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25.腰が砕けるまで(1)

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 キョウゴの左腕は右側にまわって、胸のふくらみを包むというよりはぎゅっとつかむ。右手は智奈の顎に添えて、斜め後ろを振り仰がせた。
「腰が砕けそうな快感を知ってみる?」
 口もとでキョウゴが囁いた。睫毛が一本一本わかるくらいに近くで見上げるキョウゴは、やっぱりうっとりするくらいきれいで、なぜかおなかの奥が疼いてくる。
「……もう、知ってる」
 腰が砕けるどころか、躰全体が弛緩してしまうような感覚に侵されている。けれど、キョウゴは異論を唱えるように眉を跳ねあげた。
「いままでのは序の口だ」
 キョウゴがどれだけ経験を積んだのか知らないが、智奈よりも女性の躰を知っていることを誇示しながら断言する。
「その……セックスって飽き飽きしないもの?」
「飽きるって、あれだけ感じる智奈がそんなはずはないと思うけど……。経験不足から来る言葉だろうな?」
「え?」
「セックスは人間の三大欲求のひとつだ。例えば、食べること眠ることに飽きるかっていう話だ」
「……食べるのも眠るのも好き」
「はっ。腹いっぱい食べてもう食べられないとか、昼寝して夜が眠れないとか、あとは心身の病気か、そういうことはあっても、また腹はへるし、眠たくなる。セックスも同じだろう。もういいってなるときも当然あって、その期間はまちまちだ。欲求があるかないか、その違いであって、飽きる、という感覚とは違うはずだ。……って、なんで裸でこういう話になるんだ。色気も何もない」
「じゃあ、性欲減退した?」
「まさか。わかってるだろう……」
 最後まではっきり声にはせず、キョウゴはさらに智奈の顎を持ちあげて口と口を合わせた。話している最中のいきなりのキスに驚かされて、智奈の口は軽く開いていた。その好機を逃すことなく、キョウゴは舌を侵入させる。
 キスは少し荒っぽい。もう少しやさしくして、と訴えるにも呻くしか手段がない。そうして呻いてみても、キョウゴは智奈の口の中で貪るように舌をうねらせる。
 舌の裏側に滑りこんだ舌が舌をすくい、キョウゴは音が立つほど強く吸引した。その刺激は心地よく、舌は小さく痙攣して、その痺れは脳内まで達した。
 何度も吸いつかれ、智奈はのぼせたように頭がぼうっとして、ただキスに集中して油断していた。
 右の胸をくるんでいた手がうごめき、智奈の顎を支えていた手はいつの間にかそこから離れて腹部に沿い、指先が中央の窪みに嵌まる。
 んんんぅっ。
 智奈は身をよじった。お臍が性感帯だとは思わないけれど、セックスの快感とは違う、くすぐったいような鋭い感覚がある。逃れようとするのに、押しつけるようなキスで頭は固定され、右胸を覆う手で上半身も動かせない。キョウゴはしつこくお臍を嬲り、智奈は身悶えた。
 口を大きく開くも、喘ぐこともままならない。それどころか、キョウゴの舌が自在に暴れまわって、智奈は訳がわからなくなっていく。混じり合った蜜をこくんと呑みこむと、絡んでいた舌を巻きこんでキョウゴが呻く。その仕返しか、右胸のトップが抓まれて、不意打ちの快感が智奈を襲う。舌がさらに激しく絡み合って、そのうえお臍への刺激もやまず、平衡感覚もおかしい。頼りなくふるえる膝の間にキョウゴが脚を割りこませて裂いた。
 お臍にあった指が離れた直後、躰の中心に――その突端に指先が触れた。
 ん――っ!
