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第2章
【第二章】プロローグ~帰還~
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その日の夕食後に、私は寮監から呼び出された。
何となく来るかなぁ? とは思ってたけど、結構早かった。まさか、騒動当日に魔法便を使ってくるとはね。
そして、今、私の手の中にはトゥーア公爵家からの手紙。封蝋は、公爵家紋章。机の上にあるペーパーナイフを手に取り、手紙の封印を解く。中から折り畳まれた紙を取り出す。
「……」
パラリと広ければ、流麗な文字が踊るのが目に飛び込んだ。
「ティーナ、何が書いてあるの?」
ひょいっと、アレクサンダーが覗き込んでくる。体勢は、部屋に戻った瞬間に後ろから抱き付かれた状態である。
さすがに食堂では、アレクサンダーは自重して、ちんまりしたバージョンにチェンジして、肩に乗ってたが、部屋に戻ったら即アダルトバージョンで、引っ付き虫に逆戻り。
今日は間違いなく、添い寝コースだろう。
「あーうん。一回、家に帰って来いって」
───────────────
私の愛する娘、レスティーナ。
聖癒神ケレス様から、御神託を受けて全てを教えて頂いた。
今後の事を訊きたいから、一度戻って来なさい。
学園の方には一緒に、休む旨を書いた手紙を送ってあるから、寮監に伝えるだけで取り計らってもらえる。
何時でも帰って来なさい。
レスティーナを愛する、父より。
────────────────
何とも簡潔な手紙である。
べたっとすり寄りながら、アレクサンダーは、私に問い掛ける。
「いつ、トゥーア領に戻る?」
「……そうねぇ、明日戻ろうかしら? 朝一でギルドに行って、転移陣を展開出来る人を募集しないとね」
とんとん、とアレクサンダーを宥める様に腕を叩きながら、私はそう答える。
ギルドはクエストを受けるだけではなく、依頼することも出来るのだ。で、今回は、トゥーア領の領主が住んでる街への転移依頼となる。
転移陣を持っている人が一番集まる場所は、冒険者ギルドになる。馬車で戻っても良いのだか、ぶっちゃけ一日では帰れない。旅費を考えてその半分位の依頼料金ですれば、小金稼ぎしたい人にとっては有り難いだろう。
「そうと決まれば、早目に就寝しないとね。お風呂に入って、今日の疲れを癒す事にするわ」
「え~~」
よしっそうしようと思う私に、アレクサンダーは不満な声を上げる。
「アレク、お風呂は、自重してよね?」
「……背中流しちゃダメ?」
「ダメ! 可愛いく言ってもダメよ!」
「むぅ」
「はいはい、手を離して」
「……」
恨みがましい雰囲気をびしばし出しながらも、アレクサンダーは手の力を抜いてだらんと落とす。
ーーーーあぁ、もう、捨て猫みたいな表情をしないでよね! そんなアレクも可愛いって思っちゃうじゃないの!
「はぁ、もぅ!」
溜め息を吐いてから、アレクサンダーを睨む。
「アレク、ちょっと屈んで」
私の要求にアレクサンダーは、無言で従ってすっと腰を落とす。目線か同じ高さになった。
「いい子にして、待っててね。アレクサンダー」
頭を撫でて、頬に私からキスを送る。
「はーい」
アレクサンダーは嬉しそうに微笑すると、顔を寄せて、チュッと私の頬にキスする。
「じゃあ、行ってくるね」
もう一度、アレクサンダーの頭を撫でくり回して、バスルームへと向かった。
「ぅーーん」
目が覚めて一番最初に感じたのは、何だか苦しくて身動きが物凄く取れなかった事だった。
「……むぅ」
接着剤でくっ付いたかの様な、目蓋を無理やりに開ける。カーテンから差し込む朝陽が眩しい。
「……うぅ」
何度が目をしばたかせて、どうにかこうにか目を開けると、飛び込んで来るのは神々しい輝きだった。
ーーーーめ、目が! 目がぁ!! いや、違う、鼻血がっ!!
心の中で某天空のお城に出てくる大佐の台詞と同じ台詞を吐きつつ、更に乙女としては鼻血はマズイだろうと我慢する。
朝陽に照らされて煌めくのは、アレクサンダーのシルバーブルーの髪。サラリと流れる様に、頬に落ちる髪も相まって芸術の様だ。
自分に絵画力が、あれば描くのに!
