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第2章 過保護な皇子と恋の落とし穴

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 少しでも秘芽に当てた指が動けばひくっひくっと腰がうごめく。その指が花片の間を滑りおり、流れに沿いながら秘口へと潜ってきた。
 あうっ。
 収縮を繰り返しているさなかで、凪乃羽はまたびくんっと大きく腰を跳ねた。指が吸いこまれるように奥に侵入する。そうしているのはヴァンの意思ではなく、凪乃羽の躰が収縮に任せて呑みこんでいるのかもしれなかった。
 すっとしてきれいだけれど、けっして細くない指は、入り口を拡張するようにぐるりと左右に回転しながらゆっくりとうごめく。果てから完全に戻ってくることのないまま刺激されて、痙攣は止まらず、どんどん蜜は溢れて脚の間がひどく濡れそぼっている。秘口はきっと迎えたがっているようにやわらかくなっている。
 ヴァンは触れ方を変え、指をゆっくりと深く突き入れた。指の腹で隘路のひだが摩撫されて、そこら中が快感に粟立つ。指の根元まで沈み、くちゅりと音が立ったかと思うと、今度は逆方向へと摩撫しながら指を引き抜いていく。抜けだしたとたん、秘口は惜しむように閉じた。そして、抉じ開けるようにしてまた指が侵入してくる。
 ん、はああぁっ……ぅっ。
 ゆっくりとした指の出し入れは躰が蕩けだしていきそうで、くちゅくちゅと嫌らしい音を聞きとりながら、また凪乃羽は快楽に塗れていった。
 揺れていた腰がふいにぎくっと突きだすように跳ねる。ヴァンは凪乃羽自身が知らなかった、体内のその一点を指の腹でこねた。ぷしゅっと小さく迸るような音が立つ。
『おまえの躰はこの上なく嫌らしくできているらしい』
 ヴァンは含み笑い、楽しむように指はその弱点を何度もつつく。そのたびに蜜が飛び散り、腰はだるく砕けそうな気さえしてくる。
「あ、あ、……ヴァンっ、壊れそ……ぅっ」
 凪乃羽は自由なほうの左腕を上げて、ヴァンの右腕を縋るようにつかんだ。正しくいえば、ヴァンの腕は太くてつかむことはかなわず、手のひらを添えて力を込めるしかできない。一方で、ヴァンの躰との間に挟まれた右手は胸の上で祈るように握りしめている。
 また独り果ててしまうことへの抵抗だったが、ヴァンは凪乃羽の左手から右手へと視線を移すと。
閨事ねやごとも何度めか……八度めか。おまえは相変わらず可愛い反応をする』
 ヴァンの囁き声には熱がこもり、甘い微笑がくちびるに浮かぶ。
「ヴァン……ふぁっ……一緒、が、いいっ……んっ」
『ひとつになりたいか』
 言葉は通じなくてもいま向けられた言葉に思いは通じ合っているような気にさせられ、凪乃羽はうなずいた。左腕をさらに伸ばして、ヴァンの首もとに巻きつける。
 ヴァンは自分の腰に引っかけた凪乃羽の脚をおろした。凪乃羽の左腕が首からほどけていかないように気をつけてくれたのか、ヴァンは窮屈そうにしながら、凪乃羽に覆い被さるような体勢に変えた。自由になった右手をヴァンの肩に伸ばしかけると、脚の間におさまったヴァンのほうから身をかがめてくる。肩に手のひらをのせたと同時に、ひとつキスが落ちてきた。
 くちびるの間に距離が空き、間近でヴァンの顔と対面する。ヴァンは凪乃羽の脚を腕に抱えると、わずかに身じろぎをした。
『まだ少しきついかもしれないが、大丈夫だろう? これだけ熱く濡れていれば』
 最初は気遣うように、最後はからかうような気配でヴァンは云い――
『凪乃羽、おまえの躰がおれに応えてくれるかぎり、おれとおまえは通じ合える』
 呪文のように聞こえる抑揚で凪乃羽に語りかけた。
 直後、中心に、質量を伴った、硬くてやわらかいモノが押しつけられる。秘口が拡げられていき、大きすぎてもう無理だと云いそうになる寸前で、ヴァンの杭の突端がぬぷりと凪乃羽の中に嵌まりこんだ。
 凪乃羽の意識が正常なら、ヴァンに抱かれるのも八回めで、ひとつになりたいという気持ちはいつも持っているのに、まだヴァンのモノに慣れているわけではない。秘口を拡げられたまま静観されていると、いざ動き始める瞬間までにちょっとした怖さがある。ヴァンはそれを承知しているかのように、ゆっくりと腰を押し進め、凪乃羽は太い首にしがみついた。
 あ、あ、あ、あ……。
 ヴァンは段階を踏むように奥を目指し、その動きに凪乃羽の悲鳴じみた声が連動する。
 奥に行き当たったとき――
 くっ。
 ああっ。
 ヴァンの唸り声が耳もとに響き、凪乃羽の悲鳴と重なった。
 最奥のキスだけで凪乃羽のそこは陶酔境に陥ったようにひくひくっと痙攣を引き起こす。それはヴァンを快楽に導きつつ、反動で凪乃羽をも快楽が襲う。ただ一体化しているだけなのに、快楽に次ぐ快楽という連鎖が始まった。
 ヴァンがじっとしたまま終わるはずはなく、再び唸ると、ゆっくりゆっくりと腰をうねらせ始めた。
 ん……あああっ。
 腰を引いては入り口に近い弱点が摩撫されて、ぷるぷると腰がふるえる。中に突き進んで最奥でキス音が立てば、脱力してしまうような快感に襲われて、凪乃羽は腰をよじった。それがヴァンを刺激して、そして凪乃羽に返ってくる。埋め尽くされたきつさは快楽のなかに消え、かわりに埋め尽くすのは、これ以上にない満ち足りた多幸感だった。
 深く貫かれるたびに、ぐちゅぐちゅと恥ずかしいほど粘着音はひどくなっていった。引き抜かれる寸前にはお尻が引き止めるように持ちあがる。重量感を伴って体内に沈んでくれば、ひくひくとお尻がせん動する。
「ヴァン……あぅっ……あ……ヴァン……んふっ……ああっヴァンっ」
 意味もなく、ただヴァンを呼ぶ声はだんだんとひっ迫していく。
 いや、意味がなくはない。一緒にいられることを噛みしめているのだ。理由を探しだせないまま、凪乃羽はそんな確信だけを持った。快楽に侵食されて、思考力も力も尽きかけているのに、その確信を裏づけるようにヴァンにしがみつく手には力が込もる。
 離れたくない!
 そんな気持ちが一気に凪乃羽を快楽の果てまで高めた。
「ヴァンっ」
 祈るようにその名を叫ぶ。
『おまえがどこに行こうが、たとえ行き遅れてもおれはすぐに追いつく』
 なだめるような声音に安心しきり、凪乃羽の快楽が弾けた。
 自分の悲鳴は遠くに聞こえ、ヴァンのくぐもった声が耳を通して体内に熱く忍びこむ。臍下さいかにも熱が迸り、躰が熱に融けだしたような感覚に襲われた。
『このままもう少し眠れ。おまえが見るのはおれの夢だ』
 凪乃羽の脚から腕を抜き、ヴァンは首と腰の下にそれぞれ腕をくぐらせて凪乃羽を抱きしめる。
 こんなふうにきつく抱きしめられた記憶がふと凪乃羽の脳裡をよぎる。けれど、それが形にならないうちに、気だるさに負けて眠りについた。
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