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『魔女の呪い』編
19話:”原初の大魔女”
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お昼ちょっと前に『癒しの森』を出発して現地に着くと、ロッティとモンクリーフは海水浴に行ってしまった。残されたレオンとフィンリー、そしてメイブは予定通り『フェニックスの羽根』探しに出た。
火山と同様、歩いてしらみつぶしに探すしかない。モンクリーフの状態から、精霊を召喚しての捜索は難しい。己の目で見て足で探すしかない。
「ブルーリーフ島はリゾート地として有名なところだ。こんなに人が多くいるのに、フェニックスは立ち寄るのだろうか?」
レオンは肩をすくめながら周囲を眺め渡した。海水浴客でビーチは溢れている。
葉っぱのような形をしていることから、ブルーリーフ島と呼ばれている。島は大きく、周囲をサンゴ礁に囲まれていて景観が美しい。
臨む海面はエメラルドグリーンに煌めき、沖は深い青色をしていた。
「まあでも、南国ってフェニックスも来そうじゃないっすかイメージ的に。人多いし、情報集まりそうっすよね。誰か羽根を拾ってるかも?」
陽光に照らされた真っ白な砂浜が眩しく、青い瞳のフィンリーは目を細めた。翡翠色の瞳のレオンも眩しいようだ。
島の中央部分は森林になっていて、森林の一部から砂浜にかけて宿屋や色々な店が建っている。探すところは限られていて、ブルーリーフ島に隣接する無人島などのほうが可能性は高そうだ。
3人は海水浴客たちから離れるように、ひとけのない方角まで歩を進める。そしてあるものを見つけて足を止めた。
ビーチには不釣り合いな、豪奢な一人用ソファがぽつんと置かれている。どう解釈しても、家屋の中で使用するものだろう。違和感しかない。
レオンたちに背を向けているので、3人は恐る恐る回り込んでみた。
ソファに座っていたのは、モンクリーフと同い年くらいの少女。
「あの、失礼しますお嬢さん、お訊ねしたいことがあるのですが、今よろしいでしょうか?」
ややためらいがちにレオンが声をかけると、少女はジュースを啜りながら「ちらり」とレオンを見る。そしてメイブとフィンリーを見て、
「あ、メイブだ」
そうぼんやりとした声で呟いた。
「ぴよ?」
名前を言い当てられて、メイブは不思議そうに少女の顔を見つめる。そして一瞬で仰天し、フィンリーの肩から飛び上がった。
「ぴよおおおおおおおおおおおお!!」
訳:[ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐグリゼルダ様!!]
可愛い絶叫がビーチに木霊する。
「こんなところで何をしているのメイブ?人間のイケメンを2人も従えているなんて、両手に花とは、あなたも成長したわね」
「ぴよぴよぴよっ」
訳:[いやいやいやいやそういうのではナイのですグリゼルダ様っ!]
大量の汗を飛ばしながらメイブは言い訳をする。
あまりの激しい動揺っぷりに、フィンリーは目を丸くしてメイブを見つめた。レオンも押し黙る。
「照れてるところが怪しさ大爆発ね。隅に置けないわ」
少女――グリゼルダは肘掛にもたれて、くすくすと笑う。しかしどう見ても、メイブのは照れではなくテンパりだ。
「あなたがいるということは、ロッティも来ているのかしら?」
「ぴよ、ぴよ」
訳:[はい、はい]
「呼んでちょうだい、久しぶりに会いたいわ」
「ぴよ!」
暫くすると、遠くから砂煙をあげて、ロッティとモンクリーフが猛ダッシュしてきた。そしてグリゼルダの前に跪く。
「お久しぶりでございます、グリゼルダ様」
「初めてお目にかかります!モンクリーフ・アキピテルと申します、”原初の大魔女”様」
水着姿でこうべを垂れる2人を見て、グリゼルダは嬉しそうに微笑む。
「元気そうねロッティ。そしてあなたが”霊剣の魔女”モンクリーフね。一番若い魔女、会えてうれしいわ」
「光栄でございます!」
感極まったようにモンクリーフは更に頭を下げた。
「2人ともバカンスに来たのね?メイブが人間のイケメンを2人も従えているから、ビックリしていたのよ」
肩にかかる長い金髪を払いのけ、グリゼルダはメイブを見る。メイブは否定するように、首を左右にぶんぶん振った。
「い…いえ…実は『フェニックスの羽根』を探しに参っているのです。ついでにちょっと息抜き程度の海水浴を…」
ロッティは頭を上げてグリゼルダを見上げた。
「フェニックスの?あらあら、また面倒なものを探しているのね」
顔の輪郭をなぞる様に繊細な指を動かし、グリゼルダは透き通るような水色の瞳をきょろきょろとさせた。
「情報屋スピオンから、フェニックスの目撃ポイントの一つに、ここ、ブルーリーフ島を教えられたのです」
「あの”がめつい”コマドリも息災なようね。――フェニックス自体はもう見つけることはできないから、羽根の捜索に全力したほうがいいかもしれないわね」
「見つけられない?」
ロッティは怪訝そうに眉間に力を込める。
「フェニックスはね、狭間を飛ぶ鳥になったのよ」
「狭間?」
「そう。私たちの居るこの世界に、隣接しているいくつもの別世界。世界と世界の狭間。フェニックスはその狭間を飛び回っているの」
