、すでにお待ちしております。まっすぐ玉座前までお進みください」

「わかった」

「では、楽しいひとときを」

 ヤーコッピが指を鳴らすと、扉が内側に大きく開かれた。

 一瞬白い光が目に飛び込んできて、キュッリッキは眩しさに目を細めた。そして目が慣れてくると、目の前には左右に紳士淑女が道を開けて壁のように立ち、床には赤いカーペットがまっすぐ敷かれている。

「行くぞ、リッキー」

「う、うん」

 キュッリッキの歩幅に合わせるように、ベルトルドはゆっくりと歩みを進める。その2人の後ろに、アルカネット、ブルーベル将軍、フォヴィネン大将、エクルース大将が続いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?

翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。 「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」 ご都合主義な創作作品です。 異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。 恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...