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『魔女の呪い』編
4話:”霊剣の魔女”
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慌ただしく支度が済むと、ロッティの移動用魔法陣が発動して、3人は瞬時にメルボーン王国の王都リベロウェルに飛んだ。
3人の足元に大きく展開していた魔法陣は、光を弱めながら収縮して消えた。
キョロキョロと辺りを見回し、レオンは何度も目を瞬く。
「『癒しの森』へ飛ばされた時も驚きましたが、一瞬で着いてしまうなんて。魔法とは便利で凄いものですね」
「ぴよぴよぴ~よ」
訳:[移動用魔法陣の操作は、魔女にとって基本魔法の一つなのですよ]
レオンの感想を受けてメイブが魔女知識を披露するが、生憎レオンには「ぴよぴよ」としか聞こえていないので意味は伝わっていない。
「これが、王城フラワータワーね」
「はい」
エンピツをいくつも立てたような王城は、赤いトンガリ屋根と白い壁が美しく、城の周りには多くのバラの花が咲き乱れていた。
王城に渡るための石橋に足を踏み出した時、ロッティとメイブは〈領域〉の存在に気づいた。
「これは…、モンクリーフの張った〈領域〉」
「ぴよ」
訳:[あの小娘の]
「危ない!」
突然レオンが叫び、ロッティを後ろに突き飛ばした。そして背負っていた大剣を素早く抜いて、何もない前方を左右に薙ぎ払う。
キン!キン!キン!キンッ!
金属がぶつかり弾く音がして、数本の短剣がバラバラと石橋の上に落ちた。城の方角から飛んできたようだが、短剣を投げてきた相手は見えない。
次の攻撃がこないことを確認して、レオンは大剣を構えたまま慌てて振り返った。
「お怪我は!?」
突き飛ばされて尻もちをついていたロッティは、呆気にとられた顔で、レオンの足元に落ちている短剣を見つめた。短剣から魔力が滲みだしている。
「…あの短剣は…」
そう呟くと、愛らしい顔を怒りの色に染め上げて、ロッティはゆっくりと立ち上がる。そして、城へ向かって大声を張り上げた。
「出てきなさい、モンクリーフ!」
辺りにロッティの大声がこだまする。
暫くして、城の方からピンク色の派手なドレスを纏った少女が、軽やかな足取りで駆けてきた。少女の身体の周りには、何やら物騒な短剣が複数本浮いている。レオンが叩き落した短剣と同じものだ。
「はーい!お久しぶりね、おねーさま!」
「ぴよおお!」
訳:[危ないじゃないのお転婆小娘!]
レオンの肩の上でメイブはぴよぴよと怒鳴った。
こめかみに青筋を浮き上がらせたロッティは思いっきりジャンプすると、目の前に立った派手な少女――”霊剣の魔女”モンクリーフ・アキピテルに、勢いよくグーで頭をポカッと殴る。
「いやん、何するのおねーさまっ」
「危ないじゃないのおバカ!こんなところに〈領域〉敷くんじゃないわよ!レオンがいなかったら私とメイブは串刺しの大怪我してたじゃないの!」
肩を喘がせたロッティのお怒りの剣幕に、モンクリーフはタジっと後退る。
「だ、だってぇ、こないだ”曲解の魔女”が襲来したじゃない、危ないから予防線の〈領域〉敷いておいたの。――ちなみに魔女が踏み込むと、自動的にアタシの短剣が攻撃仕掛けちゃうのよ」
人差し指を立て可愛い仕草でモンクリーフは言うが、ロッティの目つきはとっても冷めたものだった。
「はぁ。この程度の自動防衛〈領域〉、コンセプシオン相手じゃゴミ同然ね」
「ひっどおい!」
ビシッと指をモンクリーフに突き付ける。
「それにあんた何時からメルボーン王国に寄生してたのよ!ずっとフラフラして定着しないもんだから、連絡付けるのも大変だしで!『魔女の回覧板』で報せてきなさいよねもう!」
「ごっめーん。おねーさまのこと、すっかり忘れちゃってて。『魔女の回覧板』に情報出すのもすっかり…てへっ」
「この小娘…」
ぷち怒なロッティは、握り拳をワナワナ震わせた。
(国を持たない魔女にとって『魔女の回覧板』は大切な連絡手段!それを軽んじ、あまつさえ相変わらず礼儀がなってないのです!年長者を敬うのですよ!)
