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3.ロマンチックナイト
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終業時間ぴったりに仕事を切りあげて、智奈は会社を出た。そうしても、だれも文句を云わない。ひょっとしたら、智奈がいなくなったことでほっとしているのではないか、とそんな疑心暗鬼にも陥っている。たぶん自意識過剰だ。みんな、それぞれに仕事があって人のことに関心を寄せている暇はそうない。
智奈はこの一カ月ですっかり金曜日恒例となったコース――ウィンドウショッピングで時間を潰したあと、お一人様の夕食をゆっくり取って、それから歓楽街に行くというコースを今日もたどった。
夜の九時からホストクラブ“白馬の王子”に来て二時間をすぎた。店内は男女の会話だったり笑い声だったり、至ってにぎやかだ。うるさいとは少しも思わないし、そもそもそういう場だ。
「智奈さん、僕で退屈してないですか。シンジさん、もうすぐ戻ると思いますので」
シンジというのは、智奈がいつも指名しているホストで、いま申し訳なさそうに云ったのは、ヘルプでついているコージだ。二十四歳の智奈と同い年だという。智奈がここに通うようになってから新しく入ったホストで、シンジがいないときによくかわりに接待してくれる。
「全然大丈夫」
シンジはほかの客から指名が入ったとかで席を外している。実際に、智奈は何も気にしていないし、このところ、どちらかというとコージのほうが紳士的で気がらくでいられる。
「わたしもホスト通いの新人だし、そのせいか、コージといると客って立場じゃなくて友だちといるみたいな感覚」
「それ、だめですよ。僕からしたら。全然ホストとしていけてない」
ぷっと智奈は吹きだした。本当にがっかりした顔が可愛い印象で、コージは同級生というよりは弟みたいだ。
「いけてるよ。ベビーフェイスって云ったら気を悪くする? コージくんみたいな雰囲気、好きな人たくさんいると思うけど」
「僕がベビーフェイスなら、智奈さんも同じタイプだと思うけど」
「ほんとに? メイクがんばってるのに」
「がんばらなくていいですよ。こういうとこ、わりと夜の仕事やってる客が多いから、明らかにそうじゃないって見える智奈さんは新鮮です。気前がいいし、シンジさんを指名してなければ争奪戦ですよ」
あからさまなおべっかだけれど、コージの屈託のなさはそう感じさせない。智奈はまた吹きだした。
「モテ期がここだったらちょっとがっかりする」
智奈の言葉に今度はコージがおかしそうに笑い声をあげた――と、そのとき、智奈は傍に人影を感じた。
「なんだよ、楽しそうだな。ひょっとして僕は用済み?」
と、智奈が振り仰ぐと同時に話に入ってきたのはシンジだった。
「用済みなんてことないよ。ただ、楽しいのは本当」
コージが場所を譲って、そこにシンジが座っている間に、「ね、コージくん」と智奈が同意を求めると、コージはにっこりと笑う。
「よかったです。楽しんでもらうのがあたりまえですから」
シンジに気を遣ったのだろう、コージの云い方は控えめだ。おまけに――
「智奈さんを不機嫌にしたり、詰まらないって思わせたりしたらどうしようって心配してましたけど、シンジさんに迷惑かけなくてよかった」
と、続けて露骨に気を遣った言葉に、シンジは呆れきった顔をした。
「コージ、まるで僕が怖い先輩みたいな云い方してる。智奈はお嬢さまなんだからな。怖がらせて嫌われたらどうするんだ」
「ぷっ。大丈夫、シンジくん。わたしはちゃんとわかってる、コージくんは新人だってこと」
笑った智奈に目を向けてシンジはしたり顔でにっと笑う。
「よかった。ちゃんと違いをわかってくれてて」
「じゃあ、違いがわからなくなるように僕はがんばります。シンジさんは僕の先生ですから」
「おい、コージ、智奈の前で僕をおだててどうするんだ。なってないな」
シンジはおもしろがって、わざと呆れた素振りで云い、すみません、とコージはおどけて首をすくめる。そんなふたりの様子が智奈を笑わせた。
「智奈、もっと飲んで楽しんだら? シャンパンはキープできないし、もったいないよ」
智奈が持ったグラスに、自分が持ったグラスの縁をコツンと当ててシンジが首をかしげる。