ーーーーあ、いや待て。描いたら誰かの目に触れる訳よね。そんなの嫌だ。アレクサンダーは……。
「私だけのものだもの」
口からするりと飛び出した言葉だった。
「うん、そうだね」
パチリと目を開けて、アレクサンダーがにこりと微笑む。
ーーーーぎゃあああああっ!! 聞かれてた! 見られてた!? そして、何故にキラキラ度マックスなのよー!
ビシリと、私はアレクサンダーの腕の中で固まる。私の葛藤など知らない彼は、ふわっと花開く様な、美しい笑顔を見せて言う。
「おはよう、レスティーナ」
「……お、はよ。アレク」
吃りながら、私は挨拶を交わした。
そんなある意味心臓に良くない、朝の一幕であった。
そして、朝食を食べてから、寮監に帰郷する事を伝え寮を出た。
私の服装は簡素なワンピースに、フード付きのマントで、腰には簡易空間(抱えられる位の段ボール二箱分の)収納巾着袋、靴は革製の旅装である。因みにアレクサンダーは、省エネバージョンでフードの中にいる。
でもって現在、街中の目的地にいる。
目の前には、冒険者ギルドの建物。流石、王都のギルド本部である。トゥーア領にあるギルドよりも、倍くらい大きく広い貫禄のある建物だ。また、王都の各ギルドの建物は、分かりやすくカラーリングされている。
冒険者ギルドは、白色。商人ギルドは、黄色。魔術師ギルドは、青色。
他の王都の建物のほとんどは茶色の煉瓦で作られているので、分かりやすい様になっている。
重要な場所は見た目でも判断出来るようにと、昔の王がそう定めたらしい。
冒険者ギルドの建物はざっと見て、窓が縦に3つ並んでいるので三階建ての様である。三角屋根とかでは無く、屋根に当たるであろう壁には不自然な柵のようなものが、ぐるっと一周している。多分屋上が存在しているのだろう。柵は転落防止用のものだろう。
ドアはクリーム色をしている。そのドアについている、焦げ茶色のドアノブを掴み、回して押し開けた。玄関ホールは広々としていて、両サイドの壁にはクエスト募集の依頼書が所狭しと貼ってある。
その真ん中の通路を突っ切って行く。玄関ホールの終わりの場所に、受付所がある。長机にギルド職員であろう、二人が座っている。机の上にチャコール色の木で出来た長方形の置物に、白字で【受付案内】と明記されている。
「あの、依頼をしたいのですが……」
私は受付の人に声を掛ける。
「依頼ですね。では、あちらの二つ目の入り口に入って下さい」
私から見て左側を指し示す。
「あちらですね。有り難う御座います」
お礼を言い、私は二つ目の扉の無いドアへと向う。オーバル形の入り口の頭上の所には2と記されている。
その中に入ると、大きな大人数用のテーブルと、小さな四人用のテーブルが2つある。奥には職員用の机と椅子がある。そこに居た一人が、こちらに気付きこっちに来る。
「ご依頼ですか?」
ここのギルドの制服だろうか、先程ほどの職員が着ている貫頭衣と同じ物をこの職員も着用している。
「はい。トゥーア領地の領主街プラータへの転移陣を一人分依頼したい」
「ご自身のみですか」
「はい。本日中にプラータへ行きたいのです。また、基本依頼価格はどのくらいでしょうか?」
「急募と言うことですか……では、通常で転移依頼した場合は、2000Gですから、急募ですから追加で1000プラスでいかがでしょう?」
「3000Gですか。それで、構いませんが受けてくれる方の当ては御座いますか?」
「現在、何人かの方に心当たりがありますので、通常のクエスト掲示板にも貼った上で、斡旋の方も行います。数刻後にはご返事が出来ると思います」
「では、それでお願いします」
「承りました。それでは、依頼書を作成しますので、そちらの小さいテーブルにお着き下さい」
「はい」
頷いて私は、職員の言う通りに席に着く。首に掛かっているギルドカードを出して、通常サイズに変化させて職員を待った。
ギルドカードの項目をお金の残金ページにする。クエストなどを全然していなかったから、商人ギルド達と開発した計量シリーズのマージンだけが、自動的に増えていたようである。ギルドカードって優れモノで、金銭を持ち歩かなくても、ある魔導具を使うと金銭の授受が出来るのである。スマホの電子マネー機能と同じと考えると簡単かな。
―――――――――――――
5853244 G
―――――――――――――
「お待たせしました」
職員が手にしているのは二枚の用紙と、四角い手の平大の透明な水晶の様な石で出来た魔導具である。これが、金銭の授受をするための物。
