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52.種の聖地(2)

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 悪びれないことで、逆に智奈が淫乱であっても京吾をうんざりさせることはないと気がらくになる。そのつもりはなくても、触れられたら躰と感覚がさきに勝手に反応してしまうし、京吾に触れていたい気持ちはふしだらにも常にある。
 ショートパンツと一緒に下着を脱がせた京吾は、智奈の脚を持ちあげると左手ひとつで膝の裏辺りを持って纏めた。キッチンカウンターから腰がわずかに浮いた。恥ずかしい恰好に小さく呻いて抗議する。京吾は取り合わずに、右手でジョガーパンツとボクサーパンツをずらし、オス化した自分を智奈の中心に宛がった。
 智奈の準備が整っているように、蜜を塗すまでもなく、オスとして分身とする伴侶を痛めつけることのないよう、京吾も準備ができていた。ぐっと押しつけると、智奈の入り口が開いていく。刻一刻としたその間も、京吾にとっては官能的に映った。
 ふ、んっ……。
 ゆっくりと貫くのは、いたぶるのではなく智奈の躰に無理にならないよう気を遣いながら、最大の理由は自分の存在を智奈に刻みつけるためだ。もちろん京吾は淫らな楽しみも見いだしている。
 じわじわと侵略されることで、智奈の体内に起きていること――オスに纏わりついて奥へ奥へとせっかちにも導いている。そうしながら、智奈は自分で快楽を得ていた。
 まもなく中心が密着すると、智奈の中でどくんと収縮するような感覚がして、小さな痙攣が走る。
 く……っ。
 京吾が連動して呻き、腰もとをぶるっと揺らす。
 纏められていた脚が左右に開かれ、京吾はそれぞれを自分の肩にのせて前にのめった。カウンターの上に肘をつくと、智奈のカットソーをたくし上げて胸をあらわにした。
「智奈、ってる」
 云わなくていいのに、京吾はにたついた声でわざわざ智奈の羞恥心を煽る。
「京吾、だって……っ!」
「そうだ。智奈とふたりきりだと、場所もわきまえずにこうなる」
 京吾はあっさりと認めて智奈の胸に顔を伏せ、トップを咥えた。
 あ、あああっ。
 いつもされていることをいま驚くほど過敏に感じて、智奈は背中を浮かせた。
 合わせて京吾が口を大きく開き、色づいた場所を丸ごと含む。吸引しながら、舌先が胸の突端をつついた。
 あ、あふっ。
 びくんと胸を突きだすと、反対の胸の実が指先で抓まれる。
 あうっ。
 それは痛みに似ていた。ぴりっとした感覚がそこに集う。やっぱりいつもと違う。京吾の触れ方が違うのか、智奈にはわからない。ただ、そのぴりぴりした感覚はつかの間で、過敏さだけが残り、胸先の片方を口に含まれ、もう片方を摩撫され、躰の奥から蜜が熱く滲みでてくる。あまりの快楽に自然と躰がうねると、繋がった場所でも感度が上昇していって智奈はひとりでに快感を享受してしまう。その循環は止められなかった。
 あ、あ、あ、ぁああああ――――っ!
