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第4章 rebel lane~逆走~
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座らされた椅子は、かろうじて臀部が引っかかっているくらいで、ともすればずり落ちそうになる。そうならないよう、椅子の両脇から伸びた足置きに膝をのせて開脚させられたすえ、颯天は無防備に躰の中心を晒していた。手は頭上で纏めて括られ、隠すことは愚か、どこにも力が込められず身動きができない。
「では、ご覧ください」
非情にも商品のごとく品定めの合図が放たれた。
颯天が顔を背けたのはわずかに残ったプライドのせいで、逆らう演技でもなんでもない。そんな些細なしぐさも許されず、顎をつかまれて容赦なく正面を向かされた。
隣に立った男が胸の中央に手のひらをのせ、円を描くように左の胸を撫で、それから右側に移る。ただ撫でるだけなら、シャワーを浴びながら躰を洗うときと同じで、摩擦のほかになんの感覚もないはずだ。けれど、男の手の動きには嫌らしい意思が宿っている。胸の上で八の字を描きながら、弱点であるそこにだけ触れない。摩擦で胸の表面だけではなく内部にも熱が灯った。
ふと気がつけば、いつの間にか颯天の知覚から客の存在は消えて、男の摩撫に集中していた。理性を取り戻しながらもまた失う、その繰り返しだった。
胸先が疼き、もどかしさが募る。触ってくれ。それしかこの疼痛を解消できることはない。けれど、演技なら口にできても、演技ではないからこそ簡単には云えなかった。祐仁がいる。その消し去れない事実が堕落への唯一の歯止めになった。
ただ、息遣いはごまかせない。吐く息は白くなりそうなほど外界の温度よりも遥かに高い。
漏れそうになった嬌声を、歯を喰い縛って呑みこんだ刹那――触れられるのではなく、乳首は熱い湿地帯に含まれた。
あっああっ。
くちびるを咬むという意識さえまわらずに颯天の口から嬌声が放たれた。背中がびくんと反る。そこは熱く疼いていたはずが、男の口腔はそれよりも火傷しそうなくらい熱っぽく、舌が独立した生き物のように乳首を転がした。反対の乳首を指先が襲い、ぐりぐりと押し潰すようにうごめく。同時に口内では甘噛みされ、吸着され、たまらず颯天は叫ぶように嬌声を放った。躰全体がびくびくと痙攣する。
「嫌だ……っくふっ」
拒絶を吐いてみるものの、颯天の反応を見ればそれは弱々しく映るだろう。自分の喘ぎ声に紛れて、自分のものではない感嘆した吐息が耳に届く。客たちのものだ。理性の隅でそんなことを思いながら、颯天は乳首が熱く疼くだけでなく、躰の中心までもが爆発しそうに張りつめていることを認識する。それほど鮮明にそこは脈を打っていた。
もしもいまそこに触れられたら、その瞬間に爆ぜてしまうのではないか。そんな怯えを抱きながら、いざ根元をつかまれたとき、颯天はくちびるを咬みしめ、目を見開いて快感に耐えた。
その手が這いのぼっていく。ぬるりとした感触は、颯天自らしとどに濡らしているからに違いなく、それがもたらす感覚は絶妙な刺激になった。
やめろ、と叫びたかったがそうすればきっと堪えきれない。せめて否定するように首を横に振りながらも、腰を跳ねながら感度が上昇していくのを颯天は受けとめるしかない。もう無理だ、と思った寸前に手は離れていき、そうして次の瞬間、後孔に指先が触れた。
あ、あ、ああっ。
小さく円を描きながら後孔の周囲が捏ねられていく。男の指先は颯天の蜜で塗れ、なんの痛みも及ばずに、ただ陶酔する感覚だけがもたらされる。迸りそうな快感を堪えているかわりに、オスの口からは餌を前にした狼が涎を垂らすようにぷくりぷくりと蜜を吐きだしている。それが後孔へと伝い落ち、男が弄るたびにぬちゃぬちゃと粘着音が立ち、ひどい音になっていく。