「こちらが依頼書兼契約書となります。最後に所にご自身のお名前をお書き下さい」
職員から万年筆のようなペンを差し出される。受け取って私は書類に目を通して、最後に私は自分の名前を記入し、用紙とペンを返す。因みに用紙の裏側には、魔方陣が描かれていて、これが、魔導具との連動の軸となる。
「では、前金で3000G頂きます。こちらの上にカードを乗せてください」
用紙の上に魔導具をコトリと乗せて、職員は魔導具の平面を指差す。
「はい」
私はギルドカードを透明な魔導具の上に乗せた。すると、用紙とカードがぽわっと光った。
「契約完了しました。ご確認ください」
―――――――――――――
5850244 G
―――――――――――――
職員が促す通りにギルドカードを手に持って、残金見ると確かに減っていた。
「確かに。では、よろしくお願いいたします」
「はい。お時間までどうされますか?」
「魔術師ギルドに用事がありますので、そちらにいってから戻ってくるつもりです」
「では、お待ちしております。戻って来られましたら4番の部屋に行って下さい」
「4番ですね、分かりました。では、失礼します」
ぺこりと頭を下げて暇を告げ、一旦冒険者ギルドを後にした。
その後、私は魔術師ギルドへ行く。目的は転移陣用の記録石。そこで、カッティング加工された記録石を10石購入。トゥーア領でブレスレットを飾る石にするので、同じ形と大きさのカッティング、全て色が違う石を選んだので、どかっと出費が出た。百万Gの出費は大きかった。
けれども、今後の事を考えるとあちこち行く可能性もあるから必要だろう。それに王都の魔術師ギルドの記録石のクオリティは最高級なので致し方ない。
その買った記録石の一つに王都の転移記録をしたのだった。
余った時間で王都のお土産を幾つか買うことも出来た。
そうして、予定通りに日が傾く前に、私は王都からトゥーア領に移動を完了したのだった。
何となく来るかなぁ? とは思ってたけど、結構早かった。まさか、騒動当日に魔法便を使ってくるとはね。
そして、今、私の手の中にはトゥーア公爵家からの手紙。封蝋は、公爵家紋章。机の上にあるペーパーナイフを手に取り、手紙の封印を解く。中から折り畳まれた紙を取り出す。
「……」
パラリと広ければ、流麗な文字が踊るのが目に飛び込んだ。
「ティーナ、何が書いてあるの?」
ひょいっと、アレクサンダーが覗き込んでくる。体勢は、部屋に戻った瞬間に後ろから抱き付かれた状態である。
さすがに食堂では、アレクサンダーは自重して、ちんまりしたバージョンにチェンジして、肩に乗ってたが、部屋に戻ったら即アダルトバージョンで、引っ付き虫に逆戻り。
今日は間違いなく、添い寝コースだろう。
「あーうん。一回、家に帰って来いって」
───────────────
私の愛する娘、レスティーナ。
聖癒神ケレス様から、御神託を受けて全てを教えて頂いた。
今後の事を訊きたいから、一度戻って来なさい。
学園の方には一緒に、休む旨を書いた手紙を送ってあるから、寮監に伝えるだけで取り計らってもらえる。
何時でも帰って来なさい。
レスティーナを愛する、父より。
────────────────
何とも簡潔な手紙である。
べたっとすり寄りながら、アレクサンダーは、私に問い掛ける。
「いつ、トゥーア領に戻る?」
「……そうねぇ、明日戻ろうかしら? 朝一でギルドに行って、転移陣を展開出来る人を募集しないとね」
とんとん、とアレクサンダーを宥める様に腕を叩きながら、私はそう答える。
ギルドはクエストを受けるだけではなく、依頼することも出来るのだ。で、今回は、トゥーア領の領主が住んでる街への転移依頼となる。
転移陣を持っている人が一番集まる場所は、冒険者ギルドになる。馬車で戻っても良いのだか、ぶっちゃけ一日では帰れない。旅費を考えてその半分位の依頼料金ですれば、小金稼ぎしたい人にとっては有り難いだろう。
「そうと決まれば、早目に就寝しないとね。お風呂に入って、今日の疲れを癒す事にするわ」
「え~~」
よしっそうしようと思う私に、アレクサンダーは不満な声を上げる。
「アレク、お風呂は、自重してよね?」
「……背中流しちゃダメ?」
「ダメ! 可愛いく言ってもダメよ!」
「むぅ」
「はいはい、手を離して」
「……」
恨みがましい雰囲気をびしばし出しながらも、アレクサンダーは手の力を抜いてだらんと落とす。
ーーーーあぁ、もう、捨て猫みたいな表情をしないでよね! そんなアレクも可愛いって思っちゃうじゃないの!
