心の癒し手メイブ

ユズキ

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『魔女の呪い』編

12話:レッドホット火山現着、ひと騒動

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 モンクリーフの移動魔法でレッドホット火山に到着する。しかし…

「うわわわわわわあっつ!」
「ぴよよよおお!」
訳:[焼き鳥になってしまうのですよ!]

 フィンリーとメイブは大声で喚く。

「ここは噴火口の…」
「あんた、凄い場所に飛んだわね…」

 レオンとロッティは努めて冷静さを装うが、思いっきり顔が引きつっていた。

「あはは…」

 生唾を飲み込みながら、モンクリーフは冷や汗を垂らす。
 噴火口の中の足場が狭い岩壁の出っ張りに、一同はすれすれに立っていた。
 かなり際どい位置で、ググッと足を延ばせばつま先が溶岩に届く。溶岩は赤色や黒色にうねりながら、その熱を強調するように赤やオレンジ色の炎を噴き出している。うっかり足を滑らせ落ちたら、ひとたまりもない状況だ。

「来たことない場所に移動魔法使うのって、アタシ苦手なのよね…」

 申し訳なさそうに、タクトのような杖で顔を隠す。
 赤々とした炎と強烈な熱気が、ゴウゴウ押し上がってくる。全身をマグマ色に照らされて、モンクリーフは冷や汗と汗を大量に流した。

「基本中の基本魔法でしょ!練習しときなさい!」
「ふぁあい…」

 マグマのような怒気をロッティから感じて、モンクリーフは肩をすぼめた。下手したら噴火口のど真ん中に到着して、即お陀仏コースもあり得たのだ。

「ロッティちゃん、ここから早く出よう…熱すぎる」
「そうしましょう…眩暈がしてくるわ……あっ」
「危ない!」

 フラッと倒れそうになるロッティを、レオンが慌てて抱き留めた。

「ぴよお!」
訳:[ご主人様!]

 メイブは慌ててロッティの肩に移動して、朦朧とした表情をするロッティの顔を覗き込んだ。

「ぴよ、ぴよ、ぴよ」
訳:[ご主人様、ご主人様、ご主人様]
「大丈夫よメイブ、驚かせてごめんね。ちょっと熱すぎて眩暈がしちゃったダケよ」
「ぴよお…」

 メイブは心配で心配で、涙ぐみながらロッティの顔にすり寄った。ロッティはメイブを安心させるために、小さな身体を優しくポンポンっと叩く。

「”癒しの魔女”殿、失礼しますね」

 そう言ってレオンは、ロッティの身体を軽々抱き上げた。

「熱気が凄いので、また眩暈が起きたら大変です。ご容赦を」
「え…ええ…、ありがとう…」

 ロッティは身を固くして、顔をマグマのように真っ赤にした。そして我知らず、胸のあたりをギュっと鷲掴みする。

「ぴよぴよ」
訳:[早くここから出ましょう]

 メイブはロッティの肩から飛び立つと、みんなの頭上を囀りながら旋回した。すると、光の粒子がみんなを包み込み、フワッと浮くと、ゆっくりと上昇した。

「おお!メイブたんエクセレント!」
「ぴよぴーよっ!」
訳:[ふふり、この程度の浮遊魔法、ちょろいのですよ]

 賞賛するフィンリーにメイブはドヤ顔で胸を張った。
 噴火口から脱出すると、メイブは平らな地表にみんなを降ろした。

「メイブたんありがとう!涼しいぃい」
「ぴよ」
「ふ、ふんっ!使い魔の癖にナマイキ」
「ぴよぴよぴよ!」
訳:[おだまり小娘!]

 不貞腐れているモンクリーフの顔面に、メイブは正義の蹴りを見舞う。

「なにすんのよ!焼き鳥にするわよ!」

 モンクリーフはメイブの首の辺りを掴んで、グルグルと振り回した。

「ぴよぴよぴよ!」
訳:[目が回るのです!お放し小娘!]
「俺のレディに何をするっ!」
「よさないか3人とも!」

 エキサイトしだしたモンクリーフ、メイブ、フィンリーに、レオンは慌てて怒鳴った。



「喧嘩をしに来たわけじゃないんだぞ。『フェニックスの羽根』を早急に見つけ出さなくてはならない。皆無事だったのだから、つまらないことをいちいち蒸し返すな。気を引き締めろ3人とも」

 ロッティを岩の上に座らせた後、レオンは腕組みをして3人を叱る。
 普段口数が少なく物静かなだけに、説教モードになると迫力が倍増しになる。モンクリーフ、メイブ、フィンリーは、恐れて「はい…」と力なく返事をした。
 反省した様子の3人を見て、レオンは無言のロッティを振り向いた。

「さて、”癒しの魔女”殿、『フェニックスの羽根』はどう探すのですか?」
「え…えっと…、『フェニックスの羽根』は探索魔法で引っかからないのね。なので、足を使って探すしかないわ」

 急に話題を振られて、ロッティは慌てて答える。

「なるほど。では『フェニックスの羽根』はどういった見た目をしていますか?」
「カラスの羽根くらいの大きさで、赤や金色の揺らめくような炎をまとっているの。煌めいているからすぐ判ると思う。レオンとフィンリーには、写真を渡しておくわね」

 巾着袋の中から写真を2枚出すと、レオンとフィンリーに手渡す。

「キレイだねえ。これなら、暗がりでも目立っていいね」
「うん。あったらすぐ判るから」
「じゃあ、手分けして探しましょう。おねーさまとレオン卿、アタシ、フィンリー、で良いわね?」
「俺、メイブたんと一緒が良いなあ」

 フィンリーはおねだりする視線をメイブに向ける。

「ぴ…ぴよ…」
訳:[わ…わたくしめは、ご主人様と一緒が…]
「メイブたん」

 フィンリーはメイブを掌の上に載せ、小さな頭に真剣な顔を近づける。

「ここは、大事なご主人様のために、レオン団長と2人っきりの時間を作ってあげるのが、使い魔として思いやりと親切だと俺は思うんだ」
「ぴよ!?」
訳:[気づいていたのですか!?]
「あったりまえだよ。あんなに素直に顔と態度に出てるんだから、判らないほうがオカシイ」
「ぴよぴよ…」
訳:[ご主人様は、恋愛ごとはまだまだ初級レベルなのですよ…]

 今もまだ動揺した様子のロッティを見て、メイブは声を震わせた。

「魔法サポートも受けられるし、フィンリー卿は焼き鳥と一緒でいっか」
「おしゃ」
「ぴよぴよ!」
訳:[誰が焼き鳥ですか無礼者!]

 メイブは翼をバタつかせて抗議した。当然モンクリーフは舌を出してスルーする。

「集合場所はココで、2時間くらいしたら一度ここに集まりましょう」
「らじゃり」
「はい」
「判ったわ」
「ぴよ」
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