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第2章

初授業は全力で取り組め!

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「誰からやるんや?」
 リョウはカグラ、レーツェル、私と順番に見遣りながら問う。

「二人の内どっちかだよね、カグラ?」
「そうだな、俺達はこの程度だとお遊びにもならないからな」
 カグラとレーツェルは、顔を見合わせてからリョウを見て言った。

「お遊びって……」
「なんや、ワイらバカにされとる?」
「えー、僕等、馬鹿にしてないよ! 騎士団で基礎どころかそれなり(?)に叩き込まれてるからサポートの方が、二人とも安心でしょ?」
「だな。万一暴走しても余程な事が無い限り抑えられる」
「暴走って……」
「二人とも気付いてないかもしれないけど、通常の魔力量が一般的な人より多めなんだよ?」
「そして、日常的に魔法を使った事がないだろう? 違うか?」
「あ~、使うてないなぁ」
「……初チャレンジです……」
 カグラとリョウの容赦ない質問に、私達はそう正直に答えてしまう。

 ちらりと横目で見るとリョウは頭をガシガシ掻いて、苦い顔をしている。
 私もまた二人を直視出来ず、俯いてしまう。

 だって、暴走させた事あるもの……。
 王宮の結界をぶっ壊しましたよ。
 命の危機でやっちゃったけど、デストロイヤーな自分に地味に凹むわ~~。

「まぁ、それが普通なんだけどね~。だから、安心して僕等にサポートされてね?」
 明るい声でレーツェルが私達に告げてくれる。
 そろりと顔を上げると、安心させてくれるような微笑みを湛えてレーツェルが私達を見詰めていた。

 カグラが少し思案した後に提案してくる。
「……なら、リョウからしていくか。イメージし易い元素属性は?」
「風か、水か、土か、やな」
「土なら、地面から地柱を伸ばすか。風なら大気を魔法具に纏わせたりするか、掌に小さな旋風を起こしたりするかって感じか。水ならさっきのシエン先生の様にするかだな」
「ねぇ、カグラ。リョウの魔法具は杖だからさ、水だったら杖の軌跡に辿らせる様にして、水の文字とかを描くのも良いと思うけど?」
「それも悪くないな」
「どうする? リョウ」

 カグラ達の言葉を吟味してから、リョウが答えた。
「そやなぁ。水がええな。水で文字ってのがええ」
 リョウはその手で、くるんと杖を回転させてからしっかりと握りこむ。
 その眼には力が宿ったように見えた。

 リョウのやる気を感じたのか、レーツェルは声を掛けた。
「それじゃ、陣を組もうか。僕とカグラはリョウの左右に立つね。ナツキはリョウの前に立ってね」
「うん、分かった。立つだけでいいの?」
「ああ、そうだ。特にやる事はないが、魔力の流れを感じたり見たりするのも勉強だからな」
 カグラの助言に勉強になるなぁと思いながら、私は3人分位の距離を空けてリョウの前に立つ。
 カグラとレーツェルは一人分の間を空けて立つ。

「それじゃ、僕が周囲に簡易結界を張って置くね」
 レーツェルは、いつの間にか腰に佩いた剣をスラリと抜き放つ。
 クルッと剣の切っ先を地面へと向けて突き刺す。
防御結界展開シールド

 ふわっと、紗がかかる様なそんな感覚がした。
 周囲をぐるりと見回すと、ほんの僅かだが霞みかかったシャボン玉みたいに、半円の壁の様にも見えるものが、外と隔たりを作っていた。私達の4人だけの特別な空間だ。
 レーツェルを見遣ると、剣を地面から引き抜いて鞘に収める。

「これでちょっとしたものなら、防げるよ~」
「力加減を間違えてもそうそう壊れないだろうから、気負わずやればいい」
 にこやかにレーツェルが言い、カグラもまた太鼓判を押した。

 その言葉に背中押されたリョウは、にやりと笑って。
「ほな、いっちょ頑張ってみるわ」
 と、宣言する。

 リョウがすぅっと、深呼吸して呼吸を整えると目付きが真剣なものに変わる。
「大気に宿りし水よ、我に従え」
 魔法の杖をタクトの様にゆっくりと動かしていく。

 水がまるでリボンの様に、杖の先から軌跡を描いていく。
 キラキラ光る水の絵画。
 思わず見入ってしまいそうになる。

――――はっ! いけない、いけない。魔力の流れを見なければ!

 淡く光る杖の先。
 杖の先から流れ出る、魔力の欠片が水の軌跡を作っていくのが何と無くだが感じ取れた。
 描かれた軌跡に宿る微弱な魔力。
 幼い頃に見た、女王陛下やカグラの圧倒的な存在感や威圧感のする魔法ではないけど……リョウの魔力は弱いが、キラキラ光る水と同じに惹き付けられる様な魅力的な力だった。

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