レオンの肩の上にとまり、メイブはモンクリーフをぷんぷん睨みつける。
まったく悪びれた様子もなく、悪戯っ子な笑みを浮かべていたモンクリーフは、レオンに向き直って右手を差し出した。
「怪我も治ってる、ちゃんと『癒しの森』へ入れてもらえたみたいね。おねーさまを連れてきてくれてありがとう、レオン卿」
差し出された手を握り返し、レオンは苦笑を浮かべた。
「いえ、”癒しの魔女”殿には命を助けていただきました。そして事情を話し、すぐに決断もして下さいました」
「さすがは、おねーさまネ」
「癒しを必要としている人がいるなら、当然のことよ」
両手を腰に当て、ロッティは「はぁ…」と疲れたようにため息をついた。
「ところで”霊剣の魔女”殿」
「なあに?」
「どう見ても、あなたのほうが年上に見えるのですが…?」
レオン視点だとロッティは10歳くらい、モンクリーフは16歳くらい。2人を交互に見て、レオンは首を傾げた。
「ああ、それはね――」
ドカッ!
「ぎゃんっ」
ロッティに脛を蹴られて、モンクリーフは盛大に顔をしかめた。
「痛いわっ、おねーさまあ…。相変わらず手足が出るのが、素早いんだからもう」
「さっさと王女様のところへ案内しなさい!」
「はーい。では、改めてようこそフラワータワーへ。歓迎しますわ、”癒しの魔女”ロッティ・リントン様」
芝居がかった仕草で、モンクリーフはロッティに恭しく一礼した。
モンクリーフに案内されて城へ歩いていくロッティ。2人の後ろ姿を見て、レオンは小さく首をかしげたが、何も言わず後に続いた。
「ぴよぴよぴよ!」
訳:[無視するな!なのです!わたくしめもおりますのよ!]
3人の足元に大きく展開していた魔法陣は、光を弱めながら収縮して消えた。
キョロキョロと辺りを見回し、レオンは何度も目を瞬く。
「『癒しの森』へ飛ばされた時も驚きましたが、一瞬で着いてしまうなんて。魔法とは便利で凄いものですね」
「ぴよぴよぴ~よ」
訳:[移動用魔法陣の操作は、魔女にとって基本魔法の一つなのですよ]
レオンの感想を受けてメイブが魔女知識を披露するが、生憎レオンには「ぴよぴよ」としか聞こえていないので意味は伝わっていない。
「これが、王城フラワータワーね」
「はい」
エンピツをいくつも立てたような王城は、赤いトンガリ屋根と白い壁が美しく、城の周りには多くのバラの花が咲き乱れていた。
王城に渡るための石橋に足を踏み出した時、ロッティとメイブは〈領域〉の存在に気づいた。
「これは…、モンクリーフの張った〈領域〉」
「ぴよ」
訳:[あの小娘の]
「危ない!」
突然レオンが叫び、ロッティを後ろに突き飛ばした。そして背負っていた大剣を素早く抜いて、何もない前方を左右に薙ぎ払う。
キン!キン!キン!キンッ!
金属がぶつかり弾く音がして、数本の短剣がバラバラと石橋の上に落ちた。城の方角から飛んできたようだが、短剣を投げてきた相手は見えない。
次の攻撃がこないことを確認して、レオンは大剣を構えたまま慌てて振り返った。
「お怪我は!?」
突き飛ばされて尻もちをついていたロッティは、呆気にとられた顔で、レオンの足元に落ちている短剣を見つめた。短剣から魔力が滲みだしている。
「…あの短剣は…」
そう呟くと、愛らしい顔を怒りの色に染め上げて、ロッティはゆっくりと立ち上がる。そして、城へ向かって大声を張り上げた。
「出てきなさい、モンクリーフ!」
辺りにロッティの大声がこだまする。
暫くして、城の方からピンク色の派手なドレスを纏った少女が、軽やかな足取りで駆けてきた。少女の身体の周りには、何やら物騒な短剣が複数本浮いている。レオンが叩き落した短剣と同じものだ。
「はーい!お久しぶりね、おねーさま!」
「ぴよおお!」
訳:[危ないじゃないのお転婆小娘!]