「はぁ、もぅ!」
溜め息を吐いてから、アレクサンダーを睨む。
「アレク、ちょっと屈んで」
私の要求にアレクサンダーは、無言で従ってすっと腰を落とす。目線か同じ高さになった。
「いい子にして、待っててね。アレクサンダー」
頭を撫でて、頬に私からキスを送る。
「はーい」
アレクサンダーは嬉しそうに微笑すると、顔を寄せて、チュッと私の頬にキスする。
「じゃあ、行ってくるね」
もう一度、アレクサンダーの頭を撫でくり回して、バスルームへと向かった。
「ぅーーん」
目が覚めて一番最初に感じたのは、何だか苦しくて身動きが物凄く取れなかった事だった。
「……むぅ」
接着剤でくっ付いたかの様な、目蓋を無理やりに開ける。カーテンから差し込む朝陽が眩しい。
「……うぅ」
何度が目をしばたかせて、どうにかこうにか目を開けると、飛び込んで来るのは神々しい輝きだった。
ーーーーめ、目が! 目がぁ!! いや、違う、鼻血がっ!!
心の中で某天空のお城に出てくる大佐の台詞と同じ台詞を吐きつつ、更に乙女としては鼻血はマズイだろうと我慢する。
朝陽に照らされて煌めくのは、アレクサンダーのシルバーブルーの髪。サラリと流れる様に、頬に落ちる髪も相まって芸術の様だ。
自分に絵画力が、あれば描くのに!
ーーーーあ、いや待て。描いたら誰かの目に触れる訳よね。そんなの嫌だ。アレクサンダーは……。
「私だけのものだもの」
口からするりと飛び出した言葉だった。
「うん、そうだね」
パチリと目を開けて、アレクサンダーがにこりと微笑む。
ーーーーぎゃあああああっ!! 聞かれてた! 見られてた!? そして、何故にキラキラ度マックスなのよー!
ビシリと、私はアレクサンダーの腕の中で固まる。私の葛藤など知らない彼は、ふわっと花開く様な、美しい笑顔を見せて言う。
「おはよう、レスティーナ」
「……お、はよ。アレク」
吃りながら、私は挨拶を交わした。
そんなある意味心臓に良くない、朝の一幕であった。
そして、朝食を食べてから、寮監に帰郷する事を伝え寮を出た。
私の服装は簡素なワンピースに、フード付きのマントで、腰には簡易空間(抱えられる位の段ボール二箱分の)収納巾着袋、靴は革製の旅装である。因みにアレクサンダーは、省エネバージョンでフードの中にいる。
でもって現在、街中の目的地にいる。
目の前には、冒険者ギルドの建物。流石、王都のギルド本部である。トゥーア領にあるギルドよりも、倍くらい大きく広い貫禄のある建物だ。また、王都の各ギルドの建物は、分かりやすくカラーリングされている。
冒険者ギルドは、白色。商人ギルドは、黄色。魔術師ギルドは、青色。
他の王都の建物のほとんどは茶色の煉瓦で作られているので、分かりやすい様になっている。
重要な場所は見た目でも判断出来るようにと、昔の王がそう定めたらしい。
冒険者ギルドの建物はざっと見て、窓が縦に3つ並んでいるので三階建ての様である。三角屋根とかでは無く、屋根に当たるであろう壁には不自然な柵のようなものが、ぐるっと一周している。多分屋上が存在しているのだろう。柵は転落防止用のものだろう。
ドアはクリーム色をしている。そのドアについている、焦げ茶色のドアノブを掴み、回して押し開けた。玄関ホールは広々としていて、両サイドの壁にはクエスト募集の依頼書が所狭しと貼ってある。
その真ん中の通路を突っ切って行く。玄関ホールの終わりの場所に、受付所がある。長机にギルド職員であろう、二人が座っている。机の上にチャコール色の木で出来た長方形の置物に、白字で【受付案内】と明記されている。
「あの、依頼をしたいのですが……」
私は受付の人に声を掛ける。
「依頼ですね。では、あちらの二つ目の入り口に入って下さい」
私から見て左側を指し示す。
「あちらですね。有り難う御座います」
お礼を言い、私は二つ目の扉の無いドアへと向う。オーバル形の入り口の頭上の所には2と記されている。
その中に入ると、大きな大人数用のテーブルと、小さな四人用のテーブルが2つある。奥には職員用の机と椅子がある。そこに居た一人が、こちらに気付きこっちに来る。
