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勇気と決断編
episode483
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「というわけで、しっかり頼むぞ!」
「あまり羞恥心を抱かせず、正しい認識と知識を教えてあげてください」
ベルトルドとアルカネットに重々言い渡されたものの、イマイチ事態が飲み込めていない。
何が「というわけで」なのだろうかと、ヴィヒトリは憮然とした表情を隠そうともせず頷いた。朝っぱらから電話で叩き起され、早急にベルトルド邸にくるよう命令されてすっ飛んできたのだ。逆らえば後が怖い。
「夜はパーティーがあるから、早めに戻る。俺たちが帰る前にリッキーをドレスアップしておけよ」
「承りました」
リトヴァが頭を下げる。
「ではいってくる。リッキー、また夕刻にな」
「行ってきます」
「いってらっしゃーい」
玄関ホールで2人が出かけていくのを見送り、セヴェリが扉を閉めると、ヴィヒトリがたまりかねたように「うがああっ」と唸り声を上げた。
「なんだってこんな朝っぱらから呼び出されたんだボクは! 怪我人病人が発生したわけじゃないだろうし」
「それについては、わたくしから御説明申し上げますわ」
リトヴァが少々困ったような表情で、ヴィヒトリに寄って小声で話し始めた。
キュッリッキは玄関ホールにある、待ち合い用に置かれたソファに座って2人を眺めていた。
やがてリトヴァの説明が終わると、ヴィヒトリは盛大に吹き出し、ゲラゲラと大声を上げて笑いだした。
「それは凄い光景だっただろうな~~。兄ちゃん聞いたらチョー笑い転げるネタだよねこれ」
「ど、どうか、ライオンの皆様にはご内密に……」
リトヴァが困り果てる様子にもおかまいなく、ヴィヒトリは話す気満々の爆笑顔で腹を抱えていた。
「あーオモシロー」
ひとしきり笑い転げ、思い出し笑いで吹き出し、とにかく笑い尽くしてようやくヴィヒトリは腕を組んで考え込んだ。そして黒縁のメガネを外し、レンズをシャツの裾で磨いてかけなおす。
「んー……いくらボクが医者でも、改まって説明するのも、ちょーっと気恥ずかしいんだよね~。なんせまだボク若いし」
「そうですわねえ…。でも、ちょっとこのままでは、お嬢様にとっても少々問題かと」
「アレをミミズと勘違いして、引っこ抜こうとするのはチョットネ……」
そして再び思い出し笑いで、ヴィヒトリは身体を折り曲げて笑った。
「それにしても閣下はパワフルだねえ。隣でキュッリッキちゃん寝てるんじゃ、溜まりまくってるだろうに、よく襲わないでいられるよね」
それについては、リトヴァは苦笑を浮かべるにとどまった。襲いたくても、アルカネットもいるのだから手が出せないだけだろうとは、胸中で呟く。
「さて、どうしたものかな」
「あまり羞恥心を抱かせず、正しい認識と知識を教えてあげてください」
ベルトルドとアルカネットに重々言い渡されたものの、イマイチ事態が飲み込めていない。
何が「というわけで」なのだろうかと、ヴィヒトリは憮然とした表情を隠そうともせず頷いた。朝っぱらから電話で叩き起され、早急にベルトルド邸にくるよう命令されてすっ飛んできたのだ。逆らえば後が怖い。
「夜はパーティーがあるから、早めに戻る。俺たちが帰る前にリッキーをドレスアップしておけよ」
「承りました」
リトヴァが頭を下げる。
「ではいってくる。リッキー、また夕刻にな」
「行ってきます」
「いってらっしゃーい」
玄関ホールで2人が出かけていくのを見送り、セヴェリが扉を閉めると、ヴィヒトリがたまりかねたように「うがああっ」と唸り声を上げた。
「なんだってこんな朝っぱらから呼び出されたんだボクは! 怪我人病人が発生したわけじゃないだろうし」
「それについては、わたくしから御説明申し上げますわ」
リトヴァが少々困ったような表情で、ヴィヒトリに寄って小声で話し始めた。
キュッリッキは玄関ホールにある、待ち合い用に置かれたソファに座って2人を眺めていた。
やがてリトヴァの説明が終わると、ヴィヒトリは盛大に吹き出し、ゲラゲラと大声を上げて笑いだした。
「それは凄い光景だっただろうな~~。兄ちゃん聞いたらチョー笑い転げるネタだよねこれ」
「ど、どうか、ライオンの皆様にはご内密に……」
リトヴァが困り果てる様子にもおかまいなく、ヴィヒトリは話す気満々の爆笑顔で腹を抱えていた。
「あーオモシロー」
ひとしきり笑い転げ、思い出し笑いで吹き出し、とにかく笑い尽くしてようやくヴィヒトリは腕を組んで考え込んだ。そして黒縁のメガネを外し、レンズをシャツの裾で磨いてかけなおす。
「んー……いくらボクが医者でも、改まって説明するのも、ちょーっと気恥ずかしいんだよね~。なんせまだボク若いし」
「そうですわねえ…。でも、ちょっとこのままでは、お嬢様にとっても少々問題かと」
「アレをミミズと勘違いして、引っこ抜こうとするのはチョットネ……」
そして再び思い出し笑いで、ヴィヒトリは身体を折り曲げて笑った。
「それにしても閣下はパワフルだねえ。隣でキュッリッキちゃん寝てるんじゃ、溜まりまくってるだろうに、よく襲わないでいられるよね」
それについては、リトヴァは苦笑を浮かべるにとどまった。襲いたくても、アルカネットもいるのだから手が出せないだけだろうとは、胸中で呟く。
「さて、どうしたものかな」
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