「もったいないって、シンジくんは立場的に云うことじゃないと思うけど。また次に来たときに新しいのを注文したほうが得でしょ?」
「それはそうだけど」
「酔っぱらって帰れなくなったら困るし、わたしはにぎやかなところが好きで、楽しめればいいの」
「金持ちのお嬢さまっぽいコメントだよな」
シンジはまったく誤解したことを云う。智奈は店内を見渡した。一対一のテーブルもあれば、一人の客に三、四人のホストがついたテーブルもある。共通しているのは、日常を離れて楽しんでいることだろう。
「そうじゃなくて、ここに来るのって、みんないい気分になって楽しめるからでしょ。酔っぱらったら、せっかくのいい気分も台無しになりそう」
「僕は智奈をいい気分にさせられてる?」
「させてもらってるよ。シンジくんはこの店の名前、『ロマンチックナイト』まんまじゃない? 顔良しスタイル良し、背も高いし、白馬の王子様って雰囲気。ちやほやされて気分よくならなかったら女子じゃないかも。無理やりここに連れてこられて、お世辞が嫌いって人は別だけど」
シンジは満更でもない様子だ。当然という自信満々でいるのか、笑わせるためのふりかはわからない。
シンジは二十六歳だと自称している。自称というのはコージにも当てはまる。そういう場所であることはちゃんとわかっている。
いま智奈が云ったことは誇張でもなく、シンジは甘めのマスクでこのクラブでも人気がある。極端に客にへつらうようなことはせず、それもポーズかもしれないけれど、智奈はそこが気に入ってシンジを指名している。最初はコージと同じように『智奈さん』と呼んでいたけれど、三回めに来たときに、『智奈』と呼んでいいかと訊ねられて、特段気にすることもなく智奈が了承して以来、そう呼ばれている。
ちやほやされて気分がいいとは限らないのだ。すぎると、こっちが愛想笑いになって疲れる。これは智奈に限ったことで、とことんちやほやウェルカムな人もいるだろうけれど。
「そうかな。智奈が来るようになってもう一カ月になるけど……んー、ひと言で云えばクールだ。羽目を外すことある?」
「極端に羽目を外したことはないけど、シンジくん、お金持ちのお嬢さまっていうのは誤解だから。もしここで羽目を外しちゃったら、わたしは破産するよ。クールじゃなくて、理性を少し残して楽しんでるの。少しでもシンジくんが得してるんだったらいいけど?」
「得してるよ。智奈は気前がいいし……お礼しないとな」
シンジは取って置きといった笑みを浮かべて、智奈の長い髪の裾をひと筋つかんでくるりとまわしながら放した。
智奈はこの一カ月ですっかり金曜日恒例となったコース――ウィンドウショッピングで時間を潰したあと、お一人様の夕食をゆっくり取って、それから歓楽街に行くというコースを今日もたどった。
夜の九時からホストクラブ“白馬の王子”に来て二時間をすぎた。店内は男女の会話だったり笑い声だったり、至ってにぎやかだ。うるさいとは少しも思わないし、そもそもそういう場だ。
「智奈さん、僕で退屈してないですか。シンジさん、もうすぐ戻ると思いますので」
シンジというのは、智奈がいつも指名しているホストで、いま申し訳なさそうに云ったのは、ヘルプでついているコージだ。二十四歳の智奈と同い年だという。智奈がここに通うようになってから新しく入ったホストで、シンジがいないときによくかわりに接待してくれる。
「全然大丈夫」
シンジはほかの客から指名が入ったとかで席を外している。実際に、智奈は何も気にしていないし、このところ、どちらかというとコージのほうが紳士的で気がらくでいられる。
「わたしもホスト通いの新人だし、そのせいか、コージといると客って立場じゃなくて友だちといるみたいな感覚」
「それ、だめですよ。僕からしたら。全然ホストとしていけてない」
ぷっと智奈は吹きだした。本当にがっかりした顔が可愛い印象で、コージは同級生というよりは弟みたいだ。
「いけてるよ。ベビーフェイスって云ったら気を悪くする? コージくんみたいな雰囲気、好きな人たくさんいると思うけど」
「僕がベビーフェイスなら、智奈さんも同じタイプだと思うけど」
「ほんとに? メイクがんばってるのに」
「がんばらなくていいですよ。こういうとこ、わりと夜の仕事やってる客が多いから、明らかにそうじゃないって見える智奈さんは新鮮です。気前がいいし、シンジさんを指名してなければ争奪戦ですよ」
あからさまなおべっかだけれど、コージの屈託のなさはそう感じさせない。智奈はまた吹きだした。
