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勇気と決断編
episode482
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すったもんだの大騒動から1時間経って、食堂に顔を揃えたベルトルド、アルカネット、キュッリッキ。
異様な空気が漂う中、キュッリッキは原型が判らないほど切り刻まれたソーセージにフォークを突き刺し口に入れる。アルカネットも黙々と皿の中身を平らげていくが、ベルトルドは青い顔で沈んでいた。
ミミズが抜けず、体調を崩していると勘違いしているキュッリッキは、労りを込めた眼差しをベルトルドに向けた。
「ヴィヒトリ先生にちゃんと診てもらったほうがいいよ、ベルトルドさん。あんな寄生虫がおっきくなって生えてくるなんて」
「いや、あれは寄生虫じゃないから……」
真剣な顔を向けるキュッリッキに、ベルトルドは引きつった笑みを向けた。
キュッリッキは男の身体の構造が判らない。それを知っているベルトルドとアルカネットは、そのことをどう説明するか頭を悩ませた。
もう少しばかりキュッリッキが子供だったら、冗談まじりに教えることはできる。しかしもう年頃の娘だ。いくら親子ほど歳が離れているとはいえ、ナントナク気恥ずかしいものがある。
「だいたい、なんでリッキーさんが、あなたの不潔極まりない粗末なモノを引っ張る羽目になったんですか」
ジロリとアルカネットに睨まれ、ベルトルドは不機嫌そうに顔を歪めた。
「俺は寝ていたんだぞ、俺が知るか」
不潔と粗末は余計である。
「ベルトルドさんってばいくら叩いても起きなくって、で、よく見たらパジャマの股間が膨らんでるでしょ。前に起こしにいったとき、ベルトルドさんの股間に巨大ナマコが張り付いていたから、もしかしたらまたかもって思ったの。そしたら巨大ミミズが生えててびっくりしたよ~」
その瞬間、アルカネットがキレた。
「テメーはどーしてそう寝ててもエロイんだよなんで勃ってるんだよええ!?」
「だから俺は寝てたんだって何度も言わせるなっ!!」
アルカネットの全身から稲妻がほとばしる。ベルトルドは慌てて自分とキュッリッキに防御を張り巡らせた。給仕のために食堂にいた使用人たちは、心得ているのかすでに退避している。
「リッキーさんにテメーのあんなもんを握らせやがって、手が腐るだろが」
洗面所にキュッリッキを連れて行ったアルカネットは、キュッリッキが嫌がるほど徹底的に10回も薬用ソープで手を洗い、アルコールスプレーを何度もかけて消毒した。
「アルカネットさん怖いよぅ……」
クロワッサンを両手で掴みながらキュッリッキが言うと、次第にアルカネットが普段の冷静さを取り戻していった。
「すみません、感情が昂ぶってしまいました。リッキーさんには怒っていませんからね」
いつもどおりの爽やかな笑顔を向けられ、キュッリッキはホッと肩の力を抜く。
「お前はホントに多重人格だな……」
ベルトルドは眉を痙攣させながら憮然と呟いた。
「しかしこのままというのも、あれだなあ……」
19歳にもなって、男と女の身体の違いが判らないのも問題である。こういうことは、正しい知識を身につけておく必要があるだろう。
「そうか、そうだ、ヴィヒトリに任せよう」
ふとキュッリッキの主治医であるヴィヒトリが頭に浮かぶ。ベルトルドのつぶやきに、アルカネットも納得顔で頷く。
「ええ、それがいいですね」
「?」
「セヴェリ、大至急ここへ来るよう、ヴィヒトリに連絡をつけろ」
「承りました」
食堂に戻っていたセヴェリは会釈すると、食堂を再び出て行った。
「リッキーには、しっかりと学んでもらわないといけない」
「? ヴィヒトリ先生から?」
「うん」
ベルトルドに深々と頷かれて、キュッリッキはひたすら首をかしげるだけだった。
異様な空気が漂う中、キュッリッキは原型が判らないほど切り刻まれたソーセージにフォークを突き刺し口に入れる。アルカネットも黙々と皿の中身を平らげていくが、ベルトルドは青い顔で沈んでいた。
ミミズが抜けず、体調を崩していると勘違いしているキュッリッキは、労りを込めた眼差しをベルトルドに向けた。
「ヴィヒトリ先生にちゃんと診てもらったほうがいいよ、ベルトルドさん。あんな寄生虫がおっきくなって生えてくるなんて」
「いや、あれは寄生虫じゃないから……」
真剣な顔を向けるキュッリッキに、ベルトルドは引きつった笑みを向けた。
キュッリッキは男の身体の構造が判らない。それを知っているベルトルドとアルカネットは、そのことをどう説明するか頭を悩ませた。
もう少しばかりキュッリッキが子供だったら、冗談まじりに教えることはできる。しかしもう年頃の娘だ。いくら親子ほど歳が離れているとはいえ、ナントナク気恥ずかしいものがある。
「だいたい、なんでリッキーさんが、あなたの不潔極まりない粗末なモノを引っ張る羽目になったんですか」
ジロリとアルカネットに睨まれ、ベルトルドは不機嫌そうに顔を歪めた。
「俺は寝ていたんだぞ、俺が知るか」
不潔と粗末は余計である。
「ベルトルドさんってばいくら叩いても起きなくって、で、よく見たらパジャマの股間が膨らんでるでしょ。前に起こしにいったとき、ベルトルドさんの股間に巨大ナマコが張り付いていたから、もしかしたらまたかもって思ったの。そしたら巨大ミミズが生えててびっくりしたよ~」
その瞬間、アルカネットがキレた。
「テメーはどーしてそう寝ててもエロイんだよなんで勃ってるんだよええ!?」
「だから俺は寝てたんだって何度も言わせるなっ!!」
アルカネットの全身から稲妻がほとばしる。ベルトルドは慌てて自分とキュッリッキに防御を張り巡らせた。給仕のために食堂にいた使用人たちは、心得ているのかすでに退避している。
「リッキーさんにテメーのあんなもんを握らせやがって、手が腐るだろが」
洗面所にキュッリッキを連れて行ったアルカネットは、キュッリッキが嫌がるほど徹底的に10回も薬用ソープで手を洗い、アルコールスプレーを何度もかけて消毒した。
「アルカネットさん怖いよぅ……」
クロワッサンを両手で掴みながらキュッリッキが言うと、次第にアルカネットが普段の冷静さを取り戻していった。
「すみません、感情が昂ぶってしまいました。リッキーさんには怒っていませんからね」
いつもどおりの爽やかな笑顔を向けられ、キュッリッキはホッと肩の力を抜く。
「お前はホントに多重人格だな……」
ベルトルドは眉を痙攣させながら憮然と呟いた。
「しかしこのままというのも、あれだなあ……」
19歳にもなって、男と女の身体の違いが判らないのも問題である。こういうことは、正しい知識を身につけておく必要があるだろう。
「そうか、そうだ、ヴィヒトリに任せよう」
ふとキュッリッキの主治医であるヴィヒトリが頭に浮かぶ。ベルトルドのつぶやきに、アルカネットも納得顔で頷く。
「ええ、それがいいですね」
「?」
「セヴェリ、大至急ここへ来るよう、ヴィヒトリに連絡をつけろ」
「承りました」
食堂に戻っていたセヴェリは会釈すると、食堂を再び出て行った。
「リッキーには、しっかりと学んでもらわないといけない」
「? ヴィヒトリ先生から?」
「うん」
ベルトルドに深々と頷かれて、キュッリッキはひたすら首をかしげるだけだった。
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