「ご依頼ですか?」
ここのギルドの制服だろうか、先程ほどの職員が着ている貫頭衣と同じ物をこの職員も着用している。
「はい。トゥーア領地の領主街プラータへの転移陣を一人分依頼したい」
「ご自身のみですか」
「はい。本日中にプラータへ行きたいのです。また、基本依頼価格はどのくらいでしょうか?」
「急募と言うことですか……では、通常で転移依頼した場合は、2000Gですから、急募ですから追加で1000プラスでいかがでしょう?」
「3000Gですか。それで、構いませんが受けてくれる方の当ては御座いますか?」
「現在、何人かの方に心当たりがありますので、通常のクエスト掲示板にも貼った上で、斡旋の方も行います。数刻後にはご返事が出来ると思います」
「では、それでお願いします」
「承りました。それでは、依頼書を作成しますので、そちらの小さいテーブルにお着き下さい」
「はい」
頷いて私は、職員の言う通りに席に着く。首に掛かっているギルドカードを出して、通常サイズに変化させて職員を待った。
ギルドカードの項目をお金の残金ページにする。クエストなどを全然していなかったから、商人ギルド達と開発した計量シリーズのマージンだけが、自動的に増えていたようである。ギルドカードって優れモノで、金銭を持ち歩かなくても、ある魔導具を使うと金銭の授受が出来るのである。スマホの電子マネー機能と同じと考えると簡単かな。
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「お待たせしました」
職員が手にしているのは二枚の用紙と、四角い手の平大の透明な水晶の様な石で出来た魔導具である。これが、金銭の授受をするための物。
「こちらが依頼書兼契約書となります。最後に所にご自身のお名前をお書き下さい」
職員から万年筆のようなペンを差し出される。受け取って私は書類に目を通して、最後に私は自分の名前を記入し、用紙とペンを返す。因みに用紙の裏側には、魔方陣が描かれていて、これが、魔導具との連動の軸となる。
「では、前金で3000G頂きます。こちらの上にカードを乗せてください」
用紙の上に魔導具をコトリと乗せて、職員は魔導具の平面を指差す。
「はい」
私はギルドカードを透明な魔導具の上に乗せた。すると、用紙とカードがぽわっと光った。
「契約完了しました。ご確認ください」
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5850244 G
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職員が促す通りにギルドカードを手に持って、残金見ると確かに減っていた。
「確かに。では、よろしくお願いいたします」
「はい。お時間までどうされますか?」
「魔術師ギルドに用事がありますので、そちらにいってから戻ってくるつもりです」
「では、お待ちしております。戻って来られましたら4番の部屋に行って下さい」
「4番ですね、分かりました。では、失礼します」
ぺこりと頭を下げて暇を告げ、一旦冒険者ギルドを後にした。
その後、私は魔術師ギルドへ行く。目的は転移陣用の記録石。そこで、カッティング加工された記録石を10石購入。トゥーア領でブレスレットを飾る石にするので、同じ形と大きさのカッティング、全て色が違う石を選んだので、どかっと出費が出た。百万Gの出費は大きかった。
けれども、今後の事を考えるとあちこち行く可能性もあるから必要だろう。それに王都の魔術師ギルドの記録石のクオリティは最高級なので致し方ない。
その買った記録石の一つに王都の転移記録をしたのだった。
余った時間で王都のお土産を幾つか買うことも出来た。
そうして、予定通りに日が傾く前に、私は王都からトゥーア領に移動を完了したのだった。
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