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43.抱かれてみる? partⅡ
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ちょっとした深刻な顔つきやためらい、そんなキョウゴの揺れは智奈の気持ちを慮ってのことだったらしい。そのことに驚きながら、智奈はうなずいた。
「いてほしいし、ついてく」
二つ返事をすると、キョウゴは喜ぶよりも呆れた雰囲気でで首を横に振った。
「ちゃんと考えてるのか」
「何を考えなくちゃいけないの?」
「智奈は云っただろう、危険そうだって。おれといるってことは、智奈にもそれが及ぶってことだ」
「……キョウゴは危なくないって云わなかった?」
智奈が云い返すと、キョウゴはお手上げだといった様子で吹きだした。
「智奈は都合よく解釈してる。おれは、信用次第で危険度は下がるって云っただけだ」
「キョウゴはわたしを守りたいってことも云ったよね。そうしてくれるって思えるから」
「おれは一人二役して騙してたんだぞ」
「逆も云える。キョウゴには二面性があって、そのどっちも見せてくれたの。それとも、津田さんが云ってたけど、人でなしとか、まだ別の顔も持ってる?」
キョウゴがため息をつくのを見て、智奈はふと違った解釈をしていたのかと自分に疑問を持った。そんなちょっとした綻びで不安がいっぱいに膨らむのはあっという間だ。それだけ、キョウゴの存在は大きくて、いなくなったらと思うだけでつらくなる。
「キョウゴはわたしについてきてほしくないの? もしかして、全部話したらわたしが怖がって引くって……追い払うために教えてくれたの? キョウゴが黙って消えても“堂貫オーナー”は消えられない。わたしが堂貫オーナーを好きだってことはバレバレで、付き纏うようになったら困るから?」
智奈の不安は声に表れている。キョウゴの驚いた顔はどう捉えていいのだろう。
息を呑んで返事を待っていると、やがてキョウゴはゆっくりと首を横に振った。否定だと思いたい。そんな気持ちで一心に見つめると、可笑しそうな笑みが返ってきた。
「一人二役でそれぞれに他人事のような云い方はしてきたけど、嘘は吐いてない。おれが智奈を追い払うはずないだろう。キョウゴ、ではなく堂貫が好きって云われると、複雑な気もするけど」
「……どっちが本当?」
智奈はキョウゴの答えにほっとして、力の抜けた声で問う。
「どっちも本当だ。人でなしと呼ばれる一面もあるかもしれない。さっき話した裏の仕事を思えば想像がつくだろう? ただし、智奈がそんなおれを見ることはない」
キョウゴは断言した。きっと、智奈に対して人でなしにはならないという約束、あるいは確信なのだ。
「キョウゴと会ってからまだ一カ月くらいだけど、一緒に住んでいるぶん、ずっと以前からそうしているように感じてる。キョウゴを知ってる。わたしがそう云うの、間違ってる?」
「いや、智奈に嘘は吐いてない。この一カ月、ありのままのおれを見せてきた」
キョウゴは嘘を吐いていないと繰り返し、智奈は力を得た気になって顔が綻び、こっくりとうなずいた。
「わたし、お母さんも親戚もいるけど、いまは天涯孤独みたいなものだから、キョウゴが悪人でもだれにも咎められない。何も失うものないし、わたしがやりたいようにできる。わたしはキョウゴといたい」
智奈がきっぱり宣言するとキョウゴはじっと智奈の瞳を捉え、そこから何を得たのか、唐突に立ちあがった。
釣られて仰向くと、智奈の頬がくるまれて顎がさらに持ちあげられる。真上からキョウゴの顔が近づいて、口づけられた。
智奈のくちびる全部がキョウゴのくちびるで覆われ、吸いついて、なお且つゆっくりと離れていく。智奈が好きな、気持ちのいいキスだ。もう一度、と思うのに、キョウゴは顔を離したままで、戻ってくる気配がなく、智奈はキスの瞬間に自ずと閉じていた瞼を上げた。キョウゴの顔が視界いっぱいになって、うっとりする。
