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断罪への序曲4

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「まったく! 高尚な俺様達の理念が分からない愚鈍な連中め」
 イミテがチラリと周囲を睨め付けて言い放つと、背後にいた取り巻きの一人ヴァルデマー・アハッツが追従する。
「まったくもってその通りです」
 黒縁眼鏡をくいっと押し上げて同意する。一応いつも成績上位の一人でもある。髪は焦げ茶色で切り揃えられてて、瞳の色はくすんだ緑、肌はあまり外に出てないことを伺わせる青白く、身長は王子とどっこいどっこいの170位である。顔は学園の中では上の中くらいの美的ランクとのこと。(前回の学園美形ランキングを参照)
 表情はとても神経質そうなキツメな感じなので、万人に好かれないタイプではある。

「……」
 エルーシャは、チラリとヴァルデマーを見てそっとため息を吐く。言葉にはしないが、内心ではイミテ王子の後ろで置物としていれば良かったのにと思っていた。

「今更、反省しても遅いですよ。ランプロス公爵令嬢!」
 大声を張り上げて、ホールに響かせる様にヴァルデマーは言う。正義は我にあり、と思っているのだろう。

「馬鹿を馬鹿で釣り上げるとしても、もう少しやりようはなかったのかよ」
 ファルクスは眉間に皺を寄せ、聞こえない位の小さな声を漏らす。

 ヴァルデマーはファルクスのその仕草に何を勘違いしたのか、目をギラつかせて更なる怒声を上げた。
「自分が何一つ属性魔法が使えない事に腹を立てて、彼女が多数の属性魔法を使えるからと悪評をばら蒔いた!」
「……」
 とりあえず面倒だとは思いつつも、言わせるだけ言わせてやろうと、若干諦めモードでファルクスとエルーシャは受けて立つことにした。ただし周囲はガチンコでドン引いているが。
「悪評ですか? 申し訳ありませんが、お嬢様にはそんな悪評をばら蒔くほどの暇な時間は御座いません。貴殿方には遊ぶ暇がありそうですが、一緒にされるのはとても心外ですね」
 絶対零度の瞳で、ファルクスがイミテ王子以下頭のユルユルな連中を当てこする。
 いらっとしながらもエルーシャは、顔を上げて口を開く。
「私が属性魔法が使えないからと、悪評をばら蒔いたと言うのであれば、学園の殆んど生徒に対しても行わなければならないわ。その様な無駄も無駄の極みを行ったと? 皆様、私が上級から下級生のどなたかに悪評を言った事が御座いまして?」
 凛とした表情でエルーシャが周囲に問い掛ける。
 すると。

「ありませんわね」
「ないよなー」
「ないな」
「だな」
「確かにそれこそ時間の無駄だね」
「うんうん」
「属性魔法が全てじゃねーだろ」
「ああ、いやだ。これだから属性至上主義者はよー」
「だよなー」
 しらーっとした空気感が漂う中で、多くの生徒がエルーシャの言葉に反応を返した。
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