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第2章

トゥーア領 領主の城

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「お父様、レスティーナです」
 こんこんこん、と軽く扉を叩く。かちゃりと、ノブが回り扉が開かれる。
 開けたのはお父様専属の執事のセヴェーロだ。古参の執事でお父様とは、乳兄弟らしい。砕けた会話や表情の二人を見たことがないので、本当に幼馴染みで乳兄弟なの? と私は思う訳である。


「お入り下さい、お嬢様」
 セヴェーロは無表情で、私を迎え入れる。室内に入ると、セヴェーロが扉を閉める。促す様に手を少し上げて、告げてくる。
「…………」
「奥で旦那様がお待ちです」
 表情が死滅しているのか、本当にニコリともしないセヴェーロ。使用人の間でついた渾名は、鉄仮面執事である。口調に淡々としているから余計に、相乗効果を生み出す。
 この執事のご機嫌が解るのは、お父様くらいだろう。

 前を向き、私は部屋の奥へと進む。ソファと暖炉を通り過ぎて行く。両サイドには本棚がある。資料やら色々の物が、整頓されて入れられている。執務室とは言えど広々とした空間で、基本どこの部屋も同等の広さである。日本家屋でもどこぞの旧家かセレブレベルの広さだ。時折、庶民の時の記憶と比べてしまい、無駄に広いなぁと思う事がある。

 最奥の壁際の執務机で、カリカリと書き物をしているお父様がいる。

「お父様」
 私が声を掛けると、お父様はすっと顔を上げた。持っていたペンをペン立てに置く。
「レスティーナ、学園から連絡が来た」
「学園からですか?」
「ああ、二月後に試験があるそうだ。年に一度の飛び級検定も兼ねているとのことだ」
「飛び級と言うことは、卒業も可能ということですか?」
「そうだ。あの学園では専門的な分野は学び難いからな。卒業をしてしまいたいなら受けなさい」
「分かりました」
「レスティーナの選択を支持するから、安心してやりたいことに取り組みなさい」
 ふっと笑ってお父様は、私にそう言ったのだった。

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