そうして男の指先が後孔のなかへと侵入した。
あうっ。
指の腹で腸壁を撫でながらゆっくりと奥に進み、そして弱点に到達する。指先を折り、擦りあげられた。
「あっ、嫌、だっ――ああああ――っ」
拒絶の言葉はすぐさま叫ぶような嬌声に変わり、颯天は呆気なく快感を破裂させた。
ぼとり、ぼとりと颯天の腹部に生温かい粘液が降り注ぐ。Eタンクに来てからこの一カ月、だれにも触れられることなくすごしてきて、蜜の量は半端なく何度も搾りだされた。
「いかがでしょうか」
司会者が促したと同時にあちこちから、十、十五、といった数字が端的に放たれ、それは次々と跳ねあがっていく。
どれだけの価値をつけられようと、颯天にとってはなんの利にもならない。呼吸を荒げたまま、その場所を見れば颯天など眼中になく祐仁はその値の動向を見守っていた。
「五十だ」
まもなくして、これで終わりにしろと云わんばかりの太い声が響いた。
「落札されました」
会場を見渡したのち、司会者はその男のほうに手を差し向けて終了を告げた。
おそらく思惑どおりに事は運んだのだ。祐仁は颯天に目もくれず、背中を向けて会場をあとにした。
腹部に散った快楽のしるしを拭き取ってもらえたぶんだけ、まだ丁重に扱われているのか、拘束を解かれ、マントを羽織らせられて颯天は舞台から降りた。
カーテンを通り抜けると、そこには塚元とともに有働が待っていた。有働は颯天を認めて、口を開いた。
「フィクサーからの伝言だ。快楽に弱すぎる、と。あなたが学ぶべきなのはオーナーの楽しみを長引かせること。そのあたり、凛堂会は甘かったかもしれないが、Eタンクは徹底させる。いいな」
屈辱以外の何ものでもない。颯天は惨めさのあまり、反抗的な眼差しで有働を見やった。有働が浮かべた笑みは興じているのでも嘲っているのでもなく、意味深に見えた。そうして、背後を振り向く。
「春馬、颯天にルールを教えてやってくれ」
と、有働の言葉に応じて現れたのは、結果的に颯天を貶める原因をつくった工藤春馬だった。
「では、ご覧ください」
非情にも商品のごとく品定めの合図が放たれた。
颯天が顔を背けたのはわずかに残ったプライドのせいで、逆らう演技でもなんでもない。そんな些細なしぐさも許されず、顎をつかまれて容赦なく正面を向かされた。
隣に立った男が胸の中央に手のひらをのせ、円を描くように左の胸を撫で、それから右側に移る。ただ撫でるだけなら、シャワーを浴びながら躰を洗うときと同じで、摩擦のほかになんの感覚もないはずだ。けれど、男の手の動きには嫌らしい意思が宿っている。胸の上で八の字を描きながら、弱点であるそこにだけ触れない。摩擦で胸の表面だけではなく内部にも熱が灯った。
ふと気がつけば、いつの間にか颯天の知覚から客の存在は消えて、男の摩撫に集中していた。理性を取り戻しながらもまた失う、その繰り返しだった。
胸先が疼き、もどかしさが募る。触ってくれ。それしかこの疼痛を解消できることはない。けれど、演技なら口にできても、演技ではないからこそ簡単には云えなかった。祐仁がいる。その消し去れない事実が堕落への唯一の歯止めになった。
ただ、息遣いはごまかせない。吐く息は白くなりそうなほど外界の温度よりも遥かに高い。
漏れそうになった嬌声を、歯を喰い縛って呑みこんだ刹那――触れられるのではなく、乳首は熱い湿地帯に含まれた。
あっああっ。
くちびるを咬むという意識さえまわらずに颯天の口から嬌声が放たれた。背中がびくんと反る。そこは熱く疼いていたはずが、男の口腔はそれよりも火傷しそうなくらい熱っぽく、舌が独立した生き物のように乳首を転がした。反対の乳首を指先が襲い、ぐりぐりと押し潰すようにうごめく。同時に口内では甘噛みされ、吸着され、たまらず颯天は叫ぶように嬌声を放った。躰全体がびくびくと痙攣する。