愛らしい仕草でグリゼルダは締めくくる。
一瞬静まり返り、潮騒の音が耳に流れて行った。
「はああああああああああああ!?」
静寂を破ってロッティが絶叫を上げた。
火山と同様、歩いてしらみつぶしに探すしかない。モンクリーフの状態から、精霊を召喚しての捜索は難しい。己の目で見て足で探すしかない。
「ブルーリーフ島はリゾート地として有名なところだ。こんなに人が多くいるのに、フェニックスは立ち寄るのだろうか?」
レオンは肩をすくめながら周囲を眺め渡した。海水浴客でビーチは溢れている。
葉っぱのような形をしていることから、ブルーリーフ島と呼ばれている。島は大きく、周囲をサンゴ礁に囲まれていて景観が美しい。
臨む海面はエメラルドグリーンに煌めき、沖は深い青色をしていた。
「まあでも、南国ってフェニックスも来そうじゃないっすかイメージ的に。人多いし、情報集まりそうっすよね。誰か羽根を拾ってるかも?」
陽光に照らされた真っ白な砂浜が眩しく、青い瞳のフィンリーは目を細めた。翡翠色の瞳のレオンも眩しいようだ。
島の中央部分は森林になっていて、森林の一部から砂浜にかけて宿屋や色々な店が建っている。探すところは限られていて、ブルーリーフ島に隣接する無人島などのほうが可能性は高そうだ。
3人は海水浴客たちから離れるように、ひとけのない方角まで歩を進める。そしてあるものを見つけて足を止めた。
ビーチには不釣り合いな、豪奢な一人用ソファがぽつんと置かれている。どう解釈しても、家屋の中で使用するものだろう。違和感しかない。
レオンたちに背を向けているので、3人は恐る恐る回り込んでみた。
ソファに座っていたのは、モンクリーフと同い年くらいの少女。
「あの、失礼しますお嬢さん、お訊ねしたいことがあるのですが、今よろしいでしょうか?」
ややためらいがちにレオンが声をかけると、少女はジュースを啜りながら「ちらり」とレオンを見る。そしてメイブとフィンリーを見て、
「あ、メイブだ」
そうぼんやりとした声で呟いた。
「ぴよ?」
名前を言い当てられて、メイブは不思議そうに少女の顔を見つめる。そして一瞬で仰天し、フィンリーの肩から飛び上がった。
「ぴよおおおおおおおおおおおお!!」
訳:[ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐグリゼルダ様!!]
可愛い絶叫がビーチに木霊する。
「こんなところで何をしているのメイブ?人間のイケメンを2人も従えているなんて、両手に花とは、あなたも成長したわね」
「ぴよぴよぴよっ」
訳:[いやいやいやいやそういうのではナイのですグリゼルダ様っ!]
大量の汗を飛ばしながらメイブは言い訳をする。
あまりの激しい動揺っぷりに、フィンリーは目を丸くしてメイブを見つめた。レオンも押し黙る。
「照れてるところが怪しさ大爆発ね。隅に置けないわ」
少女――グリゼルダは肘掛にもたれて、くすくすと笑う。しかしどう見ても、メイブのは照れではなくテンパりだ。
「あなたがいるということは、ロッティも来ているのかしら?」
「ぴよ、ぴよ」
訳:[はい、はい]
「呼んでちょうだい、久しぶりに会いたいわ」
「ぴよ!」
暫くすると、遠くから砂煙をあげて、ロッティとモンクリーフが猛ダッシュしてきた。そしてグリゼルダの前に跪く。
「お久しぶりでございます、グリゼルダ様」
「初めてお目にかかります!モンクリーフ・アキピテルと申します、”原初の大魔女”様」
水着姿でこうべを垂れる2人を見て、グリゼルダは嬉しそうに微笑む。
「元気そうねロッティ。そしてあなたが”霊剣の魔女”モンクリーフね。一番若い魔女、会えてうれしいわ」
「光栄でございます!」
感極まったようにモンクリーフは更に頭を下げた。
「2人ともバカンスに来たのね?メイブが人間のイケメンを2人も従えているから、ビックリしていたのよ」
肩にかかる長い金髪を払いのけ、グリゼルダはメイブを見る。メイブは否定するように、首を左右にぶんぶん振った。
「い…いえ…実は『フェニックスの羽根』を探しに参っているのです。ついでにちょっと息抜き程度の海水浴を…」
ロッティは頭を上げてグリゼルダを見上げた。
「フェニックスの?あらあら、また面倒なものを探しているのね」
顔の輪郭をなぞる様に繊細な指を動かし、グリゼルダは透き通るような水色の瞳をきょろきょろとさせた。
「情報屋スピオンから、フェニックスの目撃ポイントの一つに、ここ、ブルーリーフ島を教えられたのです」
「あの”がめつい”コマドリも息災なようね。――フェニックス自体はもう見つけることはできないから、羽根の捜索に全力したほうがいいかもしれないわね」
「見つけられない?」
ロッティは怪訝そうに眉間に力を込める。
「フェニックスはね、狭間を飛ぶ鳥になったのよ」
「狭間?」
「そう。私たちの居るこの世界に、隣接しているいくつもの別世界。世界と世界の狭間。フェニックスはその狭間を飛び回っているの」
愛らしい仕草でグリゼルダは締めくくる。
一瞬静まり返り、潮騒の音が耳に流れて行った。
「はああああああああああああ!?」
静寂を破ってロッティが絶叫を上げた。
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