「モテ期がここだったらちょっとがっかりする」
智奈の言葉に今度はコージがおかしそうに笑い声をあげた――と、そのとき、智奈は傍に人影を感じた。
「なんだよ、楽しそうだな。ひょっとして僕は用済み?」
と、智奈が振り仰ぐと同時に話に入ってきたのはシンジだった。
「用済みなんてことないよ。ただ、楽しいのは本当」
コージが場所を譲って、そこにシンジが座っている間に、「ね、コージくん」と智奈が同意を求めると、コージはにっこりと笑う。
「よかったです。楽しんでもらうのがあたりまえですから」
シンジに気を遣ったのだろう、コージの云い方は控えめだ。おまけに――
「智奈さんを不機嫌にしたり、詰まらないって思わせたりしたらどうしようって心配してましたけど、シンジさんに迷惑かけなくてよかった」
と、続けて露骨に気を遣った言葉に、シンジは呆れきった顔をした。
「コージ、まるで僕が怖い先輩みたいな云い方してる。智奈はお嬢さまなんだからな。怖がらせて嫌われたらどうするんだ」
「ぷっ。大丈夫、シンジくん。わたしはちゃんとわかってる、コージくんは新人だってこと」
笑った智奈に目を向けてシンジはしたり顔でにっと笑う。
「よかった。ちゃんと違いをわかってくれてて」
「じゃあ、違いがわからなくなるように僕はがんばります。シンジさんは僕の先生ですから」
「おい、コージ、智奈の前で僕をおだててどうするんだ。なってないな」
シンジはおもしろがって、わざと呆れた素振りで云い、すみません、とコージはおどけて首をすくめる。そんなふたりの様子が智奈を笑わせた。
「智奈、もっと飲んで楽しんだら? シャンパンはキープできないし、もったいないよ」
智奈が持ったグラスに、自分が持ったグラスの縁をコツンと当ててシンジが首をかしげる。
「もったいないって、シンジくんは立場的に云うことじゃないと思うけど。また次に来たときに新しいのを注文したほうが得でしょ?」
「それはそうだけど」
「酔っぱらって帰れなくなったら困るし、わたしはにぎやかなところが好きで、楽しめればいいの」
「金持ちのお嬢さまっぽいコメントだよな」
シンジはまったく誤解したことを云う。智奈は店内を見渡した。一対一のテーブルもあれば、一人の客に三、四人のホストがついたテーブルもある。共通しているのは、日常を離れて楽しんでいることだろう。
「そうじゃなくて、ここに来るのって、みんないい気分になって楽しめるからでしょ。酔っぱらったら、せっかくのいい気分も台無しになりそう」
「僕は智奈をいい気分にさせられてる?」
「させてもらってるよ。シンジくんはこの店の名前、『ロマンチックナイト』まんまじゃない? 顔良しスタイル良し、背も高いし、白馬の王子様って雰囲気。ちやほやされて気分よくならなかったら女子じゃないかも。無理やりここに連れてこられて、お世辞が嫌いって人は別だけど」
シンジは満更でもない様子だ。当然という自信満々でいるのか、笑わせるためのふりかはわからない。
シンジは二十六歳だと自称している。自称というのはコージにも当てはまる。そういう場所であることはちゃんとわかっている。
いま智奈が云ったことは誇張でもなく、シンジは甘めのマスクでこのクラブでも人気がある。極端に客にへつらうようなことはせず、それもポーズかもしれないけれど、智奈はそこが気に入ってシンジを指名している。最初はコージと同じように『智奈さん』と呼んでいたけれど、三回めに来たときに、『智奈』と呼んでいいかと訊ねられて、特段気にすることもなく智奈が了承して以来、そう呼ばれている。
ちやほやされて気分がいいとは限らないのだ。すぎると、こっちが愛想笑いになって疲れる。これは智奈に限ったことで、とことんちやほやウェルカムな人もいるだろうけれど。
「そうかな。智奈が来るようになってもう一カ月になるけど……んー、ひと言で云えばクールだ。羽目を外すことある?」
「極端に羽目を外したことはないけど、シンジくん、お金持ちのお嬢さまっていうのは誤解だから。もしここで羽目を外しちゃったら、わたしは破産するよ。クールじゃなくて、理性を少し残して楽しんでるの。少しでもシンジくんが得してるんだったらいいけど?」
「得してるよ。智奈は気前がいいし……お礼しないとな」
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