片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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勇気と決断編

episode477

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 ソファの上に足を抱えて座り、キュッリッキはぼんやりと視線を泳がせていた。

 夕刻になってアルカネットと共に屋敷に戻ってきて、ずっとこうしている。

 一人にすると塞ぎ込んで心身ともに良くないと考えたアルカネットが、ここ数日キュッリッキを伴って出仕していた。

 朝から夕刻までアルカネットと共に、魔法部隊(ビリエル)の本部で過ごす。しかしいくら場所を変わっても、気分転換になったのは最初だけ。結局どこにいても、エルアーラ遺跡でのことを思い起こして心を痛めた。

 夕飯前のひととき、とくにすることもなくただぼんやりしていると、

「リッキー! 今帰ったぞー!!!」

 ノックもなしにいきなりバンッと扉が開いて、ベルトルドが部屋に飛び込んできた。

 ソファに駆け寄ってきてベルトルドはうるうると目を潤ませると、きょとんとしているキュッリッキに飛びかかる。そして力いっぱい抱きしめ、滑らかなキュッリッキの頬に、スリスリスリスリ自分の頬を擦り付けた。

「会いたかったぞ会いたかったぞああ可愛いなもう可愛い可愛い」

「え…えっと……」

 突然のことにされるがままのキュッリッキにはお構いなしに、ベルトルドは奔流のようにこみ上げてくる激情に身を任せ、熱く熱く抱擁を堪能した。何せ一週間ぶりである。

「少し痩せたんじゃないのか? ダメだぞちゃんと食べないと。もう一人で苦しまなくても大丈夫だ、この俺が帰ってきたからな! 心ゆくまで俺の胸で泣くがいい!!」

 目を白黒させるキュッリッキを、ぎゅぎゅっと抱きしめた。そしてどさくさに紛れて膝の上にのせる。

「俺も辛かった! 悲しかった! 寂しかったぞ!! リッキーのいない毎日は地獄の苦しみだったのだ!」

「帰ってきたですって!?」

 今度はアルカネットが開きっぱなしのドアを更に開いて、地鳴りでも起きそうな歩調でドスドス部屋に入ってきた。部屋着に着替えていた。

「なんであなたがもう帰ってきているんですか? 戦勝パーティーは明日の夜ですよ」

 不愉快極まりないといった露骨な表情と声で言い放つ。それをチラリと一瞥し、ベルトルドは「フンッ」と鼻を鳴らした。

「リッキーが着ていくドレスを選ぶために、早く戻ってきたんだ。俺の完璧なコーディネートでリッキーを誰よりも美しく装って、そして俺がエスコートもしていく!」

「リッキーさんのドレスは、この私がしっかり選んでおきましたから問題ありません。エスコートも私がしていくので、あなたの出る幕は粉みじんもありませんよ」
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