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勇気と決断編
episode474
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淡い緑を色調とした豪奢な一室の上座には、重厚な木彫のデスクが置かれ、中央に細長いテーブルといくつもの椅子が置かれている。そしてデスクの傍らから入り口まで、軍人や事務官達の長蛇の列が続いていた。
デスクの主は書類を受け取ると目を通し、サッとサインをして渡す。または、内容の確認を取り、指示を出しながら書類にサインをする。
そうした作業が毎日毎日続き、今日も飽きずに長蛇の列を処理しながら、すでに夕刻に近づいていた。それでも列は一向に途切れる様子もない。
旧ソレル王国の首都アルイールにある王宮は、現在モナルダ大陸におけるハワドウレ皇国の重要な政治・軍事拠点となっている。一週間前に開戦から数時間で終戦した、前代未聞の超短時間大戦争により、ソレル王国、ボルクンド王国、エクダル国、ベルマン公国は、王たちが処刑され、国としては消えることとなった。
ハワドウレ皇国の一地方県として併呑されるが、正式名称も決まっていないことなので、元の国名に旧をつけて呼び表していた。
これら4国の事後処理、戦争の後始末、本国から送られてくる各担当者たちへの引き継ぎ、あらゆる業務が分刻みで届けられているのだった。
それらを一手に引き受け真面目にこなしているのは、ハワドウレ皇国の副宰相兼軍総帥であるベルトルドだ。自ら戦場へ乗り込み、終戦後は一度も本国へ帰還することなくモナルダ大陸に残り、こうして政務軍務に没頭中である。
もちろんこうして仕事をするのは当然のことだが、この戦争をここまで規模拡大した張本人はベルトルドだ。それを知る者はごく僅かな側近たちのみだが、ベルトルド自身ほんのちょっぴり自責の念にかられていることもあり、おとなしく居残りをしている。
正規部隊の大将たちとの会議を控え、室内に入っている列の分だけ引き受けると、ベルトルドの秘書官リュリュによって列は分断された。
最後の一人の書類にサインをしたあと、ちょうど大将たちが部屋に入ってきた。
小休止をとる暇もなくなので、ベルトルドは拗ねた表情で肩で息をついた。
「お疲れベル。もうちょっと我慢なさい」
「おう」
リュリュが温かい紅茶を淹れてくれて、一口サイズのチョコレート菓子の皿も出してくれた。
ベルトルドはチョコレート菓子を口に放り込み、もぐもぐと口を動かしている頃には、8人の大将とブルーベル将軍、各将たちの副官が揃っていた。
口の中のチョコレートを紅茶で流し込みながら、ベルトルドは室内に集った人々を眺めうんざりした。
(華も色気もないオッサンばっかりの中で、頑張って政務をこなしているというのに、気のきかない連中で嫌ンなる。ばびゅっと帰ってリッキーの傍にいてやりたい)
遺跡での一件の後、アルカネットに全て任せてしまった。一緒に飛んで帰りたかったが、大事な個人的都合により、そうできなかったのだ。せめて念話でも送ろうと思っているが、仕事が山積しすぎて余裕がなく、その日の職務を終わらせるとコテンと眠りについてしまう。
日毎にキュッリッキへの心配はつのり、会えない苦しみが苛む。
(早く会って抱きしめてやりたい。頬ずりしたい。撫で撫でしたい。キスもしたい。押し倒したい。そして)
「はーーい、妄想そこまでっ」
デスクの主は書類を受け取ると目を通し、サッとサインをして渡す。または、内容の確認を取り、指示を出しながら書類にサインをする。
そうした作業が毎日毎日続き、今日も飽きずに長蛇の列を処理しながら、すでに夕刻に近づいていた。それでも列は一向に途切れる様子もない。
旧ソレル王国の首都アルイールにある王宮は、現在モナルダ大陸におけるハワドウレ皇国の重要な政治・軍事拠点となっている。一週間前に開戦から数時間で終戦した、前代未聞の超短時間大戦争により、ソレル王国、ボルクンド王国、エクダル国、ベルマン公国は、王たちが処刑され、国としては消えることとなった。
ハワドウレ皇国の一地方県として併呑されるが、正式名称も決まっていないことなので、元の国名に旧をつけて呼び表していた。
これら4国の事後処理、戦争の後始末、本国から送られてくる各担当者たちへの引き継ぎ、あらゆる業務が分刻みで届けられているのだった。
それらを一手に引き受け真面目にこなしているのは、ハワドウレ皇国の副宰相兼軍総帥であるベルトルドだ。自ら戦場へ乗り込み、終戦後は一度も本国へ帰還することなくモナルダ大陸に残り、こうして政務軍務に没頭中である。
もちろんこうして仕事をするのは当然のことだが、この戦争をここまで規模拡大した張本人はベルトルドだ。それを知る者はごく僅かな側近たちのみだが、ベルトルド自身ほんのちょっぴり自責の念にかられていることもあり、おとなしく居残りをしている。
正規部隊の大将たちとの会議を控え、室内に入っている列の分だけ引き受けると、ベルトルドの秘書官リュリュによって列は分断された。
最後の一人の書類にサインをしたあと、ちょうど大将たちが部屋に入ってきた。
小休止をとる暇もなくなので、ベルトルドは拗ねた表情で肩で息をついた。
「お疲れベル。もうちょっと我慢なさい」
「おう」
リュリュが温かい紅茶を淹れてくれて、一口サイズのチョコレート菓子の皿も出してくれた。
ベルトルドはチョコレート菓子を口に放り込み、もぐもぐと口を動かしている頃には、8人の大将とブルーベル将軍、各将たちの副官が揃っていた。
口の中のチョコレートを紅茶で流し込みながら、ベルトルドは室内に集った人々を眺めうんざりした。
(華も色気もないオッサンばっかりの中で、頑張って政務をこなしているというのに、気のきかない連中で嫌ンなる。ばびゅっと帰ってリッキーの傍にいてやりたい)
遺跡での一件の後、アルカネットに全て任せてしまった。一緒に飛んで帰りたかったが、大事な個人的都合により、そうできなかったのだ。せめて念話でも送ろうと思っているが、仕事が山積しすぎて余裕がなく、その日の職務を終わらせるとコテンと眠りについてしまう。
日毎にキュッリッキへの心配はつのり、会えない苦しみが苛む。
(早く会って抱きしめてやりたい。頬ずりしたい。撫で撫でしたい。キスもしたい。押し倒したい。そして)
「はーーい、妄想そこまでっ」
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