 智奈はその瞬間、がくんと腰を揺らした。鼻にかかった嬌声を、合わせた口の中に吐き、それはすぐに途切れて、あまりの感覚に息を詰めた。
 指先はそこを小さく揺さぶり、智奈の腰がそれに合わせたようにふるふると揺れる。
 ん、ふっ、んんっ、くふっ……。
 絶えず漏らしているような感覚があって、それは体内から蜜がこぼれているに違いなく、まもなく脚が頼りなくなって、かくかくと膝がふるえる。酸欠を起こしそうで、苦しく喘ぐと、キョウゴはやっと顔を上げた。それでも、手の動きが止まることはない。それどころか、責める場所がひとつ減ったことで、残った場所がより激しく嬲られる。
 あ、あ、ああ、ん……あぅ、ああっ……。
 キスから解放されたかわりに、嬌声が飛びだし、それがひどく淫らで止めようとしたけれどうまくいかなかった。
 胸と躰の中心と、それぞれの繊細な突起が同時に弾かれる。脚ががくがくとして自らの躰を揺さぶった。
「ああああっ……キョ……ゴっ……あぅっ……待っ……て……ああっ」
 智奈は舌っ足らずで訴えた。
 キョウゴは含み笑いで応じ、その吐息が智奈の耳にかかってぞくぞくとして背中がふるえる。中心の指がするっと下のほうにおりると、体内の入り口で止まった。ちょっとうごめいただけで、クチュックチュッと音が連続する。少し指先がもぐり、その入り口の周りをぐるりとなぞる。
 あふっ、あっ、あっ……。
「智奈、グチャグチャに濡らしてるくせに、待ってとかないだろう。もっと、の間違いだな? おれの脚までこぼれてきてる」
 キョウゴは嫌らしく囁いて智奈の羞恥心を煽る。
「もっと……じゃ、なぃ……っ、あっ、立って……っ、られ、ん、んんっ……ない、のっ!」
「おれが支えてる。まだ腰が砕けるまでじゃないだろう。そういう果てを見せてやる。感度のいい智奈なら簡単にイケる」
 自信たっぷりに云いきったキョウゴは、体内の入り口から奥へと、じわりじわりと指先を進めた。抉じ開けられる感覚はあるけれど、ぬぷり――という粘り気のひどい音を立てて、痛みはまったくなかった。
 キョウゴは体内をさまようように静かにまさぐり、それは痛めつけないようにそうしているのだと思ったけれど。
 ん……ふっ……――ああっ。
 突然、力が奪われるような快感が訪れた。
「ここだ」
 ゆっくりした動きはその場所を探し求めていたためだったらしく、その声は悦に入っている。指先を少し曲げて、キョウゴは指の腹でそこをつついた。
 あ、あうっ、あ、ああっ……。
 くるっ、ぐるっと強弱をつけてその快楽点がいたぶられ、否応なく、ふるふると痙攣するように智奈の脚がふるえだす。伴って、漏れるというよりは放出しそうな感覚が訪れた。いままでの果てにイク感覚とは違っていた。
「キョ……ゴっ……だめっ……おか、しー……のっ、あうっ……」
 小さな動きなのに、クチュックチュッと粘着音が絶えない。それどころか淫らな音はひどくなっていく。
 クチュッ、ビチャッ、クチュッ、ビチャッ――と、粘り気のある蜜の音と水が弾け飛ぶ音が入り乱れ、放出する感覚は強くなる一方だ。
 おかしい。どうして? そんな思考も快楽に紛れてうまく消化できない。
「ああっ、ああっ、ああっ……やっ、もぅ……だめっ……ああっ、ああっ……」
 漏らしてしまったら恥ずかしい。その気持ちはすっかり承知されていて――
「だから、感覚に任せて。淫らで、最高に嫌らしい智奈が見たい」
 キョウゴが耳もとで熱く囁き、かすかに残っていた智奈の理性を無効にした。右の胸を覆う手が淫猥にふくらみを捏ね、そうしながら人差し指で硬く尖った粒を捏ねまわす。体内の指先が小刻みに刺激を与えると、もう止められなかった。
 あああ――――っ。
 淫水が迸り、それはキョウゴが指を引き、そしてまた突き、そのたびにまき散らしてしまい、自分で制御することはかなわない。腰の感覚が麻痺していって、まもなく、がくんと膝が折れた。
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