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第2章 過保護な皇子と恋の落とし穴

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 軽くくちびるでくちびるを挟むようなキスが繰り返される。目を伏せていると、髪の色が見えないぶん、かおりとキスの仕方がヴァンであることを鮮明にして、それが心底に浸透していく。キスのさなか自然と口が開いていったのは、きっと心底がそんな気持ちになったからだ。
 ヴァンはけれど、啄むキスから一向に深く触れてこない。
「ヴァン……?」
 キスの合間に呼びかけたものの、思うように声にはならない。それでも届いたはずだ。
 催促か、と、いつもならからかうだろうにヴァンは無言のまま、凪乃羽が呼んだことを合図にしてくちびるを押しつけてきた。
 ヴァンの舌が口の中に滑りこみ、眠りから揺り起こすように凪乃羽の舌を乱暴にすくった。はぐれてはまたすくわれ、絡んでは吸いつかれる。ふかふかの大きな枕に頭が沈むほどキスは執拗で、快楽に吸いこまれそうな感覚は怖くもあった。首の下を支えて肩を抱くヴァンの左腕がその怖さから守っている。
 口内をまさぐられながら呑み下せなかったふたりの蜜が、口の端からこぼれてしまう。ヴァンは凪乃羽のくちびるから離れて、それを追っていった。
 喘ぐさなかにヴァンはくちびると舌で顎を伝い、首もとにおりて鎖骨に沿う。そこから躰の脇を通って胸の麓にくちびるをとどまらせると軽く吸いついた。
 そのときになって自分が何も身につけていないことに気づいた。飛び起きたとき、ヴァンの声と顔の違いに気を取られていたけれど、ふたりで羽織っていた掛け布が剥がれ、その胸は裸だった。
 んっ。
 ヴァンは胸の麓から頂へと這いのぼってきたかと思うと、頂にたどり着く寸前で反対側の胸に移って同じことを繰り返す。焦れったさに躰をよじらせつつ、喘いだ声は催促しているように聞こえたかもしれない。
「ヴァンっ」
 ごまかすように名を呼ぶと、ヴァンは顔を上げて凪乃羽の顔に寄せる。
 そうしながらヴァンは凪乃羽の右側の太腿をつかんで膝の裏へと手を滑らせると、持ちあげて自分の脚の上に引っかけさせた。膝はヴァンの腰の位置まで引きあげられて、秘めた中心が晒される。膝へと滑らせていた手は、さっきとは反対に這いのぼってきた。
 思わず脚を閉じようとしたけれど、自分の脚をヴァンの腰から持ちあげるより早く、ヴァンの手のひらが中心を覆った。中指が花片かへんの間に添い、折り曲げるのに伴って秘芽が弾かれる。
 ああっ。
 ヴァンの吐息と凪乃羽の悲鳴が混じり合った。
 凪乃羽は薄らと目を開ける。
『蜜が溢れている。おまえは感度がよすぎるな。おれをことごとく悦ばせてくれる』
 言葉はわからなくても、熱い吐息と悦に入ったようなくちびるの歪め方が、なんとなくだけれど凪乃羽に意味を悟らせる。顔が火照ってしまう。意味が通じたことを察したのか、ヴァンは可笑しそうにした。
『言葉は閨事ねやごとで憶えるものかもしれないな』
 ヴァンの言葉はわからないからこそなのか、呪文を唱えているように聞こえる。凪乃羽に、甘いお酒を飲まされているような酔いをもたらす。
『凪乃羽、ただおれに身を任せろ。話は……そのあとだ。ゆっくりと。いいな、凪乃羽』
 通じないままでも、凪乃羽と重ねて呼んだことでヴァンが不安を取り除こうとしてくれているのがわかる。
 凪乃羽は左手を上げてヴァンの髪に触れた。その光沢が示すとおりに、銀色の髪はつかんでも指の間をすり抜けそうなくらいさらさらとしてやわらかい。そのくせ、黒髪だった頃の張りもあって、うねるように耳もとから首筋へと流れる髪型は変わっていない。
「きれい」
『気に入ったのなら、さっきのように二度とおれから逃げるな』
 凪乃羽からの言葉は通じていなかったのか、褒め言葉のはずが、ヴァンはにわかに顔をしかめた。
「ヴァン、わたしの云ってること……あっ」
 凪乃羽の言葉は理解できているのか訊ねようとしたのに、ヴァンは胸もとに顔を伏せ、いきなり胸先を口に含んだ。そこはちょっとした刺激に弱くて、あまりの熱さにびくんと胸が跳ねあがる。
 恥ずかしいほど胸先はすでに硬く尖っている。さっき焦らされていたときからそんな自覚はあった。赤く実った粒をヴァンの舌が巻きとって、くるくると転がすようにいたぶる。
 そこで発生した刺激はおなかの奥へと繋がっている。中心にある手のひらは、いまは覆っているだけなのに、そこにヴァンが触れているというだけで疼くような感覚が生まれた。
 胸の粒の根元に甘く咬みつき、ヴァンは小さく顔を上下させる。そのたびに歯で軽く摩撫され、ぷるぷるとふるえだすような感度が増していく。
 あっ、あっ、あっ……。
 肩を抱かれていて脚も片方は自由にならない。それでも快楽から逃れようとして伸びあがろうとすると、引き止めるように胸先が吸引された。
 ん、あああっ。
 吸いつかれながら粒の先端を舌で小刻みに擦られて、痺れるような快感に侵された。腰をよじったとたん、ヴァンの指先が中心でうごめき始めた。花片をこねられて、秘芽が弾かれると、漏れだしそうな感覚に襲われる。
「ああっ、だめっ……」
 ヴァンにその言葉が通じたとしても、その言葉を聞き入れてくれるはずはなく、濡れた音をわざとのように立てながら中心をいたぶられた。ヴァンの指が痛みも及ばさず自在に動くのは、それだけ凪乃羽が感じている証拠だ。
 秘芽を集中してこねられるともうたまらなかった。
「ヴァン、だめっ、も、ぅ……っ」
 寝台から腰が浮き、揺れるのは逃れようとするためか、それとも、もっととせがんでいるのか。
 いったん胸もとから顔を上げたヴァンは、すぐに顔をおろして胸先の色づいた場所をすべて口に含み、軽く吸着しながら舌を大きくうごめかした。粒が揺り動かされ、躰の中心では秘芽が押しつぶされるように揉みこまれる。漏らしそうな感覚を堪えられなかった。
 あ、逝、っちゃ……ぅ、ぁあああっ……。
 背中をぴんとそらしたあと、びくんっと大きくお尻が跳ねる。くちゅっと蜜の弾ける音が耳についた。
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