「嫌だ……っくふっ」
拒絶を吐いてみるものの、颯天の反応を見ればそれは弱々しく映るだろう。自分の喘ぎ声に紛れて、自分のものではない感嘆した吐息が耳に届く。客たちのものだ。理性の隅でそんなことを思いながら、颯天は乳首が熱く疼くだけでなく、躰の中心までもが爆発しそうに張りつめていることを認識する。それほど鮮明にそこは脈を打っていた。
もしもいまそこに触れられたら、その瞬間に爆ぜてしまうのではないか。そんな怯えを抱きながら、いざ根元をつかまれたとき、颯天はくちびるを咬みしめ、目を見開いて快感に耐えた。
その手が這いのぼっていく。ぬるりとした感触は、颯天自らしとどに濡らしているからに違いなく、それがもたらす感覚は絶妙な刺激になった。
やめろ、と叫びたかったがそうすればきっと堪えきれない。せめて否定するように首を横に振りながらも、腰を跳ねながら感度が上昇していくのを颯天は受けとめるしかない。もう無理だ、と思った寸前に手は離れていき、そうして次の瞬間、後孔に指先が触れた。
あ、あ、ああっ。
小さく円を描きながら後孔の周囲が捏ねられていく。男の指先は颯天の蜜で塗れ、なんの痛みも及ばずに、ただ陶酔する感覚だけがもたらされる。迸りそうな快感を堪えているかわりに、オスの口からは餌を前にした狼が涎を垂らすようにぷくりぷくりと蜜を吐きだしている。それが後孔へと伝い落ち、男が弄るたびにぬちゃぬちゃと粘着音が立ち、ひどい音になっていく。
そうして男の指先が後孔のなかへと侵入した。
あうっ。
指の腹で腸壁を撫でながらゆっくりと奥に進み、そして弱点に到達する。指先を折り、擦りあげられた。
「あっ、嫌、だっ――ああああ――っ」
拒絶の言葉はすぐさま叫ぶような嬌声に変わり、颯天は呆気なく快感を破裂させた。
ぼとり、ぼとりと颯天の腹部に生温かい粘液が降り注ぐ。Eタンクに来てからこの一カ月、だれにも触れられることなくすごしてきて、蜜の量は半端なく何度も搾りだされた。
「いかがでしょうか」
司会者が促したと同時にあちこちから、十、十五、といった数字が端的に放たれ、それは次々と跳ねあがっていく。
どれだけの価値をつけられようと、颯天にとってはなんの利にもならない。呼吸を荒げたまま、その場所を見れば颯天など眼中になく祐仁はその値の動向を見守っていた。
「五十だ」
まもなくして、これで終わりにしろと云わんばかりの太い声が響いた。
「落札されました」
会場を見渡したのち、司会者はその男のほうに手を差し向けて終了を告げた。
おそらく思惑どおりに事は運んだのだ。祐仁は颯天に目もくれず、背中を向けて会場をあとにした。
腹部に散った快楽のしるしを拭き取ってもらえたぶんだけ、まだ丁重に扱われているのか、拘束を解かれ、マントを羽織らせられて颯天は舞台から降りた。
カーテンを通り抜けると、そこには塚元とともに有働が待っていた。有働は颯天を認めて、口を開いた。
「フィクサーからの伝言だ。快楽に弱すぎる、と。あなたが学ぶべきなのはオーナーの楽しみを長引かせること。そのあたり、凛堂会は甘かったかもしれないが、Eタンクは徹底させる。いいな」
屈辱以外の何ものでもない。颯天は惨めさのあまり、反抗的な眼差しで有働を見やった。有働が浮かべた笑みは興じているのでも嘲っているのでもなく、意味深に見えた。そうして、背後を振り向く。
「春馬、颯天にルールを教えてやってくれ」
と、有働の言葉に応じて現れたのは、結果的に颯天を貶める原因をつくった工藤春馬だった。
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