「智奈、その意思の裏付けに、おれに本気で抱かれてみる? ……いや、その気があるっておれが受けとめても、智奈に否定する余地はない」
「いてほしいし、ついてく」
二つ返事をすると、キョウゴは喜ぶよりも呆れた雰囲気でで首を横に振った。
「ちゃんと考えてるのか」
「何を考えなくちゃいけないの?」
「智奈は云っただろう、危険そうだって。おれといるってことは、智奈にもそれが及ぶってことだ」
「……キョウゴは危なくないって云わなかった?」
智奈が云い返すと、キョウゴはお手上げだといった様子で吹きだした。
「智奈は都合よく解釈してる。おれは、信用次第で危険度は下がるって云っただけだ」
「キョウゴはわたしを守りたいってことも云ったよね。そうしてくれるって思えるから」
「おれは一人二役して騙してたんだぞ」
「逆も云える。キョウゴには二面性があって、そのどっちも見せてくれたの。それとも、津田さんが云ってたけど、人でなしとか、まだ別の顔も持ってる?」
キョウゴがため息をつくのを見て、智奈はふと違った解釈をしていたのかと自分に疑問を持った。そんなちょっとした綻びで不安がいっぱいに膨らむのはあっという間だ。それだけ、キョウゴの存在は大きくて、いなくなったらと思うだけでつらくなる。
「キョウゴはわたしについてきてほしくないの? もしかして、全部話したらわたしが怖がって引くって……追い払うために教えてくれたの? キョウゴが黙って消えても“堂貫オーナー”は消えられない。わたしが堂貫オーナーを好きだってことはバレバレで、付き纏うようになったら困るから?」
智奈の不安は声に表れている。キョウゴの驚いた顔はどう捉えていいのだろう。
息を呑んで返事を待っていると、やがてキョウゴはゆっくりと首を横に振った。否定だと思いたい。そんな気持ちで一心に見つめると、可笑しそうな笑みが返ってきた。
「一人二役でそれぞれに他人事のような云い方はしてきたけど、嘘は吐いてない。おれが智奈を追い払うはずないだろう。キョウゴ、ではなく堂貫が好きって云われると、複雑な気もするけど」
「……どっちが本当?」
智奈はキョウゴの答えにほっとして、力の抜けた声で問う。
「どっちも本当だ。人でなしと呼ばれる一面もあるかもしれない。さっき話した裏の仕事を思えば想像がつくだろう? ただし、智奈がそんなおれを見ることはない」
キョウゴは断言した。きっと、智奈に対して人でなしにはならないという約束、あるいは確信なのだ。
「キョウゴと会ってからまだ一カ月くらいだけど、一緒に住んでいるぶん、ずっと以前からそうしているように感じてる。キョウゴを知ってる。わたしがそう云うの、間違ってる?」
「いや、智奈に嘘は吐いてない。この一カ月、ありのままのおれを見せてきた」
キョウゴは嘘を吐いていないと繰り返し、智奈は力を得た気になって顔が綻び、こっくりとうなずいた。
「わたし、お母さんも親戚もいるけど、いまは天涯孤独みたいなものだから、キョウゴが悪人でもだれにも咎められない。何も失うものないし、わたしがやりたいようにできる。わたしはキョウゴといたい」
智奈がきっぱり宣言するとキョウゴはじっと智奈の瞳を捉え、そこから何を得たのか、唐突に立ちあがった。
釣られて仰向くと、智奈の頬がくるまれて顎がさらに持ちあげられる。真上からキョウゴの顔が近づいて、口づけられた。
智奈のくちびる全部がキョウゴのくちびるで覆われ、吸いついて、なお且つゆっくりと離れていく。智奈が好きな、気持ちのいいキスだ。もう一度、と思うのに、キョウゴは顔を離したままで、戻ってくる気配がなく、智奈はキスの瞬間に自ずと閉じていた瞼を上げた。キョウゴの顔が視界いっぱいになって、うっとりする。
「智奈、その意思の裏付けに、おれに本気で抱かれてみる? ……いや、その気があるっておれが受けとめても、智奈に否定する余地はない」
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