レオンの肩の上でメイブはぴよぴよと怒鳴った。
こめかみに青筋を浮き上がらせたロッティは思いっきりジャンプすると、目の前に立った派手な少女――”霊剣の魔女”モンクリーフ・アキピテルに、勢いよくグーで頭をポカッと殴る。
「いやん、何するのおねーさまっ」
「危ないじゃないのおバカ!こんなところに〈領域〉敷くんじゃないわよ!レオンがいなかったら私とメイブは串刺しの大怪我してたじゃないの!」
肩を喘がせたロッティのお怒りの剣幕に、モンクリーフはタジっと後退る。
「だ、だってぇ、こないだ”曲解の魔女”が襲来したじゃない、危ないから予防線の〈領域〉敷いておいたの。――ちなみに魔女が踏み込むと、自動的にアタシの短剣が攻撃仕掛けちゃうのよ」
人差し指を立て可愛い仕草でモンクリーフは言うが、ロッティの目つきはとっても冷めたものだった。
「はぁ。この程度の自動防衛〈領域〉、コンセプシオン相手じゃゴミ同然ね」
「ひっどおい!」
ビシッと指をモンクリーフに突き付ける。
「それにあんた何時からメルボーン王国に寄生してたのよ!ずっとフラフラして定着しないもんだから、連絡付けるのも大変だしで!『魔女の回覧板』で報せてきなさいよねもう!」
「ごっめーん。おねーさまのこと、すっかり忘れちゃってて。『魔女の回覧板』に情報出すのもすっかり…てへっ」
「この小娘…」
ぷち怒なロッティは、握り拳をワナワナ震わせた。
(国を持たない魔女にとって『魔女の回覧板』は大切な連絡手段!それを軽んじ、あまつさえ相変わらず礼儀がなってないのです!年長者を敬うのですよ!)
レオンの肩の上にとまり、メイブはモンクリーフをぷんぷん睨みつける。
まったく悪びれた様子もなく、悪戯っ子な笑みを浮かべていたモンクリーフは、レオンに向き直って右手を差し出した。
「怪我も治ってる、ちゃんと『癒しの森』へ入れてもらえたみたいね。おねーさまを連れてきてくれてありがとう、レオン卿」
差し出された手を握り返し、レオンは苦笑を浮かべた。
「いえ、”癒しの魔女”殿には命を助けていただきました。そして事情を話し、すぐに決断もして下さいました」
「さすがは、おねーさまネ」
「癒しを必要としている人がいるなら、当然のことよ」
両手を腰に当て、ロッティは「はぁ…」と疲れたようにため息をついた。
「ところで”霊剣の魔女”殿」
「なあに?」
「どう見ても、あなたのほうが年上に見えるのですが…?」
レオン視点だとロッティは10歳くらい、モンクリーフは16歳くらい。2人を交互に見て、レオンは首を傾げた。
「ああ、それはね――」
ドカッ!
「ぎゃんっ」
ロッティに脛を蹴られて、モンクリーフは盛大に顔をしかめた。
「痛いわっ、おねーさまあ…。相変わらず手足が出るのが、素早いんだからもう」
「さっさと王女様のところへ案内しなさい!」
「はーい。では、改めてようこそフラワータワーへ。歓迎しますわ、”癒しの魔女”ロッティ・リントン様」
芝居がかった仕草で、モンクリーフはロッティに恭しく一礼した。
モンクリーフに案内されて城へ歩いていくロッティ。2人の後ろ姿を見て、レオンは小さく首をかしげたが、何も言わず後に続いた。
「ぴよぴよぴよ!」
訳:[無視するな!なのです!わたくしめもおりますのよ!]
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