 嬌声が尽きたあと、躰の奥で蜜の塊が弾ける。びくっと腰が跳ねるたびに、グチュッ、グチュッと埋め尽くされた隙間から蜜が押しだされる淫音が鳴り――
 くっ……。
 チュプッとキス音を立てながら、顔を上げた京吾が苦しげに呻いたとき、硬く太く形を変えたオスが、さらに智奈の奥に進んだ。ひょっとしたら、智奈の躰がそうしているのかもしれない。収縮に合わせて、京吾のオスがのめり込んできて、そして最奥にぴたりと嵌まった。智奈は再び嬌声をあげ、果てのなかでさらに果てがあるのを知らされる。
 智奈の中でひどい収縮が繰り返された。京吾は引きずられる感覚に唸り、逆らうように腰を引く。智奈の腰がぶるぶると痙攣するなか、最奥から抜けだしたと思うとオスは逆に突き進んでくる。すると体内の奥にある入口がさらに抉じ開けられたような感覚のもと、そこに侵入を許し、そしてすっぽりとオスの先端を咥えこむ。智奈はふるふると小刻みに腰を揺すった。いや、意識してそうしているのではなく、無自覚に揺れてしまう。
「智奈……なんて躰をしてる……? ただでさえ……くっ……制御が、難しいのに……」
 京吾は途切れ途切れに発した。嘆いているのではなく、お手上げだといったふうでありつつオスとしての喜悦を曝している。
「わか、らな……ああっ」
「はっ……わかったら、いったい……く……っ、おれは、どう……なるんだ?」
「わから、な……ぃっ、ん、あっ」
 うまく思考はまわらず、智奈は同じ言葉を繰り返す。
 漏らしてしまいそうな感覚は快感に違いなく、京吾が一度往復するたびに、淫蜜を掻き混ぜるような、ひどい粘着音が響く。グチャッグチャッ――と淫らな音が広い部屋に響き、京吾の律動に揺らされてブルーライトのなか海中で泳いでいるような錯覚に陥る。埋め尽くされた隘路のわずかな隙間を縫って、淫蜜が体外に迸っているような気がした。快楽も、その反動で溢れる蜜も、自分ではコントロールがきかない。
 京吾が最奥に嵌まりこむたびに、智奈は腰をがくがくっと揺さぶってしまう。怖いほど感度が上昇していて、おなかの奥で起きている快感が脳内まで突き抜けた。いや、脳内さえ通り越しているのかもしれない。
 意識は快楽に酔い、ずっとこのままでいたいくらいに気持ちがよすぎて気が遠くなる。嬌声が力なくかすれるなか――
 ん、はぁああっ。
 突如、悲鳴じみて声が跳ねあがる。
 しばらく放っておかれた胸の実が抓まれ、軽く扱くように弄ばれた。胸が勝手にびくびくと上下してふくらみが揺れ、うねる腰と相まって躰をだるく弛緩させる。
 快楽は限界まで到達して飽和した。腰もまた勝手にがくんっと跳ねあがり、体内から蜜を噴く。
 く――――っ。
 京吾は呻き、腰を押しつけた直後、智奈の最奥が爛れるような熱に塗れた。
 荒々しい呼吸が間近で混じり合う。ぐったりと力をなくしながらも智奈の躰はぴくぴくと痙攣が続き、おさまる気配はない。回復はやはり京吾のほうがずっと早かった。
「智奈、ますます感じやすくなってないか」
 京吾は智奈の額に手を置き、髪を撫でながら満更でもないといった口調でからかう。自分でも今日は特に敏感だったように思う。
「……わからない」
 また同じ言葉で答えると京吾は笑い、それが密着した部分を刺激して智奈は無意識に逃れようと躰をよじった。その動きに反応して呻いたのは智奈だけではない。
「だめだ」
 何を制したのか、京吾は智奈の体内から抜けだした。
 んくっ。
 智奈の躰に痙攣が激しくぶり返す。
「毎晩、抱いているのに、自分でも呆れるくらい精根は尽きない。けど、このまま硬いベッドで伸びるのはいただけない」
「ベッド、じゃ、ない……ここ、キッチン……!」
 わかりきっていることをあえて智奈が云ったのは、すっかりキッチンであることを忘れて快楽塗れになったばつの悪さを紛らすためだ。今度、津田がやってきて食事の準備をしてくれるとき、どんな顔をすればいいのか。京吾の厚顔無恥さが恨めしくなる。
 京吾は自分だけ服を整えると、智奈の躰を起こした。
「待って! 汚しちゃうから……」
「おれの蜜は智奈の中で純化されたと思うけどな」
 京吾は云いながら、智奈の要望を読みとってショーツを穿かせてくれた。
「穢れてるって云ってるわけじゃない」
「そう、おれたちのセックスは聖なる行為だ」
 毎晩という、さっきの京吾の言葉は大げさではなくそのとおりで、智奈はふとあることに気づく。その尽きない快楽が聖なる行為なら、その結果も神聖なもののはず。智奈は軽々と抱きあげられると、いまの力の限りでぎゅっと京吾にしがみついた。
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